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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十九話 空手の型その八

「分け隔て嫌いだし」
「そういうところがなんですよ」
「親父に憧れる理由なんだ」
「豪快で人情のある遊び人って素敵じゃないですか」
「そうなのかな」
「僕的にはそうなんです」
 僕に笑顔でこう話した。
「しかも借金とかもしないですよね」
「それもないよ」
「じゃあやっぱり」
「憧れる?」
「そうした人になりたいですね、格好いいですよ」
「ううん、勧めないよ」
 僕は真板君にこう返した。
「親父に憧れるのは」
「息子さんから見て、ですよね」
「褒められた親父じゃないからね」
 とにかくこう言うしかなかった、これ以外にこうした場合親父についての言葉は本当にこうしたものしかない。
「桁外れの女好きで酒好き、もう遊んでばかりで」
「トラブルもですか」
「人妻さんとか彼氏いる人には手を出さないけれどね。あと小さな子にも」
 それでもなのだ、うちの親父は。
「三角関係なんてざらで」
「ざらですか」
「四角、五角、六角もね」
「普通だったんですね」
「うん、ここにいる男の人は親父だけだよ」
 つまり同時に何人もの人と付き合っていたのだ。
「銀座に遊びに行ってホステス五人と一晩にとか」
「うわ、五人ですか」
「梅田でもしょっちゅうみたいだしね」
「壮絶な人ですね」
「お金の使い方も凄いから、医師としての腕は確かで報酬は多いけれどね」
 何かこの辺りあのブラックジャックに似ていると思う、もっともブラックジャックこと間黒男さんは医師免許は持っていなかった。
「それで借金もしなくて家にも入れてくれるけれど」
「遊びもですか」
「うん、お酒とかにね」
「太く短くって感じですね」
「遊びなくて何が人生かって言ってるよ」
 それこそ親父の人生の座右の銘だ。
「お酒も飲んで飲んでだから」
「けれどそうした生き方に僕は」
「憧れるんだね」
「はい、それもありなんじゃ」
「無頼派な?」
「太宰治とかみたいな」 
 真板君はこの作家の名前も出した。
「あの人ですよね、無頼派って」
「ううん、太宰はあんなに凄くなかったよ」
「あれっ、お酒好きでしかも愛人もいて」
「そうだったけれどね」 
 確かに太宰は愛人もいてそれでお酒もよく飲んだ、最後には心中しているし無頼派作家の代表者ではある。
「それでもうちの親父みたいなのじゃなかったよ」
「そうだったんですか」
「うちの親父はまた特別だから」
「無頼にしても」
「横山やすし、いや違うね」
 この人も無頼だったと思うけれどまた違うと言ってすぐに思った。
「変なゲームの主人公かもね」
「所謂エロゲの」
「ああしたゲームの主人公って凄いよね」
「ゲームですからね」
 それもそうしたゲームのだ。 
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