八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十九話 空手の型その十五
「勝てるわ」
「じゃあ一回戦は」
「先輩が相当油断されないと」
そうでもない限りはというのだ。
「勝てるわ」
「じゃあ日菜子さんは相手は絶対に馬鹿にしない人だから」
「勝つわ」
「そうだね、じゃあ」
僕は池田さんの言葉に頷いた、そしてだった。
日菜子さんの試合がはじまった、真剣勝負の心身の全てを使ったものが。
池田さんの言う通りその望月さんという人は相当に強くて足技が上手だった、それで日菜子さんを攻めるけれど。
足は日菜子さんもよく使った、そして。
相手の人の足に負けない動きで攻めてだった、そこで。
拳の突きを両方の手から次々と出した、そうして追い詰める闘い方で。
まずは一本取った、それからは相手の人も頑張ったけれど。
その一本をそのまま守りきってだった、日菜子さんは勝った、それを観てだった。池田さんは微笑んで僕に言った。
「ほらね」
「勝ったね」
「私の言った通りでしょ」
「うん、日菜子さんが勝ったね」
「二本取れなかったけれどね」
「勝ちは勝ちだね」
「そう、勝ちよ」
このことは紛れもない事実だというのだ。
「だからいいのよ」
「二本取れたかな」
「いえ、あの人強いから」
「二本はなんだ」
「難しかったと思うわ」
「じゃあ一本で」
「あれが限界だったわね」
池田さんは僕にしみじみとした口調で話してくれた。
「やっぱり」
「そうなんだね」
「ええ、何はともあれ一回戦はね」
「勝ったね」
「後はね」
「二回戦までは休憩だね」
「ええ、ただ次の相手は」
二回戦のその相手はというと。
「また強いと思うわ」
「そうだろうね、やっぱり」
「確かシードで栃木の二年生の娘よ」
「二年生でシード?」
「くじでそうなったのよ」
シード選手になったというのだ。
「あの人はね」
「そう、くじ引きで」
「じゃあくじ引きで」
ここで僕もこう思った。
「日菜子さんも」
「そうなったかもね」
「やっぱりそうだよね」
「その二年の娘ってね」
池田さんはその栃木の人の話をした。
「やっぱりね」
「強いんだ」
「ええ、、そうなの」
その通りだとだ、僕に答えてくれた。
「だから気をつけないとね」
「日菜子さんも」
「本当に一歩間違えると」
「負けるとか」
「空手、いえ勝負ごとはね」
「何でも一歩間違えると」
「負けるわ」
まさにだ、そうなるというのだ。
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