FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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真の悪、ケツプリ団
ある日の汽車の中にて ・・・ウェンディside
「うぅぅぅ・・・」
私たちは今、ある仕事で汽車の貨物列車の中にいます。
今回の仕事はこの貨物列車に積んである金塊の警護です。ある資本家さんが、取引先に無事に金塊を届けてほしいとの依頼があり、私たちが参加することになりました。
マグノリアから六時間かけて列車で移動することになっており、現在は何事もなく四時間経過しました。
私とルーシィさん、ハッピー、シャルル、セシリーはトランプゲームをしてるのですが、相変わらずナツさんは乗り物がダメみたいです。
「もうダメだ・・・限界・・・おろして・・・」
「あと二時間の辛抱よ。頑張って、ナツ」
「ホント情けない男」
「プンプーン」
「お前らなぁ・・・」
出発する前にトロイアをかけたんですが、大分前に効果が切れてしまい、ナツさんは乗り物酔いとずっと格闘しています。
「ウェンディ、トロイア追加してあげてよ。このままじゃナツ目的地に着く前に溶けてなくなっちゃう」
「そうですね」
トロイアは連続すると効果が薄れちゃいますけど、これだけ時間を開ければ大丈夫ですよね。
私はナツさんの近くに行き、トロイアをかけました。
「トロイア!」
これでナツさんもしばらく安心――――
「うぷっ!!」
えっ!?
「くはぁぁっ・・・」
「あれ!?効かないよ!?」
「なんで~!?」
トロイアをかけたのに、なぜかナツさんは顔を真っ青にしたままです。あれ?
「うぅ・・・死ぬ~・・・なんとかしてくれ~・・・」
「あれ?おかしいな・・・もう一回やってみます!!えいっ!!」
私はもう一度トロイアをナツさんにかけました。だけど、ナツさんね表情は全然よくなりません。
「あ・・・あんまり変わんねぇ・・・」
な、なんで?こうなったら・・・
「トロイア!!トロイア!!トロイアーー!!」
私は最大パワーでトロイアを連発し、疲れて座り込んでしまう。でも、さすがにこれだけやれば・・・
「 全然効かねぇ・・・」
「えぇっ!?どうして!?」
なぜかナツさんは体調が悪そうなままだった。どうして!?
「いつもならすぐに元気になるのに・・・」
「全然効かないよね~?」
「プーン」
「パワー不足?」
ルーシィさんたちがそう言う。シャルルは一人、あごに手を当て何かを考えている。
「考えられることはただ一つ・・・今まで、乗り物に乗るたびにトロイアをかけてきたせいで、ナツはトロイア慣れしてしまったのよ!!」
「・・・と・・・トロイア慣れ!?」
シャルルの言葉を聞いてナツさんは冷や汗を流す。
「ウソー!?そんなことあるの!?」
「あるんだからあるのよぉ。普段鈍い奴だから、今までたまたまもっただけー」
「ナツくんにトロイア効かなくなっちゃったのか~」
トロイア慣れだなんて・・・そんなことが起こるんだ・・・そうだ!!
「シリルと一緒にトロイアをかければもしかしたら!!」
「おおっ!!」
二人でトロイアかければもしかしたらナツさんの乗り物酔いもなんとかできるかもしれない!!と思ったら、
「あれ?そのシリルは?」
ハッピーが周りを見回しながらそういいます。そういえば、シリルさっきから何も話してないような・・・
「あ!!」
「どうしたの?セシリー」
「あれ・・・」
セシリーが何かに気づいてそこを指さす。そこには、顔を真っ青にして倒れているシリルがいました。
「シリル!?」
「ちょっ・・・大丈夫!?」
私とルーシィさんがシリルに駆け寄ると、シリルは遠のく意識の中一言。
「き・・・気持ち悪い・・・」
「「「「「へ?」」」」」
それだけ言うとシリルは目を閉じて具合が悪そうに眠ってしまう。
「まさか、シリルも乗り物酔い!?」
「ウソ!?」
「なんで!?」
「ウェンディ、ちょっとシリルにトロイアかけてみてよ」
ハッピーが私にそう言う。そうか!もしかしたら私のパワー不足なだけかもしれないし、シリルにトロイアはかけたことないからトロイア慣れがあるのかないのかはっきりできるかも!!
