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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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魔法舞踏会

ある日の妖精の尻尾(フェアリーテイル)にて・・・

「ん?」
「何かな?皆さん集まって・・・」

俺とウェンディ、それにシャルルとセシリーは今ギルドの前に来たのだが、何やら皆さん集まっている。なんかナツさんがエルザさんにすごい回されてるけど、何かの罰ゲームか?

「ロメオ!!」
「シリル兄!!ウェンディ姉!!」

俺はハッピーとその様子を見ているロメオに声をかける。ちなみに、以前まではくんづけだったのだが、ロメオが呼び捨てで読んでもらった方がしっくり来るということで呼び捨てで呼ぶことにしました。

「皆さん何してるの?」
「足踏みゲームの練習」
「「?」」

ロメオの説明に俺たちは意味がわからないでいる。すると、キナナさんとミラさんが俺たちに説明してくれた。
なんでも、リクエストボードにある依頼に『脱獄囚ベルベノの捕獲』というのがあったらしいのが、そのベルベノを捕まえてほしいと依頼したバルサミコ伯爵が主催する『魔法舞踏会』にそのベルベノが現れるという噂をマカオさんが耳にしたらしい。
だったら、その魔法舞踏会に参加してベルベノを捕まえよう!!とナツさんとルーシィさんが思ったらしく、ソシアルダンスの練習を始めたらしい。
ただ、ロメオはナツさんとルーシィさんが互いの足を踏みあってるのを見て『足踏みゲームの練習』と勘違いしてさっきの発言をしたそうだ。なんだか楽しそうだな。

「ソシアルダンスですか?素敵ですね」
「・・・そうだ!」

俺はウェンディに手を差し出す。

「Shall we dance ?」

ウェンディは俺の手を取る。

「I'd love to」

俺たちはそのままクラシック音楽に合わせて躍りを始める。

「へぇ~、シリルとウェンディってダンスうまいんだね!!」
「ウェンディはリズムを取るのがうまいから」
「シリルはダンスはできるよ~。歌とか楽器はビックリするくらい下手だけど・・・」

ハッピーにシャルルとセシリーが答える。しょうがないじゃん!楽器は覚えられないし、歌は音程わかんないし・・・

「Shall we dance ?」
「・・・しょうがないわね」

ハッピーの手を取るシャルル。ハッピーは嬉しそうに目をハートにしている。

「僕余っちゃった~?」
「仕方ない、俺が踊ろってやろう」

シャルルとハッピーが踊り始めたせいでセシリーは余ってしまったが、どこからともなく現れたリリーと一緒に踊り始める。

「俺たちも踊ってみようぜ」
「うん!面白そう!!」

ロメオとキナナさんがペアを組んで踊り始める。

「お嬢さん、俺と踊ってくれませんか?」

マカオさんは踊っているみんなを見ているミラさんに手を差し出す。

「いいですわよ」
「やったー!!」

ミラさんはスカートの裾をつまみ上げ、お嬢様みたいな口調で言う。マカオさんはそれを聞いてガッツポーズしている。

「てめぇ!!どさくさに紛れて汚ねぇぞ!!」
「うっせぇどけ!!」
「お前がどけ!!」

あとから遅れて現れたワカバさんとミラさんを取り合うマカオさん。

「父ちゃん・・・」

それを見たロメオはあきれていた。

「おい」
「な・・・何?」
「言っておくが、俺は踊らねぇぞ!!」
「誰も踊ってなんて言ってないでしょ!!」

ガジルさんとレビィさんはなぜかそんな話をしている。そのレビィさんに、ジェットさんとドロイさんが近づく。

「「レビィ!!俺と踊ろうぜ!!」」
「なんだよ俺が先だぞ!!」
「俺が先だよ!!」

ジェットさんとドロイさんはどちらが先に踊るかで揉めている。その隙にレビィさんはというと・・・

「しょうがねぇな、そこまで言うなら・・・」
「だから、何にも言ってないって」
「「なんだよそれー!!」」

さっき断ったはずのガジルさんと踊っていた。なんかあの二人もいい雰囲気ですよね。

「ダンスなら任せろである」
「ビジター、あんたのダンスは違う」
「はっきり言って邪魔だ」
「ガーン!!」

ビジターさんはリサーナさんとエルザさんにそういわれ落ち込んでいた。二人のダンスもソシアルダンスとは違うと思うのですが・・・
気がつくと、ギルドメンバー全員がその場に集まりダンスを踊っている。なんかすごい盛り上がってるけど、魔法舞踏会にもしかして全員でいくつもりなのか?なんか色々と不安なのは俺だけ?



























