ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
追跡
前書き
言うまでもありませんが、ニシュラはその日その日の書くときにどんな話を書くか考えていますので昨日と今日で次に書く話が違っていたりします。
まぁ、何が言いたいかと言えば、昨日書いて消えてしまった話と今回書いた話って、内容変わってるんですよね。詳しい話はあとがきで
「またてめえか……それと、てめえも酒場の時のやつだよな、あァ?」
「よ、よろしくお願いしますっ」
どうやら、フィルヴィスさんもローガと会うのは二度目のようだ。顔合わせた初っぱなからすでに険悪ムードである。
ロキ様たちに見守られる黄昏の館の正門前に集まったのは俺、フィルヴィス・シャリア、ベート・ローガ、レフィーヤ・ウィリディスの四人。
特に狼人であるローガと自尊心の強いエルフのフィルヴィスさんの間には種族的な相性の悪さが如実に表れている。なるほど、これが急造のパーティに見られる不和の弊害ってやつか。
「よお、ローガ。今日はよろしくな」
「何でてめえがここにいる」
「いちゃいけないってか? 悪いが、うちの主神様の指示だ。嫌でも行かせてもらうぞ」
「……はっ、足を引っ張るようなら蹴り飛ばすだけだ。くたばる前に失せろよ」
「言ってろ、狼」
ギッ、とお互いが凄んでにらみ会う。顔の刺青がチャームポイントってか? はっ! ディ◯ニーランドのフェイスペイントと同じようなもんだろ
「あ、あの、レフィーヤって言います。きょ、今日はよろしくお願いします!」
「……」
……なんか、あっちはあっちで面倒くさそうな人だな……
【ディオニュソス・ファミリア】所属、団長フィルヴィス・シャリア。黒髪に赤緋の瞳のエルフ。見た目は少々キツそうな印象を与えそうだ。あと、装備を見る限り、魔法剣士といったところか。
後の情報と言えば……確か、六年前、俺が転生した一年前の事件の数少ない生き残り、ということくらいか。
ラッカルさんに聞いた話、冒険者の間じゃ『死妖精』とか言われてるみたいだけど。
ま、どうでもいいや。
「あ、あの……」
「お?」
彼女についての情報をあれこれと考えていると不意に横から声がかかった。
見れば、そこにいたのは【ロキ・ファミリア】のLv3の魔導師、エルフのレフィーヤ・ウィリディス。【千の妖精】という二つ名を頂戴した少女だ。
なんでも、魔法で他のエルフの魔法を使えるようだ。だからサウザンド。すげぇ
「どうした? ウィリディスさん」
「あ、レフィーヤでいいです。あの、ベートさん、もういっちゃいましたよ?」
「……声かけてくれてありがとうな」
どうやら、考え事をしている間に出発してしまったようだ。まぁ、気にかけてほしいとは微塵にも思っていない。だが、こう、ちょっとムカッてくるよね。
「んじゃ、ちょっと急ぐか。ごめんな、レフィーヤ」
「い、いえ。大丈夫です!」
ほんと、こんなけいい娘だと、あれが先輩ってのがかわいそうに思えてくるぜ
もうすっかり小さくなってしまった狼人とエルフの背中を追って、俺達は少し足早に出発した。
ーーーーーーーーーー
「きょ、今日はいい天気ですねー?」
「十八階層に天候も糞もあるか」
「……」
「あー……まぁ、地面の下だしね、ここ」
ぎこちない笑みを浮かべて無理矢理話題を振ろうとするレフィーヤだったが、ローガはこれを一蹴し、フィルヴィスは相変わらずの無言。
ぎすぎすとした空気は変わらない。レフィーヤはかなり居心地が悪そうだ。
かく言う俺もこの現状はちょっと不味いかもしれないとか思っている。
だが、ローガとはあんまり仲良くなりたいとは思わないし、フィルヴィスさんに話しかけようとも無言でそのうち俺のハートがブレイクされそうだ。レフィーヤに話しかけるのがもっともいいのかもしれないが、多分それでは問題の解決にはならない。
是非ともレフィーヤにはフィルヴィスさんと仲良くなってほしいものだ。エルフは同族との仲間意識は強いと聞くし、狼人やヒューマンよりもうまくやれるはずだ。
