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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十九話 空手の型その三

「お願いします」
「わかったわ、じゃあね」
「はい、くれぐれも」
 僕は日菜子さんだけでなく一緒にいるマルヤムさん達にも話した。
「戸締りだけは」
「最近確かにね」 
 ここでだ、マルヤムさんも少し考える顔で話した。
「この辺り空き巣の話を聞くわね」
「そうなんだよね」
「だからなのね」
「戸締りは気をつけて」
「ムエタイをしていてもね」
「相手が武器を持っていたら」
 僕はその場合についてもだ、確かに話した。
「危ないから」
「そうなのよね、ムエタイが幾ら強くても」
「武器を持っている相手には分が悪いから」
 このことはどうしようもない、武器を持っているということはそれだけで有利になる。
「無理はしないでね」
「武器を持っている相手には迂闊に迎えないヨ」
「特に銃は危ないあるぞ」
 ジューンさんと水蓮さんはかなり具体的だった、僕は聞いていてシビアなそれも非常にそうであるものを感じずにはいられなかった。
「撃たれたらアウトヨ」
「自分の腕の過信は禁物ある」
「武器の方が絶対に強イ」
「これ鉄板ある」
「まあ銃は日本には殆どないけれど」 
 このことが他の国、特にアメリカとは違う。アメリカに銃が多いのは歴史的な事情も含めたかなり複雑な問題とは聞いている。
「ナイフとか持ってる人は普通にいるから」
「それ使って悪いことする人はいるわね」
 マルヤムさんも深刻な声で述べる。
「そうした人に気をつける為にも」
「戸締りはするし」
 それにだった。
「それぞれのお部屋の扉にもね」
「鍵を締めないといけないのね」
「はい、お願いします」
 僕は日菜子さんにも話した。
「このことは」
「わかったわ、そのことは気をつけるから」
「そういうことで」
「中々大変ね、神戸も最近は」
「沖縄は大丈夫ですか?」
「いや、そう言われると」
 日菜子さんはご自身の故郷のことを聞かれるとだ、少し微妙な顔になってそのうえで僕に答えてくれた。
「あまりいいとはね」
「言えないですか」
「結構物騒な話があるわよ」
 沖縄にもというのだ。
「あれでね」
「そうなんですね」
「そう、だから戸締りはしているわ」
 沖縄でも、というのだ。
「そうしているわ」
「そうですか」
「そう、だからね」 
 それで、というのだ。
「ここでも沖縄にいた時みたいにするわ」
「わかりました」
「そういうことでね」
 今も身体を動かしつつ言う日菜子さんだった、動くその為に闇夜の中で汗が飛び散りそれが銀色に輝く。
 その汗が地面を濡らして結構な濡れ具合になった時に。
 日菜子さんは動きを止めた、そのうえでこう言った。
「今日はこれでね」
「終わられますか」
「ええ、いい汗かいたわ」
 すっきりとした顔での言葉だった。 
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