バルサミコ宮殿にて・・・

「「着いたー!!」」
「この宮殿で魔法舞踏会が開かれるのね」

俺たちは今、今回の仕事の依頼人、バルサミコ伯爵の住む宮殿の前まで来ている。

「案外遠かったな」
「ダンスのためだ。仕方あるまい」
「って、ダンスしたいってだけでついて来ないでよ」

エルザさんは仕事の手伝いと言うよりもただ踊りたくて来たようだ。エルザさんって意外にこういうことにも興味あるんですね。
俺たちが入り口の前で話していると、その扉を誰かが開ける。

「どちら様ですか?」
『うわっ!!すっげぇ美人!!』
「って、そんなことわざわざ念話しなくていい!!」

ドアを開けた女の人を見てウォーレンさんが念話をしてきたので、ルーシィさんがそう言い、俺とウェンディは苦笑いする。

「あんたは?」
「私はこの宮殿の主バルサミコの娘で、アチェートと言います」
『舌噛みそうな名前』
「「「「「ウォーレン!!」」」」」

ウォーレンさんがまた変なことを念話してきたのでルーシィさんたちが注意する。

「俺は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のナツだ」
「我々は、貴公の父君の依頼を受けて来たのだが・・・」

ナツさんとエルザさんはアチェートさんにそう伝える。エルザさんは踊りたいだけだから依頼は関係ないけどね。

「あ、それならご案内します。こちらへどうぞ」

俺たちはアチェートさんに案内され、宮殿の中へと入っていった。
























「私が依頼主の、バルサミコ伯爵だ!」

バルサミコ伯爵はアチェートさんの膝に座り、手をあげて俺たちに挨拶する。

「ふはははは!!名前も酸っぺぇけど」
「顔も酸っぱいね」
「あんたたちちょっと黙ってて!!」

ナツさんとハッピーはバルサミコ伯爵の顔を見て失礼なことを言うのでルーシィさんが怒る。確かになんか梅干し食べた後みたいな顔してますね・・・口には出さないけど。

「早速仕事の内容だが、依頼書に書かれていたものよりちと複雑でな」
「聞かせてもらおう」

依頼書に書かれていたものより複雑?どういうことだろう?

「ここにいる、超美人の私の娘のことなのだが」
「シタカミーさんだっけ?」
「アチェートだ!!」

ナツさん・・・舌噛みそうってウォーレンさんが言ったので名前間違って覚えちゃったのか。なんだよシタカミー(笑)さんって。

「すまない。話を進めてくれ」

エルザさんは申し訳なさそうにそう言う。ナツさんはエルザさんに殴り飛ばされて壁にめり込んでいた。

「今晩行われるこの魔法舞踏会は、実は娘の婿を決める舞踏会なのだ」
「ええ!?お婿さんを!?」

ルーシィさんはバルサミコ伯爵の言葉に驚いている。こんな舞踏会で結婚相手が決まるなんて、どんな貴族だよ。

「その際、7年に一度だけ披露される指輪がある。それこそがバルサミコ家に代々伝わる大切な指輪だ!!」
「じゃあもしかして、ベルベノはその指輪を狙って?」
「うむ。実は7年前もベルベノは指輪を狙い失敗しておる。おかげで婿選びも台無しになった」

バルサミコ伯爵はため息をつきながらそう言う。待てよ?7年前も婿選びしてたって・・・アチェートさん今いくつよ?

「しかし、ベルベノはこの風で、いくら変装して舞踏会に紛れても、すぐにバレるのでは?」

エルザさんの言う通り、依頼書のベルベノは泥棒髭にアフロヘアという姿をしている。いくら頑張ってもこれは簡単に見つかるんじゃ・・・

「奴は変身魔法とマジカルドレインを使うのだ」
「マジカルドレイン?なんだそりゃ」

伯爵の言葉にエルフマンさんがそう言う。

「触れた魔導士の魔法を短時間だけ複数コピーできるという厄介な魔法なのだ」
「なるほど、それで魔法流出(マジカルドレイン)ですか・・・」

しかも複数人数の魔法をコピーできるのか。かなり厄介じゃないか。

「へぇ!中々やるじゃねぇか!!」
「君たちの力を結集し、ベルベノから指輪を守るのだ!!そしてこやつを取っ捕まえて、再び牢獄に送り込んでほしい!!」
「任せておきな!!」
「ご期待には必ず答える」