今もなお、先程の戦闘のことで会話しようとするレフィーヤの姿をチラリと覗き見る。
ミノタウロスがどうとか、魔法剣士がどうとかめげずに話しかけるが、フィルヴィスさんは変わらずに無言を貫き通している。
本人、結構六年前のことで神経質になっているのだろうか。
……いや、それよりもその後の噂が原因だったりするんだろうな。『死妖精』という名をつけられたその理由。
「うるせえっての。耳障りだ」
うざったそうにローガが口を開き、そして鼻で笑う。
「使えねーなら捨てるだけでいいだろう。仲良しこよしになる必要がどこにある」
ほんと、なんでこう言うこと言っちゃうのかなこいつは。一理あるかもしれんが、連携をとる際に、支障が出るのは困るだろうに。
レフィーヤがあれでも、これがこうなら絶対に今の関係は改善しないぞ
「私も貴様と馴れ合うつもりは毛頭ない。下賤な狼人め」
「おー喋れるじゃねえか、陰険エルフ。その調子でモンスター相手に魔法でも歌ってろ」
まさに売り言葉に買い言葉。ローガもローガだがしかし、フィルヴィスさんもフィルヴィスさんだ。
あ、ほらレフィーヤが疲れた顔してるよ。誰かー気づいてあげてー
「はぁ、喧嘩するなら地上に出てからやってくれよ。うるさいから」
「事実を言ったまでだろうが」
「……フンッ」
時間の無駄だとばかりにフィルヴィスさんは森の先、十九階層に繋がる階層中央へ足を向ける。
「おい、間抜け。アイズの居場所もわかってねえだろ、先に街へ行くぞ」
情報収集が先だ、と呆れながらローガがフィルヴィスさんの襟首をつかもうとする
「アイズの居場所なら多分ーー」
「私に触れるなっ!!」
一閃
フィルヴィスさんの体が鋭く翻り、抜剣、白刃を勢いよく振るった。
甲高い金属音が響き渡る。
立ち尽くすレフィーヤと俺の前で切り払われたフィルヴィスさんの短剣。
ローガは腕につけた手甲で、危うげなくその攻撃を弾いていた。
「あァ?」
ビリビリと今も震える手甲を下げて、ローガが殺気を纏った。顔の刺青も怒りで歪んでいる。
これは……想像以上にヤバイな
一触即発の雰囲気に俺は危機感を感じた。
特にフィルヴィスさんだ。エルフは認めた相手でなければ肌の接触を許さないと言われているが、これは少し行き過ぎている。相手が第一級冒険者だったからよかったものの、相手が違えば怪我を負い、下手をすれば死んでいたかもしれないのだ。
……やっぱり、かなり気にしてるんだろうな……
『死妖精』。パーティ殺しのフィルヴィス。他派閥であれ、自派閥であれ、パーティ組めば彼女を残して全滅する。
縁起でもない話だ。だが、だからこそ、冒険者の間で噂が広まるのは早かったらしい。ラッカルさんはそんなことを言っていた。
必死にローガを説得し、フィルヴィスさんを擁護するレフィーヤ。そんな様子を一人で眺めながらそんなことを考えていた。
「それにしたって過剰だろ。どうかしてんじゃねーか。……それと、そこの紫野郎」
「……それは俺のことか?」
「は? 他にいねーだろうが。さっきアイズがどうとか言ったな。どう言うことだ?」
この狼、人の名前を覚えるのが相当苦手とみた。さすが、狼。知能レベルも野生か。
相変わらずの偉っそうな態度で、おら、話せと促してくるこいつをいつか切り刻むと決心しながら、俺は先程の続きを話す。
「アイズだったら、恐らく食料庫だ。このところのモンスターの大量発生はそこが原因だ。昨日なかを見たが、黒幕みたいな男もいたしな」
「……決まりか。行くぞ」
「ちょっと待て」
早速向かおうとするローガを呼び止める。
「その前に、フィルヴィスさんに聞きたい。それだけ拒絶するのは『死妖精』と呼ばれていることに関係するのか?」
「っ………」
「え、あの、それってどう言うことですか?」
俺とフィルヴィスさんを交互に見ながら、レフィーヤが疑問を口にした。
「……話なら行く途中でしてやるよ」
