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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十九話 空手の型その十四

「それって」
「そうよ、だってね」
「だってって?」
「義和君今奇麗な娘、可愛い娘にばかり囲まれてて」
 それで、とだ。池田さんはくすりと笑いつつ僕に話した。
「しかも誘われてばかりだから」
「デートにっていうんだ」
「今のもデートよ」
「観戦も?」
「そう、女の子に自分の試合を観て欲しいって誘われることも」 
 それもというのだ。
「立派なデートよ」
「そうなんだ」
「デートは一つだけじゃないの」
 池田さんはきっぱりとして言い切った。
「こうしたのもデートなのよ」
「そうしたものなんだ」
「そう、それでどう?今のデートは」
「ううん、デートであってもなくても」
 それでもとだ、僕は考える顔になってだ。そのうえで池田さんに対して答えた。声もそうしたものになっていることを自覚しつつ。
「真剣にね」
「観るのね」
「そうさせてもらうよ」
「そうするのね」
「うん、それで日菜子さん調子いいんだよね」
「団体戦負けなかったわ」
「じゃあいいんだね」 
 そう聞いてだ、僕はほっとした顔になって言った。
「よかったよ」
「うん、ただね」
「ただ?」
「相手によるわよ」
「ああ、相手が強いと」
「凄く強い相手もいるからね」
「そのこと日菜子さんもお話してたよ」
 僕は池田さんに答えた、ここで壁の時計を観た、もうすぐ一時だった。一時になればはじまると思うのでもうすぐだと思った。
 そんなことを思いつつだ、僕は池田さんにこのことも話した。
「幾らこっちの調子がよくても」
「相手がもっと強いとね」
「負けるってね」
「そう、それでその相手はね」
「急に出て来るよね」
「そうした時もあるから」
 だからだというのだ。
「勝負はわからないの」
「そういうものだね」
「さて、もうすぐ一回戦よ」
 池田さんはここで僕にこう言った。
「先輩は第二試合場よ」
「あっ、あそこだね」
 少し離れた場所の競技場を観た、するとそこにだった。
 日菜子さんがいた、その相手も。相手は日菜子さんと同じ位の背丈の鋭い目をした如何にも気の強そうな人だった。
 その人も観てだ、僕は言った。
「あの人強いかな」
「ああ、奈良の人だけれど」
 池田さんもその人を観つつ僕に答えてくれた、試合はいよいよはじまろうとしている。二人はもう試合場に足を入れている。
「望月才加さんね」
「望月さんっていうんだ」
「足技が得意で」
「強いんだ」
「団体戦でも活躍してたわ。けれどね」
「けれど?」
「儀武先輩の方が強いわ」 
 池田さんは僕にはっきりと言い切った。
「あの人の方が」
「そうなんだ」
「ええ、先輩の強さは確かだから」
「あの奈良の人以上に」
「もっと強いから」
 それで、というのだ。 
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