バルサミコ伯爵にそう言われ、ナツさんとエルザさんがやる気満々で答える。

「それであの~・・・ベルベノを捕まえたら、依頼書にある通り・・・」
「うぬ。キャッシュで400万J(ジュエル)払おう」
「やったぁー!!キャッシュ!!助かったー!!」
「ルーシィさんそんなに家賃ヤバかったんですか?」

ルーシィさんのあまりの喜びように俺は驚いた。だけど、そんな中アチェートさんはなぜか寂しそうな顔をしているのが俺は少し気になった。


























ウェンディside

「うわっ!!なんでそんな本気モードになってるの!?」

私たちは今は個室の更衣室でお借りしたドレスに着替えています。私もおおよそ身支度が済むと、外からルーシィさんの声が聞こえてきました。

「仕事とはいえ、舞踏会に参加するには最低限の礼儀だ」

ルーシィさんとエルザさんの声が聞こえたので私も外に出てみる。そこには赤色のチャイナドレスを着ているルーシィさんと紫のセクシーなドレスを着ているエルザさんがいました。二人とも綺麗・・・それに比べて・・・

「私、大丈夫かな?」

私はピンクのドレスと肩に赤いケープを羽織っています。二人が綺麗すぎて私、自信なくなっちゃうな・・・

「ウェンディ、すごくかわいいよ!!きっとシリルもメロメロね!!」

ルーシィさんがそう言って誉めてくれる。ルーシィさんは優しいなぁ。

「でも、ちょっと恥ずかしい/////」

普段こんな服着ないから、シリルに見てもらうのすごく恥ずかしい・・・

「さぁ!!舞踏会の幕は上がった!!我々もステージに上がるぞ!!」
「エルザ!!お芝居の時と同じくらいノリノリ!!」

燃えているエルザさんを見てルーシィさんがそう言う。エルザさんすごいやる気!!

「よーし!私もがんばる!!」

私もシリルや皆さんと一緒に、絶対ベルベノを捕まえるぞ!!




























魔法舞踏会の会場にて・・・

『ウォーレン、ベルベノらしき奴は?』
『監視魔水晶(ラクリマ)で会場すべてを調べたが、今のところは見当たらねぇなぁ』

エルザさんは宮殿の外で待機しているウォーレンさんに念話で質問しています。

『怪しい奴がいたら、すぐに教えるよ』
『それまでは、なるべく自然に振る舞っていて』
『ウェンディたちもベルベノみたいなの見つけたら注意してね~』

ウォーレンさんと一緒にいるシャルルたちからそう言われたので、私たちは今は魔法舞踏会に参加することにしました。

「ナツたちは?」
「あ!いました!!」

私は辺りをキョロキョロと見回しているナツさん、グレイさん、エルフマンさんを発見しました。だけど、シリルの姿が見当たらないような・・・どうしたのかな?

「おや?シリルがいないようだな」
「本当だ。どうしたんだろ?」
「私、少し聞いてきます!!」

私はエルザさんたちから離れてナツさんたちの方へと早歩きで向かいます。

「ナツさん!」
「おおっ、ウェンディ。どうした?」
「あの・・・シリルはどうしたんですか?」

私はナツさんたちに質問します。すると、なぜかエルフマンさんは少し笑いながら答えました。

「シリルなら、さっき更衣室で女だと間違われてドレスを渡されてな」
「あれにはさすがに笑っちまったぜ」

グレイさんもそう言うと口元を押さえている。確かにシリルは女の子っぽいし、間違われないか心配だったけど・・・案の定だったんだ・・・

「でも、その分楽しみができたけどな」
「確かにな」
「漢だ!!」

ナツさんたちは突然楽しそうに会話を始める。何が楽しみなのかな?

「あの、何が「お!来たみたいだぜ」

私が質問しようとしたら、グレイさんが私の後ろを指さしてそう言う。私も後ろを振り返ると、そこにはびっくりするくらいの美少年がいた。
他の男の人に比べたら足りない背丈と細い体。だけど、黒いシャツと青いジャケットが男らしさを引き出している。
下は少し緩っとしたアイボリーのスーツに黒い革靴を履いている。
さらにメイクによって目をいつもと違い少しつり上げているように見せ、幼い顔立ちをうまくカバーしている。
そして、水色の前髪をあげ、額には赤色のヘアバンドを巻いていた。そう、つまりその美少年は・・・

「シリル!?」
「お待たせしました~」

シリルは私たちに笑顔でそう言う。えっ!?一体なんでこんなにかっこよくなっちゃったの!?

