八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十九話 空手の型その十二
「だからその悔しさはね」
「個人戦で、ですか」
「晴らすわ」
強い声での返事だった。
「絶対にね」
「じゃあ目指すはですね」
「優勝よ」
「優勝ですね」
「それ勝ち取るから」
「頑張って下さい、ただ」
ここで僕は日菜子さんにこのことを問うた。
「体調の方は」
「大丈夫よ」
「身体のキレとかもですか」
「ええ、いいわ」
にこりと笑ってだ、僕に答えてくれた。
「何の心配もいらないわ」
「じゃあ午後の試合も」
「いけるわ、少なくとも調子が悪いとかでね」
そうした理由で、というのだ。
「万全に戦えなかったとか後悔することはないわ」
「負けてもですね」
「ええ、力出し切って負けた方がいいでしょ」
「どうせ負けるにしても」
「だからね」
「いけるんですね」
「いけるか、力出し切れるわ」
「じゃあ出し切って下さい」
「そうしてくるわね」
日菜子さんはにこりと笑ってだった、選手の控えの場所に向かった。僕は空手部の人達が集まっている場所に行った、そこで。
二年の子達、男子の子にも女子の娘にもだ。日菜子さんのことを尋ねた。
「どうなの?日菜子さん」
「ああ、いいよ」
「万全よ」
「今日の先輩調子いいよ」
「身体のキレとかがね」
「そう、日菜子さんが仰った通りなんだね」
僕もそう聞いて微笑んで頷いた。
「じゃあ力出し切れるね」
「いや、団体試合まずったわ」
ここでだ、C組の空手部の娘の池田さんが僕にバツの悪い顔で言って来た。
「準決勝の相手は三人凄く強い人がいて」
「そんなに?」
「そう、その学校が優勝したけれど」
「その学校そんなに強かったんだ」
「鹿児島の高校でね」
九州の最南端のその県のというのだ。
「先鋒、副将、大将の人が桁違いだったのよ」
「そんなに強かったんだ」
「鬼だったわ」
まさにそれだけの強さだったとだ、僕に話してくれた。
「大会の間ずっと勝ってたから」
「団体戦で」
「そう、ずっとね」
「その学校ずっと三勝してたんだ」
「少なくともね」
「その学校と準決勝であたって」
「負けたの」
こう僕に苦い顔で話してくれた。
「優勝候補ナンバーワンだったしね」
「そのナンバーワンに相応しい強さだったんだ」
「それこそね、それで三位決定は」
日菜子さんがしきりに悔しがっていたその試合はというと。
「こっちは二勝したけれど」
「それでもだったんだ」
「私が足滑らして」
そしてとだ、池田さんは苦々しい顔で僕に話してくれた。
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