「うん!!トロイア」
私がトロイアをかけると、眠っているシリルの顔色が通常に戻っていく。
「どうやらナツは本当にトロイア慣れしちゃったみたいね」
「おまけにシリルも四時間も放置してたってことになるから、すぐに目覚めるのは無理そうだね~」
「はぁー・・・しょうがないねナツ。あと二時間、根性で耐えるしかないよ」
「ごめんなさい・・・」
「お前らぁ・・・他人事だと思ってうぇ!!」
ナツさんは気持ち悪くて吐きそうになってしまいました。大丈夫でしょうか。
「ナツ、ちょっと外で空気でも吸ってきたら?」
「そ・・・そうするわ・・・」
ナツさんはルーシィさんの勧めを受け、フラフラと貨物車から出ていきます。
でも、私のせいでナツさんが・・・
「はぅ・・・」
「ちょっとウェンディ!!大丈夫?」
私はがっかりして膝をついてしまいました。私の力不足で・・・
「ウェンディ、あまり気にしちゃダメだよ」
「うん!ウェンディが悪いわけじゃないよ~」
ハッピーとセシリーが慰めてくれるけど、私はそれに答えられないぐらい落ち込んでいます。
「ダメね、これは。こうなると長いわよ、この子」
シャルルが私を見ながら少しあきれ気味にそう言う。
「ナツも酔うの分かってたんだから、この依頼降りてもよかったのにね」
「そうよね~。でもあいつ、なんかすごく暇そうだったし」
「ナツくんが暇そうなんていつものことじゃない~?」
ルーシィさんにセシリーそういうけど、それはちょっと失礼じゃないかな?
「でも、肝心な時に魔法が使えないんじゃ、私魔導士失格ですよ・・・」
「そりゃあ落ち込みすぎ!!」
「元気だしてよウェンディ!!」
ルーシィさんとハッピーが励ましてくれるけど、こんなんじゃダメだよね・・・皆さんの役に立ちたいのに・・・
「はい!!これでも抱いて元気出して~」
セシリーがそういって私に差し出したのはスヤスヤ眠っているシリル。わぁ!シリルの寝顔なんて久しぶり!!
「ありがとうセシリー」
私は眠ってるシリルをぎゅっと抱き締める。はぁ~あ、少し落ち着いてきました。
「なるほど、始めからこうすればよかったのね」
「でもなんでシリルまで乗り物酔いしてたのかな~?」
「そういえばそうよね」
「シリル、乗り物に酔ったことなんてなかったのに・・・」
私はシリルの頭を撫でながらそう言う。もしかしてナツさんの乗り物酔いが移っちゃったのかな?ナツさんばかり気にしててシリルのことほったらかしにしちゃったなぁ。ごめんねシリル。
トントン
私たちがシリルの心配をしていると、不意にドアを叩く音が聞こえる。
「ナツくんかな?」
「ナツ、入っておいでよ」
「元気になったのかな?」
「鈍いから魔法がかかるのに時間がかかったのかも」
私たちがナツさんに入ってくるように言っても、いっこうに扉が開きません。どうしたのかな?
「ナツさん、どうしたんです・・・か!?」
私は扉を開けてナツさんを迎え入れようとすると、そこには見知らぬ男性が3人立っていました。全身黒いタイツに身を包んで。
「どうもー!!」
「「お邪魔しまーす!!」」
「あの・・・どちら様ですか?」
私はフリーズして何がなんだかわからなくなってしまう。その男性たちのうちの一人が、なぜかナツさんを持っていた。
「ちょっくらごめんなさいよ」
「うふふふふふ」
3人は私たちが警護している貨物車の中へと入っていく。
「ちょっと!ここ、関係者以外は立ち入り禁止なんですけど!」
ルーシィさんは立ち上がり、3人に出ていくように促す。
「いやね、この兄さんがそこんとこでぶっ倒れてたんでさぁ」
「ええっ!?」
「倒れてた!?」
「あらら。これは重症ね」
「完全に伸びちゃってるよ~」
男の人たちはナツさんを床へと下ろします。私たちはぐったりとしているナツさんに急いで駆け寄ります。大丈夫かな?