「実はシリルに間違ってドレスを渡した人がすごい気にしちゃってな」
「お詫びに、シリルを男らしくコーディネートするって言い出して」
「途中の段階でかなり漢だったからな。これぐらいはなると思ってたぜ」

グレイさんたちが私に説明してくれる。すごいかっこいいなぁ・・・

「ウェンディ、すごくドレス似合ってるね」
「あ・・・ありがとう/////シリルも、すごくかっこいいよ」
「ありがとう/////」

私とシリルは互いに誉めてたら二人とも真っ赤になってしまった。わぁ・・・今はお仕事の最中なのにシリルが気になって仕方ないよぉ・・・



シリルside

うわぁ・・・ウェンディのドレスめちゃくちゃかわいい・・・いつもよりも断然かわいさがアップしてるよ・・・

『エルザが怪しい男にダンスに誘われたよ!』
『調べてくれ』
『『わかった』』

ウォーレンさんから念話が入る。やべ!ウェンディに見とれててすっかりやることを忘れるとこだった。

「俺も――――」
「お前らはもう少しゆっくりしてていいぞ」
「ここは俺らに任せろ!!」

グレイさんとナツさんは足早にエルザさんたちの方へと歩いていく。いつのまにかエルフマンさんもいないし、俺とウェンディの二人だけになっちゃった!!

「「・・・・・」」

しばしの沈黙。俺もウェンディとうつむいたまま黙っている。でも、せっかく舞踏会に来たんだし(仕事とはいえ)、踊っとかないともったいないよね?グレイさんは何やらバトルを始めてるけど・・・

「ウェンディ、もしよければ・・・」

俺がウェンディを誘おうとしたら、突然会場がざわめき始める。なんだ?

「あ!アチェートさんが出てきましたよ」

ウェンディの言う通り、俺たちがいる階の上のステージからアチェートさんとバルサミコ伯爵がゆっくりと降りてくる。

「「「「「「「「「「オオッ!!」」」」」」」」」」

降りてきたアチェートさんを囲むように男の人たちが集まってくる。だけど、誰もダンスに誘おうとはしない。

「うふふふふ。アチェートが美し過ぎて、誰も誘えないようだな」

バルサミコ伯爵は得意気にそう言う。それにしても、あの伯爵とアチェートさんが親子だなんて信じられないなぁ・・・似てなさすぎて。

「あなたの眩しさは、漢らしすぎる!!」
「女なんですけど」

エルフマンさんにアチェートさんは苦笑いしながら答える。すると、そのままアチェートさんはこちらに視線を向ける。

「あの、踊って頂けませんか?」

そう言ってアチェートさんは視線をある人に向ける。問題はその指名された人が問題なんだ。だって・・・

「俺!?」

アチェートさんはなぜか俺を指名してきた。なんで俺?他にもグレイさんとナツさんとかいるじゃん!!

「なぁ!!漢エルフマン!!まさかシリルに負けるとは!!」
「マジか!?俺たちじゃなくてシリルかよ!?」
「まさかこの私が・・・」

悔しそうに叫ぶエルフマンさんとグレイさん。なぜかエルザさんは男装して落ち込んでいる。なぜ男装?
ていうか、これって受けるべきなのか?でもウェンディもいるし・・・

「いいじゃねぇか!!」
「そうね!!一緒に踊るべきよ!!」
「ちょっと残念だけど、アチェートさんと踊ってあげて!!」

ナツさん、ルーシィさん、ウェンディがそう言う。ウェンディがそう言うなら・・・

「喜んで」
「ありがとうございます」

俺はアチェートさんの手を取り、さっきアチェートさんとバルサミコ伯爵が降りた階段を二人で上り、ステージの上でソシアルダンスを始める。

「お上手ですね」
「ありがとうございます」

俺はアチェートさんに褒めてもらい、笑顔で答える。少し身長差がありすぎる気もするけど、まぁこれはこれで・・・って!?

「ウェンディが!!」
「どうしました?」

ウェンディが仮面を被った男の子と一緒に踊っている!?あいつ・・・俺のウェンディに手を出すなんて・・・許すまじ!!(原因はシリルがアチェートと踊っていることだと本人は気づいていません)

ゴーン!ゴーン!

