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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第四十話 緊張の続く試合その一

                  第四十話  緊張の続く試合
 日菜子さんの二回戦がはじまった、その栃木の人は。
 髪の毛を茶色にしていて後ろで束ねている、そしてメイクまでしている。爪は切っているけれどマニキュアもしている。
 見ればマニキュアは足にもしている、その人を見て僕は池田さんに尋ねた。
「何かね」
「空手やってる娘に見えないっていうのね」
「何かね」
 実際にこう答えた。
「思うけれど」
「そうね、私から見てもね」
「空手家っていうよりは」
「よく街で遊んでる」
「そうした人だよね」
「外見はね。けれどね」
「強いんだね、あの人も」
 僕はさっきの池田さんとの話を思い出して自分から言った。
「やっぱり」
「ええ、それにね」
「それに?」
「実はあの娘お寺の娘さんらしいのよ」
「えっ、そうなんだ」
 正直外見からは想像出来ない、僕は思わず声をあげた。
「あの人が」
「そうよ、しかもね」
「それになんだ」
「栃木じゃ凄くいい娘で有名らしいわよ」
「そうなんだ」
「お寺の娘さんらしい礼儀正しくて親切で」
「へえ、そうなんだね」
 僕は池田さんの話に目を丸くさせて応えた。
「あの人が」
「そうは見えないでしょ」
「とてもね」
「それでもなのよ」
「実際はなんだ」
「人は見かけじゃないっていうけれど」
「あの人もなんだ」
 僕は驚きを隠せない顔のままでだ、池田さんに応えて言った。
「そうなんだ」
「さっきの試合前の礼もよかったでしょ」
 池田さんはここで具体的な礼を出して来た。
「そうでしょ」
「言われてみれば」
「本当に礼儀正しい人はね」
 池田さんはこう僕に話してくれた。
「その仕草に出るから」
「確かに相手に心から敬意を表している様な」
「そうしたのだったでしょ」
「だからね、あの娘はね」
「外見じゃないんだ」
「何でもお寺で子供の頃から仕込まれたらしいのよ」
 その礼儀や人としてのあり方をというのだ。
「しっかりとね」
「それでなんだ」
「そう、いい娘なのよ」
「親御さんの教育の結果だね」
「そうよね、ああした外見だけれど」
 本当に空手家に見えない、何処か夜の街で遊んでいそうだ。けれどその外見についてもだ、池田さんは。
 少し考える顔になってだ、僕にこう言った。
「けれどありかしら」
「空手でも?」
「いや、お寺の娘さんでもね」 
 お家の仕事からの言葉だった。
「普通でしょ」
「あっ、そういえば」 
 ここで僕も気付いた、どうして池田さんがあの人の外見でもお寺の娘さんとしていいのかを言ったのかを。
 それでだ、こう池田さんに言った。 
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