「はっ、話してる暇なんざあるなら、足を動かせ」
「安心しろ」
鼻で笑うローガを横目に、俺も階層中央へ向かう。
「話ながら移動できる方法があるからよ」
恐らくだが、食料庫じゃ戦闘になるだろう。その時に連携がうまく働かないのであればパーティ全員に迷惑がかかる。下手したら全滅するかもだ。そうなるくらいなら、フィルヴィスさんの過去にに触れてある程度の認識をもってもらった方がいい。……他派閥を乗せるのは大変不本意だが
ーーーーーーーーーー
「こ、これってあの時の……」
レフィーヤが戦車を眺めながら呟いた。どうやら、怪物祭の時に見たのを覚えていたらしい。……いや、覚えていて当然か。かなり最近の話だしな。
「これがてめえの魔法か?」
「俺のは少々変わってるんだよ。ほら、乗れ」
先に乗り込み、手綱握る。御者台はかなりの積載量を誇るため、この程度の人数なら十分すぎる程の広さだ。
俺に続いてローガ、フィルヴィスさんが乗り込み、最後にレフィーヤが恐る恐るといった様子で乗り込んだ。
それを確認した俺は手綱を振るい、戦車を進ませる。今日も元気な神牛である。
「さて、さっきの話の続き……といっても又聞きの話だがな」
手綱を握り、前を向きながら後ろの連中に語る。俺はラッカルさんから教えてもらった話を思い出すようにして話す。
「六年前、『二十七階層の悪夢』って事件があった」
「それって、大勢の冒険者が亡くなったって」
「らしいな。俺がオラリオに来る前の話だが、なんでも、闇派閥っていう連中が有力派閥のパーティをまとめて嵌め殺したそうだ」
闇派閥
秩序を嫌い、混沌を望む邪神達に率いられた過激派集団らしく、ギルドが絶対の根絶を掲げ、多くのファミリアとともに討ち滅ぼした『悪』の使徒。
『二十七階層の悪夢』はそんな闇派閥が無数の冒険者パーティを二十七階層のとある場所に誘き寄せ、捨て身の怪物進呈を敢行したらしい。
双方ともに多くの犠牲を出したこの事件は、今日では『悪夢』の名で語り継がれている。
「で、そこのフィルヴィスさんは数少ない生き残りらしい」
「っ、……それは……」
「まぁ、話したいのはこっからだ」
目の前に現れたホブゴブリンやリザードマンを吹っ飛ばし、踏み潰し、雷で焼く
「その日から呪われたように、フィルヴィスさんが関わったパーティは遅かれ早かれ全滅したらしい」
「……!」
「まぁそんなわけで、色々と噂が広まるのも早かったそうだ。渾名も、その時に広まったとかなんとか」
パーティ殺しの妖精ーー『死妖精』
そう呼ばれた彼女は他の冒険者から厄介者扱いされ、忌み嫌われ、悪目立ちしているらしい。
後ろを覗き見れば、フィルヴィスさんは御者台の一番下り口に近いところに座っている。
顔は見えない。が、今彼女はどんな顔をしているのか。
「……詳しいことは知らねえが、要は仲間を見捨てておめおめ生き残っちまったてことだろ。ざまぁーねえな」
口を開いたのはローガだった。口端を吊り上げてせせら笑う。
「何でまだ冒険者なんてやってんだよ、てめえ。そのままくたばっちまえば良かったじゃねえか」
「ベートさんっ!!」
レフィーヤがローガの言葉に声をあげた。さすがに言い過ぎだと言わんばかりに、彼女はキッ、とローガを睨んでいた。
ほんと、ローガの奴、弱いものいじめに余念がない。
俺はフィルヴィスさんの方に視線をやる。すると、彼女は静かに笑みを浮かべていた。
「お前の言う通りだ」
あ、これ自虐くるわ
俺は視線を前に戻して手綱を振るう。
ちょうどよく現れたデッドリー・ホーネットを雷で焼いて全滅させる。これくらいなら朝飯前だ。
「話は聞いただろ。どうする、ここてを別れるか? 私はお前達も殺すかもしれないぞ」
「てめーみてえな達観している奴が一番ムカつく」
モンスターを全滅させると、そんな言葉のやり取りが後ろから聞こえてきた。振り替えると、もう用はないとばかりにローガが御者台の奥、つまり俺の方に来ていた。
「ほんと、お前ってはっきり言うのな」
「言ってろ」