「まったくもう・・・」
「ナツさん!」
「ナーツ!!しっかり!!」
私たちがナツさんに声をかけていると、突然
ガシッ
「きゃっ!!」
私はナツさんを持ってきた人に手首を捕まれる。
それと同時に、他の二人の男の人が貨物車の両サイドの扉を開く。
「わぁ!!」
「なんだ!?」
驚くルーシィさんとハッピー。私は捕まれた左手をそのまま背中まで持っていかされる。う・・・動けない・・・
「動くんじゃねぇ!!この嬢ちゃんがどうなってもいいのか!?」
「おおっ!!兄貴かっこいい!!」
「まさに真の悪~!!」
私の腕を掴んでいる人を他の二人が褒め称える。
「真の悪?あんたたちまさか、この貨物が目的で」
「そうとも!!魔導士なんざ怖くねぇ!!俺たちゃ真の悪・・・」
「「「大強盗、ケツプリ団!!」」」
3人の男の人たちはぷっくりとしたお尻をルーシィさんたちに向けます。な・・・名前はそのまんまなんですね・・・
「何それ・・・」
「かっこ悪・・・」
「てかナツが完全空気・・・」
「それならシリルなんか「気持ち悪い」しか話してないよ・・・」
ケツプリ団さんの自己紹介を受け、シャルルたちはめんどくさそうです。
「えーい黙れ!!野郎共、パワーを溜めろ!!」
「「おおっ!!」」
ケツプリ団の皆さんはそう言うとお尻を小刻みに揺らし始めました。な・・・何をする気でしょうか?
「ちょっとあんたたち・・・何してんの?」
「さらにカッコ悪い・・・」
「み・・・見苦しい~・・・」
「オイラ吐きそう・・・」
ルーシィさんたちもそれを見てドン引きのようです。
「いいか!!この貨物は俺たちケツプリ団がいただいた!!お前ら全員飛び降りてもらおうか!!」
「バカなこと言わないで!!誰があんたたち悪党の言うことなんか・・・」
「そんなこと言える立場かな?」
「ルーシィさん・・・」
私が捕まっちゃってるせいでルーシィさんたちにまた迷惑を・・・今日も全然役に立ててないよぉ・・・
「大丈夫よウェンディ」
「絶対助けるから!!」
「僕たちに任せて~!!」
「汚いのは格好だけじゃないんだ!!」
ルーシィさんたちはそう言ってくれる。いつもいつもすみません・・・
「さぁどうする?飛び降りるのか?降りねぇのか?」
ケツプリ団さんはその間もずっとお尻を振っています。なんか嫌な予感がします・・・
「さぁ!!」
「さぁ!!」
「さぁさぁさぁ!!」
「「「さぁ!!」」」
ケツプリ団さんは3人でお尻をくっつける。
「チャージ完了!!行くぞ!!ケツプリ奥義!!」
「「「「!?」」」」
ケツプリ奥義?一体・・・
「ガスケツ!!」
「トリプル!!」
「エクスタシー!!」
そういってケツプリ団さんが繰り出した技は、おならでした。しかも、ものすごく臭いです!!
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
「みんなーー!!!」
あまりのおならの勢いで窓が割れ、ルーシィさんたちが落ちていってしまいました!!でも、私も臭すぎて・・・意識が・・・
「うぅ・・・」
私はしばらくして目が覚めました。だけど、その目の前にあったのは、
ぷりりんっ
「ひっ!!」
ぷりりんっ
「いっ!!」
ぷりりんっ
「あわわわ・・・」
目の前には右にも左にも大きなお尻がありました。
「あれ?みんなは?」
私は上体を起こし周りを見回します。そこには倒れているナツさんとシリルとケツプリ団の皆さんしかいません。すると、貨物の影からプルーが顔を覗かせてくれました。
「ププーン」
「プルー!!ぶじだったんだね!!」
「ププーン!!」
だけど、私一人じゃとても荷物は守るないし・・・ナツさんとシリルを起こさないと!!