俺がそんなことを思いながらダンスしていると、突然鐘の音が鳴り響く。

「?何か始まるんですか?」

俺はアチェートさんに質問する。

「指輪の披露です。あの巨大な柱時計は、7年に一度だけ扉を開き、指輪を披露する仕掛けなのです」

アチェートさんと説明通り、柱時計の扉が開き、赤い宝石を付けた指輪が現れる。

「そしてその中の指輪を手にした男が娘にプロポーズ出切るというのが、バルサミコ家の伝統なのだ!!」

そんな仕掛けになっているのか。バルサミコ家って色々と特殊なんだなぁ。

「さぁ!!娘にプロポーズしたい者は、あの指輪を手にするのだ!!」

バルサミコ伯爵の言葉と同時にたくさんの男性が宝石に向かって走り出す。なぜかその中にエルフマンさんがいるけど、あなた仕事のこと忘れてませんか!?

『ウェンディ!!そこにいるガキがベルベノだ!!』
『え!?』

ウォーレンさんからの念話が入る。ウェンディと踊ってたのがベルベノだと!?
少年はウェンディから逃げるように後方にジャンプする。

「変身、解除!!」

少年がそう言うと、その姿は一転してアフロヘアの男へと変身する。

「はっはっはっ!!」
「うわっ!!」

ウェンディは自分が踊っていたのがベルベノだとわかると、ショックを受けたようで涙目になっている。

「天竜の咆哮!!」

ベルベノはさっそくマジカルドレインを使って覚えたウェンディの魔法を使用する。なんか汚いぞ!!絵面的に!!
ベルベノの咆哮により会場は風に包まれ、その風によって指輪がベルベノに奪われる。

「へへへっ。バルサミコ家の指輪は、確かにこのベルベノ様がもらったぜ!!」
「ベルベノ・・・」
「己!!指輪を返せ!!」

バルサミコ伯爵は怒りを露にする。だけど、アチェートさんの態度に違和感を覚えているのは俺だけか?

「やーっと面白くなってきたぞ!!」

ナツさんは後ろからダンスの足場を使ってベルベノに接近する。

「俺が相手だ!!火竜の鉄拳!!」
「火竜の鉄拳!!」
「何!?」

二人は炎を腕に纏い、互いに拳をぶつけ合う。二人の力は均衡していたのか、その場に爆発が起こる。

「火竜の咆哮!!」
「火竜の咆哮!!」

またしてもベルベノはナツさんの魔法を使い攻撃する。あいつ、いつの間にナツさんの魔法を?

「ひひっ。ダンスしてる間に、お前の魔法もドレインさせてもらったのよ」

ベルベノは笑みを浮かべながらそう言う。

「ならば私が相手だ。シリル!!アチェート殿を頼む!!」
「了解しました!!」

俺はエルザさんの指示通り、アチェートさんを守るために前に立つ。

「換装、煉獄の鎧!!」

エルザさんはさっそく換装してベルベノに向き合う。

「換装、煉獄の鎧!!」

ベルベノも同様に換装する。エルザさんの魔法も覚えていたのか!!
ベルベノはエルザさんの攻撃を払い、元の姿に戻る。

「無駄だ。ここにいる妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバー全員の魔法も、すでにコピー済みよ」

ベルベノは余裕綽々の様子で葉巻を口にくわえる。あれ?待てよ?

「上等だぁ!!物真似野郎がどこまでやれるか、とことん勝負してやる!!」
「ナツさん待ってください」

俺は今にも襲いかかりそうなナツさんを止める。あいつは確か、触れた相手の魔法を一時的に覚えられるんだよなぁ?

「グレイさん、エルフマンさん、アチェートさんを頼みます」
「なんか策でもあるのか?」
「はい」
「漢だ!!ここは任せろ!!」

俺は二人にアチェートさんを任せてベルベノに歩み寄る。

「無駄だって言ったろ?俺はお前らの魔法は全てドレインしたからよ」
「俺のはドレインできてないだろ?」
「何?」

だって俺はここに遅れてきたせいでアチェートさんしか触ってないんだもん。他に触られた感触もなかったし、ここは俺がやるべきだな!!

「行くぜ!!水竜の咆哮!!」
「天竜の咆哮!!」

俺とベルベノの魔法がぶつかり合うが、俺の水がベルベノの風を押し返す。

「ぐわぁぁぁっ!!」

ベルベノは俺の攻撃を受けて倒れる。

「あのドレスを着たウェンディと俺より先に踊りやがって!!」
「「「「「「「「そんなことかよ!!」」」」」」」」

ギルドの皆さんもアチェートさんとバルサミコ伯爵もベルベノも思わず突っ込む。だってなんか悔しかったんだもん!!

