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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十九話 空手の型その十

「無頼派も真面目にしないと」
「長続きしないんだ」
「早死にしますか」
「実際坂口安吾はそうだったよ」
 その無頼派の作家の一人だ、その中でも一番そうした作風で生活だったと思う。部屋の写真を見たがまさにそうした散らかり方だった。
「そうした生活する様になって」
「あっという間でしたか」
「十年位で死んだよ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
「早死に覚悟ですか」
「そうなりたくなかったら親父みたいにね」
 節度の守るところは守ってだ。
「真面目にしないとね」
「駄目なんですか」
「親父の食生活もお酒は飲んでもね」
 それでもなのだ、親父の場合は。
「栄養バランスとかしっかりしてるから、飲むお酒もね」
「それもですか」
「ワインとか梅酒だから」
「日本酒とかビールはですか」
「あまり飲んでないみたいだよ、親父ワイン派だよ」
「ワインは身体にいいですからね」
「お酒の中でもね」
 だから僕もよく飲むお酒はワインが多い、日本酒は糖尿病にビールは痛風になると聞いているので気をつけている。
「だからね」
「ワインですか」
「飲むお酒も考えてるよ」
「節度を守った遊びですか」
「羽目を外した様な遊びでもね」
 それが親父の遊び方だ。
「あれで人間としての節度も守ってるしね」
「だから先輩にも暴力は振るわれないんですか」
「女の人にも、誰にもね」
「そこは僕が最初に憧れたところですけれど」
「いるよね、飲んで奥さんや彼女、子供に暴力振るう奴」
「最低ですよね」
 真板君はそうした奴については露骨な嫌悪を見せて口元を歪めさえして言った。このことについては僕と同じ考えだった。
「そういう奴」
「うん、そうだよね」
「僕そういう奴が一番嫌いです」
「それは正しいよ、そんな奴はね」
「人間の屑ですよね」
「本当にそうだよ」
 心からそう思っている、最低なんて言葉でもまだ足りない。
「絶対にしたらいけないことだよ」
「よく人生相談番組のドラマでも出ますね」
「定番だね、そうした番組の」
「僕ああした番組観たら物凄く怒って怒る時間も長くて」
 聞いているだけで健康に悪そうだった、あまりにも長時間激しく怒っていると精神的にも肉体的にも悪質なダメージを蓄積してしまうからだ。
「それであまり観ない様にしています」
「そこまで怒るんだ」
「そうした奴のことを観て聞くだけで」
「それだけ許せないんですね」
「はい、そんな奴成敗したくなります」
「成敗は極論にしても」
 それでもだった、聞いている僕にしてもだ。
「許されないことだね」
「本当にそうですよね」
「絶対にね」
「先輩のお父さんそうしたことをされないですから」
 本当に絶対にしない、親父は暴力は大嫌いだ。自分より力が弱いだけの相手を攻撃するのは一番弱い奴のすることだと僕に子供の頃から言っている。
「いい人ですよ、借金も作らなくて節度も守っておられるのなら」
「余計にっていうんだね」
「はい、ただ憧れても」
「親父みたいになるのはね」
「大変ですね、やっぱり憧れだけにします」 
 笑ってだ、僕に言った。 
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