「ナツさん!!起きてください!!」
「うぅ・・・」
ナツさんは乗り物酔いでやっぱり目覚めることができません。
「シリル!!起きて!!」
「うっ・・・」
シリルも真っ青のまま目覚めません。もしかしてトロイアが・・・いや、さっきのケツプリ奥義にやられたみたいですね。無意識にお鼻を押さえてますから。
「もしもし?もしもし?」
私は仕方ないのでケツプリ団の方を起こすことにしました。おそらくリーダーだと思われる方を揺すると、
「っ!?」
気がついたみたいで目を開けてくれました!!そのリーダーさんな前には助かったプルーが立っています。
「ププーン」
「・・・・・」
二人はしばらく見つめ合うと、リーダーさんは私に質問します。
「この・・・なんなんだこいつ・・・」
「プルーっていう星霊ですよ」
「う~!!」
私がプルーのことを説明すると、リーダーさんは突然表情を緩ませました。
「妙にかわいいぜ。荒んだハートの悪な俺には刺激が強ぇ・・・」
「あの・・・」
「はっ!!」
私が声をかけるとリーダーさんはキリッとした顔に戻り、仲間を踏みつけて起こします。
「子分A!!子分B!!起きろ!!」
「はぁ~・・・」
「臭いっス・・・」
もしかして、自分たちの出したケツプリ奥義で気を失っていたんでしょうか?捨て身の攻撃だったんですね。
「見ろ見ろ!!星霊だとよ!!初めて見るじゃねぇか!!」
「「星霊!?」」
ケツプリ団の3人はプルーを囲んで癒されています。確かにプルーって可愛いですもんね。って、そんなことより!!
「あ・・・あの・・・」
「「「はっ!!!」」」
3人は私に声をかけられると正気に戻ったようで立ち上がる。
「おっと!!真の悪としたことが取り乱してしまった!!気合いを入れ直せ!!腕立て23回!!」
なんでそんな半端な数字を!?もしかしてチームの何か記念の数字とか?
「俺らがやるでこざんすか!?」
「中途半端な回数っスね!!」
違った。子分の方々も中途半端だと思ってたんですね。
「ええい!!いいからやれぃ!!」
リーダーさんは四の五の言わさずに子分の方に腕立て伏せをやらせます。
みんながいないと不安ですけど、みんなはきっと大丈夫。私が金塊を守らなきゃ!!
「これから、どうするつもりですか?」
「知れたこと、この金塊を頂くだけよ。お嬢ちゃん一人で守れるかな?」
リーダーさんは私に顔を近づけてそういいました。だけど、私は一人じゃありません!!
「プルーもいます!!」
私がプルーを抱っこして見せると、リーダーさんは一瞬顔を緩ませたあと、首を振って正気に戻りました。
「お前らにはまだまだ人質としての使い道がある!!余計な手出しをしたら、こいつはどうなるかな?」
リーダーさんはナツさんの頭にお尻を押し付けます。このままじゃナツさんが・・・
「兄貴」
「腕立て終わったっス」
さっきリーダーさんから指示されて腕立て伏せをしていた二人も終わったらしく、息を乱してこちらにやってきました。
「休んでる場合じゃねぇ。子分B!!仕事にかかれ!!」
「ヘイ!!」
子分Bさんは黒タイツの中から爆弾を取り出しました。それを列車と貨車の連結部分に置いて火をつけます。
爆弾が爆発すると、連結部分が壊れ、次第に列車との距離が開き始めました。これには爆発音に気づいてやってきた車掌さんも驚きです。
「ダァーハッハッハッ!!金塊は俺たち、ケツプリ団がいただいたぁ!!」
「「さらばだぁ!!」」
「推進力よーいっ!!」
ケツプリ団の方は列車の方にお尻を向けます。まさかまたあれをやるんでしょうか?
「ガスケツトリプルエクスタシー!!文字通り!!撃てぇ!!」
リーダーさんの掛け声とともにガスケツトリプルエクスタシーが発射され、貨車はさっきまでの進行方向と真逆に動き始めます。すごいスピード!!
「見たかギルド!!見たか魔導士!!ケツプリ団に不可能はないのだ!!」
得意気にお尻をフリフリするケツプリ団の皆さん。でも、これってよくよく考えるとダメなんじゃないですかね?
