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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十九話 空手の型その十六

「それ大家君もわかってるでしょ」
「わかってるよ、バスケだってね」
「一歩間違えるとね」
「本当にその辺りスポーツってわからないよね」
「負けるんだよね」
「ほんの些細なことでね」
「そういうものだよね、運でね」
 まさにだ、そうだとだ。僕も言った。
 そしてだった、池田さんは。
 固唾を飲んでだ、そのうえで僕にまた言った。
「ほんの些細なことでどうなるかわからない」
「だから勝負は難しい」
「実力だけで勝てるのだったらね」
「そうだったら?」
「スポーツは面白くないから」
 勿論武道もだ、空手にしても。
「そういうものよ」
「阪神だっていつも優勝とか」
「阪神は無理でしょ」
 池田さんは僕の冗談めかした口調での言葉にはだ、残念そうに答えた。それはどうかということをここでだ。
「私も好きだけれど」
「実力はセリーグ一じゃないっていうんだ」
「それは毎年変わるから」
 この辺りはマスコミとかの提灯記事とは違う、実際スポーツチームのそれぞれの戦力は年ごとによって変わる。
「言えないんじゃ」
「阪神が一番って言いたいね」
「私もだけれどね、それは」
「ピッチャーはいつもいいけれど」
「打線はね」
「それが安定しないから」
 それで何でダイナマイト打線かわからない、ピッチャーで困った記憶はないけれどだ。打線で満足した記憶はあまりない。
「阪神は毎年優勝出来ないんだ」
「そうだと思うけれど」
「そうなるんだね」
「まあとにかくね、スポーツは実力が全てじゃないから」
「あれ?格好よく言うと」
 僕はここでこう返した。
「不確定要素に満ちている」
「そうそう、それそれ」
 池田さんは僕のその格好をつけたつもりの言葉に答えてくれた。
「そういうものだから」
「日菜子さんも」
「次確実に勝てるかっていうと」
「言えないでしょ」
「それもそうだね」
 僕は苦い顔で頷いた、表情は自然とそうなった。
「本当に」
「だから先輩の勝負、私達もね」
「うん、観る方もね」
「緊張するでしょ」
「何か汗が出てきたよ」
 暑さのせいもあるけれどその他の理由からもだった、僕はこのことを自覚した。そのうえで日菜子さんの二回戦を観るのだった。


第三十九話   完


                          2015・4・10 
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