「そんなじゃ!!トドメ――――」
「ま、待て!!俺はお前らと戦いに来た訳じゃねぇんだよ」

ベルベノは慌てたように俺を止める。指輪を盗みに来たんだろ?知ってるよ。

「前回は失敗したが、さらに7年も辛抱強く待ったのは、アチェート、お前にプロポーズするためだ」

ベルベノはさっき手に入れた指輪を見せる。え?何この展開・・・

「え?」
「プロポーズ!?」
「お前とはガキの頃からの付き合いだったが、俺はずっと、お前に惚れてたんだぜ」

ベルベノは自分の気持ちを伝えるが、それをバルサミコ伯爵が黙って聞いているはずがない。

「使用人の息子だった貴様を、特別に娘の遊び相手にしてやった恩を忘れたか!!」
「はん!!あんたに屋敷を追い出されてから、何度もアチェートに会いに行ったが、あんたは身分違いを理由に、毎回門前払いしてくれたな!」
「え!?パパ、そんなの私聞いてない!!」
「!!!! お前は黙っていなさい!!」

バルサミコ伯爵は慌てた様子でジタバタと手を動かす。

「俺もそのごもっともな理由で勝手にアチェートのことを諦めた。だがそのせいで心がすさんじまって、いつしか悪事に手を染め、気がつきゃ刑務所暮らしよ」

ベルベノは悲しそうな声で語る。

「あいつ何をごちゃごちゃと・・・」
「待て」

イライラし始めるナツさんをエルザさんは止める。ベルベノは顔を上げ、アチェートさんを見据える。

「でもよ、務所の中でお前に気持ちを伝えなかったことをずっと後悔してたんだ。だから俺は脱獄して、この7年に一度のチャンスに賭けたのよ。しかも二度もな!!」

7年に一度・・・しかも二回もチャレンジするのを考えると、ベルベノのアチェートさんへの想いは本気なのだろう。ベルベノはアチェートさんの前に行き、片膝をつく。

「アチェート、俺の嫁さんになってくれ」

ベルベノはアチェートさんにプロポーズする資格である指輪を差し出す。やべぇ、超かっこいいぞ!!

「そ・・・そんなもん断るに決まっておる!!」

バルサミコ伯爵はそう言う。アチェートさんはベルベノへと近づき、

「はい!」

まんべんの笑みで答える。

「え?」

ベルベノは予想外だったらしく、くわえていた葉巻を落とす。

「「「「「「えええっ!?」」」」」」

俺たちも予想外だったため、一瞬遅れて驚く。

「アチェート!!」
「ベルベノ、私もずっとあなたを待っていたのよ!!」
「本当か!?じゃあ、本当に俺の嫁さんになってくれるのか!?」

ベルベノはアチェートさんに再度確認する。

「ただし・・・自首して。罪を償ってからよ」
「・・・わかった」

ベルベノは愛するアチェートさんの説得により、自首することを決めた。アチェートさんは、ベルベノに左手を出す。
ベルベノはその手の薬指にに指輪をはめる。それと同時に、会場中は歓声に包まれた。

「すばらしい!!」
「はぁ?」
「ホント素敵!!」
「感動しました」
「美しすぎる!!」
「だってよ」
「ああ。愛こそ漢だ!!」

ナツさんを除いた妖精の尻尾(フェアリーテイル)メンバーはこのプロポーズに感動している。

「なんだかなぁ・・・うおっ!!」
「二人の門出に拍手だ」

舞踏会に参加していた全員から、幸せな二人に盛大な拍手が送られる。
しばらくして、やって来た評議院にベルベノは連れていかれる。

「じゃあ、行ってくる」
「待っています。必ず」
「ああ。俺も必ず迎えに来る」

二人は再会の約束を交わし、ベルベノは刑務所へと連行された。

「よーし!!今夜はアチェート殿の幸せを祝い、踊り明かそうではないか!!」
「おおっ!!」

俺たちはアチェートさんの幸せを祈り、ダンスをすることになった。

「ウェンディ!!」
「シリル!!」

俺はすぐにウェンディの元へと駆けつけ、片膝を付いて手を差し出す。

「Shall we dance ?」
「I'd love to 」

俺とウェンディは手を取り、ダンスを始める。アチェートさんとベルベノさんも、幸せになれるように祈ってます。











 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
シリルがダンス場所をアニメで出てきた足場ではなくてステージにしたのは皆さんお察しの通り、あれ(・・)にシリルがなってしまうからです。
次の話をやり易くするためにこのようにさせていただきました。
次回もよろしくお願いします。 
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