「でも結局、これすぐ止まっちゃいますよね?そのたびにさっきのガスを噴射するんですか?それに、何も持ってないみたいですけど、これだけの荷物、どうやって運び出すんですか?」
私が質問すると、リーダーさんの顔が固まる。
「まさか、「考えてなかった~」なんてことはないですよね?」
考えてなかったようにしか見えませんけど・・・
3人が固まっていると、貨車は止まって動かなくなってしまう。
「止まっちゃったでこざんすね!!」
「どうするっスか?兄貴」
「ふふふふふ、ふはははははは!!この俺が何も考えてないと思ったか!?」
リーダーさんはポーズを決めながらそう言う。一体どうするのかな?
「俺たちの腕っぷしがあれば、できないことなど何もない!!」
リーダーさんは握りこぶしを作ってみせる。やっぱり嫌な予感がします。
「ということは!!」
「頼りになるのは、自分の足腰――――」
グギッ
「あ!!」
ガンッ
「あっあ~!!」
「「兄貴ー!!」」
「いた~っい!!」
リーダーさんは金塊の入った木箱を持ち上げたら、あまりの重さに背骨が折れ、そのせいで落とした木箱が足に落ち、痛みのあまり悶絶しています。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫なわけねぇ・・・」
「だったら」
私は治癒魔法でリーダーさんの腰と足を治療します。
「嬢ちゃん?」
「私、治癒魔法が得意なんです。痛みが和らぐといいんですが・・・」
ナツさんにもシリルにも今日はうまく魔法かけれてないから少し心配です。
「兄貴、どうでやんすか?」
「おおっ、スーっと痛みが消えていくみてぇだ」
「この嬢ちゃんただ者じゃないっスね」
そう言われると、少し照れますね。
「ありがとよ嬢ちゃん。楽になった」
「よかった~」
リーダーさんが元気になったので私たちはひと安心。
「けどよぉ、こんだけの力があるんなら、こっちの兄ちゃんと嬢ちゃんに魔法をかけてやればいいじゃねぇか」
リーダーさんはナツさんとシリルを見てそう言います。やっぱりシリルは女の子だと思われてるんですね。
「ダメなんです・・・酔い止めの魔法があるんですけど、かけすぎて、逆に効かなくなっちゃって・・・そっちの子は酔ってるのに気づかなくて長い時間放置しちゃってて・・・私、皆さんの役に立ちたいのに・・・」
自分の力不足が悲しくて、涙が溢れてきちゃいました・・・
「嬢ちゃん・・・苦労してんだなぁ・・・」
「そんなことないですよ。妖精の尻尾のみんなは、とてもいい人たちです」
私は涙を拭いながら答える。
「私、このギルドに入ってよかったと思ってます!!」
「「健気ぇー!!」」
二人の方が少し涙を浮かべながらそう叫びます。皆さんも私のことこんなに心配してくれるなんて・・・本当に悪い人なんでしょうか?
「でも、皆さんもそんなに悪い人には見えませんよ?」
私がそう言うと、リーダーさんの眉が不機嫌そうに動きました。
「あーーっとっと!!助けてもらって言うのもなんだが、真の悪にその言葉は最大の侮辱ってもんよ!!いいか?真の悪って言うのはなぁ」
リーダーさんは何か語ろうとしてますけど、今はそんなことしてる場合じゃないんじゃないですか?
「それより、どうやって荷物を運ぶか考えた方がよくないですか?」
私がその話題に触れたらリーダーさんはまた頭を抱えてしまう。
「この子の言うことはもっともでござんすよ」
「どうやって運ぶんスか?」
「あー!!子分ども集合!!」
心配する子分さんたちにリーダーさんは集合をかけ、小さくなって何かを話し合っています。
しっかりしなくちゃ。こんな時、シリルやナツさんならどうするだろう・・・
私が考えていると、天狼島でシリルが話していたことを思い出しました。
『仲間になったフリをしてた?』
『うん。俺が戦ったカミューニさん、ハデスを倒すために悪魔の心臓に入るふりをして奇襲を仕掛けたんだって。それで、その勝負に負けちゃったんだけど、隙があればハデスを殺してもいいって条件で仲間に入ってたらしいよ』
天狼島での悪魔の心臓との戦いが終わった後、シリルがそんな話をしていました。たぶん、私がカミューニって人のことを悪い人だと思ってたから、フォローしてくれたのかな?ってその時は思ってたけど、おかげでいい作戦を思い付きました!!ありがとう、シリル!!
「あの~皆さん?」
「「「うわぁぁぁ!!」」」
私が話し合っている皆さんに声をかけると、驚いて大きな声を出していました。驚かせちゃってごめんなさい・・・でも、今は作戦通りに・・・
「もし、皆さんが、金塊がどうしてもほしいというのなら、私が依頼人に話して、ちょっとだけ分けてもらえるように交渉してあげます」
「ええっ!?」
「いいんスか?そんなことして」
リーダーさんと子分Bさんが驚きながらそう言います。もちろん、条件付きですけどね。
「その代わり、約束してください。二度とこんな悪いことしないって」
「えぇ、それはちょっと・・・」
リーダーさんは私の提案に難色を示します。
「じゃあ金塊は諦めることです」
「「そんなー!!」」
「もし約束してくれるなら、私がこの貨車を動かします」
「できるでこざんすか!?」
子分さんたちが驚きながら私を見ています。
「はい!!さっきの皆さんのガスのやり方なら、私にもできそうです!!」
「嬢ちゃんがガスケツエクスタシーを決めるんスか!?」
え!?私があれを・・・
「違います/////!!」
そんなことできるわけないじゃないですか!!あんなの恥ずかしすぎます!!
「よーし!嬢ちゃんの話に乗った!!」
「「ええっ!?」」
「子分ども集合!!」
「「ヘイ!!」」
ケツプリ団の皆さんはまたも集まって何かを話始めました。
でも、私と約束してくれたから、きっとこれからは悪いことには手を出さないでくれるとか、そう言うお話しですよね?
「さぁ嬢ちゃん!!動かしてもらおうかい!!」
リーダーさんは説得が終わったのか、私の方に向き直る。私たちは貨車を動かすために、屋根の上に移動しました。
「ガスケツじゃなかったらどうするんすかね?」
「さぁな?あんなちっこいなりしてギルドマーク付けた魔導士でこざんしょ?とんでもない魔法を出すとか」
「お手並み拝見といこうじゃねぇか」
私の後ろでケツプリ団の皆さんがそんな会話をしています。大丈夫、私でもきっとできるはず。
「それじゃあ行きます」
私は口に目一杯魔力を溜め込んで・・・
「天竜の咆哮!!」
勢いよくブレスを放つと、貨車はあっという間に加速し始めました。とりあえず今はこの人たちの仲間のフリをして、ルーシィさんたちが来るのを待たないと!!
その頃、貨車の中で寝ていたこの男はというと・・・シリルside
「はっ!!いつの間にか眠ってしまった!!」
俺は列車に乗って動き出したのと同時くらいに、突然気持ち悪くなってしまい、途中まではなんとか耐えていた記憶があるのだが、いつの間にか気持ち悪すぎて気を失っていたみたいだ。
「あれな乗り物酔いかなぁ?ナツさんあんなのずっと耐えてたなんて・・・あれ?」
俺は一人乗り物酔いの恐ろしさを感じていると、ウェンディたちがいないことに気がつく。あれ?
「どこいった!?ウェンディ!!」
俺は辺りをくまなく探すが、どこにもウェンディの姿は見当たらない。
「そうだ!!これを使ってみよう!!」
俺はカミューニさんからもらった魔水晶を使い、遠くを見てみることにした。使い方は聞いてないから少し不安だけど、それとなく列車の外が見えてくる。
「あ!いた」
俺は天井のところで視線を止める。そこにはウェンディと変な黒いタイツを着ている3人の男がいた。誰だあいつら・・・
「俺も行ってみるか」
俺はひとまず、ウェンディの元へと向かうことにした。そういえばルーシィさんたちは大丈夫かな?どこにも見当たらないけど・・・
俺はルーシィさんの心配をしながらも、屋根の上へと上っていく。そこにいたのは、黒いタイツを着ている3人組と、なぜか一緒になってポーズを決めているウェンディがいた・・・黒タイツを着て。
「あ!!」
「ウェンディ・・・」
ウェンディは俺にお尻をつきだしてポーズを決めているところを見られ、顔を真っ赤にする。それと同時に、動いていた列車が止まってしまう。
「止まっちまったっスよ!!」
「女神様、出番です」
「いや・・・あの・・・/////」
ウェンディは自分の身に付けている黒タイツを隠すようにもじもじと動いている。そのしぐさはかわいいよ。かわいいけど・・・
「お前らぁ・・・」
「「「ひっ!!」」」
俺は怒りでフルフルと震えている。こいつら・・・
「ごちそうさまです!!」
「そっち!?」
俺は両手を合わせてお礼を言う。いやなんかウェンディのあんな姿を見て得したような気がしたからつい・・・
「ウェンディ!!シリル!!」
俺たちの上からルーシィさんの声が聞こえ、こちらに降りてくる。
「あんたたち!!ウェンディになんて格好させてるの!!」
「ことと次第によっちゃ喉笛噛みきるわよ!!」
「いたいけな少女にこんな格好させるなんて~!!」
ルーシィさんたちはすでに怒り心頭だ。俺的には嬉しいけど、やっぱりこんな恥ずかしい格好を許しちゃいけないよな!!
「だぁー!女神様助けてくだせぇ!!」
「ここは抵抗しないことです」
「「「ひええええ!!」」」
「子分ども集合!!」
「「「ヘイ!!」」」
ウェンディが集合をかけると変な3人組は膝をついて集まる。え?何あれ?
「馴染んでる・・・」
「なんでみんなウェンディの言うことを聞いてるわけ?てか女神様って何よ」
ルーシィさんとシャルルはその様子を見てそんなことを言っている。
「どうするのシリル~?」
「ウェンディが話終わったタイミングでぶっとばす!!」
俺はすでに拳に水を纏わせて準備万端だ。いつでもぶっとばしてやれるぜ!!
「おいお前ら」
すると、俺と同じく怒りに燃えている人が登場した。
「ナツ!!」
「事情は全部話したよ!!ウェンディ、悪党どもに脅されてるんでしょ?」
「そうじゃないの!!ハッピー!!」
ウェンディは手を振って否定するけど、じゃあその格好はなんなの?
「お前ら、俺にあんなに親切にしてたのは泥棒だったからか。よくも騙しやがったな!!」
「「「ええっ!!」」」
ナツさんも腕に炎を纏う。
「行くぞシリル!!こいつら地の果てまでぶっとばすぞ!!」
「もちろんです!!」
俺とナツさんは二人で一気に突進する。
「火竜の」
「水竜の」
「「鉄拳!!」」
俺たちの鉄拳を受けた3人組は空へと飛ばされ、すぐにその姿はみえなくなった。
「あ~あ」
「よく飛ぶわね」
「すごいすごい~!!」
ルーシィさんたちは飛んでいく悪党どもを見てそう言う。正義は必ず勝つんです!!バトルした記憶はないけど。
「あの人たち、そんなに悪い人たちじゃないと思いますよ」
ウェンディは3人組が飛ばされた方を見ながらそう言う。確かにウェンディのあのポーズはよかったけど、でもその格好を幼い少女にやらせるのは許せない!!だからこれはしょうがないことだと思うよ。
駅にて・・・
「いつまで待たせれば気が済むんだね!!」
「すいません!!ちょっとしたトラブルがあったもので!!」
ルーシィさんと、ウェンディが・・・依頼人に一生懸命頭を下げてるけど・・・俺とナツさんは乗り物酔いで眠っています。
「うぅ・・・もうダメだ・・・」
「結局また酔っちゃったね」
「シリルもなぜか乗り物弱くなっちゃったね~」
俺とナツさんの上に座っているハッピーとセシリーがそう言う。俺は気持ち悪くてちゃんと聞いていなかったが、今回の報酬は半額になったらしい。
こんなに気持ち悪い思いしてまで仕事したのに・・・あの3人組絶対許さねぇぞ!!ちょっとだけ感謝してるけど・・・
その後、俺たちはがっかりとうなだれながら帰路につき、当然のごとく俺とナツさんは乗り物酔いをしてマグノリアに戻っていきました。
なんで俺乗り物に弱くなったんだ?それが今回の一番の謎だ・・・
後書き
いかがだったでしょうか。
今回の話すごく長く感じました・・・
そして、シリルもついに乗り物酔いをするようになりました。
次回もよろしくお願いします。
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