御者台の柵にもたれて足を組むローガ。まぁ、さっきの言葉は分かる。
噂はどうであれ、勝手に俺達が死ぬ前提で話をしないでほしい。そこまで弱いつもりはない。
「で? こっちで合ってるんだろうな」
「ああ。俺達が向かってるのは北の食料庫だ。それに、この道のりで灰やらドロップアイテムやらがやたらと散乱しているが……まぁ、アイズだろうな」
「……何でてめえがアイズを名前で呼んでんだよ」
「お、何だ。気に入らないのか? 生憎だが、本人からの許可はとっている」
「……そうかよ」
フンッと鼻を鳴らすローガは何か気に入らないかのように機嫌が悪い。……まぁ、多分だが俺とアイズの関係が気になるとかそんなとこだろう。というか、ロキ様からそういう話は聞いてるしな
「聞いたぞ? お前、アイズにメロメロなんだってな」
「んなっ!? 誰からきいたっ!!」
「ん? ロキ様」
「……あいつ……変なこと言いやがって……!!」
突然動揺したかと思えば、今度は己の主神に怒りを向けるローガ。つまり、図星ということでよろしいのだろうか
「怒るな怒るな。お前は口の悪い弱者いじめの大好きな狼だと思ってたが、そういうとこもあんだな。いいじゃないか、メロメロで」
「んなこと誰もいってねえよっ!!」
「ちなみに俺も好きなひとがいるぜっ!」
「んなこと聞いてねぇ!」
ガァア!! と怒声をあげるローガに俺は少しヒートアップ。フハハハ! 酒場のけりをつけてやんよぉ!
「まぁ待て安心しろ。アイズとの恋愛、頑張っ!」
「余計なお世話だ! ったく」
舌打ちして元の体勢に戻るローガ。うーむ、案外物好きな女からなら好まれるかもだな。俺からすれば男のツンデレとかwwwキメェwwwみたいな感じだけどな。
「式さん、これ何処に向かってるんですか?」
「ん? 北の食料庫。多分アイズもそこにいるだろうしな」
レフィーヤの声に振り替えって答える。雰囲気がいくらか和やかになっているような気がする。俺がローガと話している間に二人で話でもしたのだろう。いいことには違いないので良しとする。
「しかし、これが魔法か。……なんとも不思議なものだ……」
そういったのは今まで話しかけても無言だったフィルヴィスさんだ。レフィーヤ、よくやってくれたぜ。
心のなかで親指を立てる。
「あんまり口外してくれるなよ? 本当なら乗せることはなかったんだからな」
「はっ、勝手に乗せたのはてめーだ。んなこと知るかよ」
「もしどこからか漏れたら、問答無用であの事を話す」
「なっ、てめっ!?」
「……なんか、二人も仲良くなった?」
「さあな。ま、先程の空気よりはいいだろう」
御者台の中でお互いバラバラに座っていたが、今は先程よりも皆の距離が近くなっている。
話して少し心の距離が縮まったと言うべきか……
俺は相変わらず手綱を握り、目の前に出てくるモンスターを蹴散らしていく。
「っ! 見えたぞっ! あれが入り口だ」
「なんですかあれ!?」
現れたのは昨日も見た緑の壁。昨日と同じように雷で壁面を焼き、そのまま突進、突き破る。
昨日と同様、薄気味悪い植物のように変容したダンジョンに胸騒ぎを覚えたのか、他三名の纏う空気が変わった。戦闘体勢に入った、というべきだろうか。
食料庫まで続く道には、先行した者の足跡を示すように地面に落ちている水晶やモンスターの死骸があった。
「出るぞ!!」
大空洞、すなわち、あれが食料庫の入り口。
手綱を振るって速度を上げ、俺達が突っ込んだ先に待っていたのは、対峙する冒険者のパーティと、昨日の白ずくめの男(カラカラの変態紳士)とローブの集団(中身は恐らくコスプレ)だった。
後書き
戦車使って、リヴィラには寄っていないので、原作よりも到着が早くなっております。
あと、昨日書いてたのだと、原作通りにリヴィラ行って詳しい情報集めて、ボールスにフィルヴィスのことを聞き、そこでレフィーヤが親睦を深めて出発し、パントリーへっていう感じでした。つまり、式はゴルディアス・ホイール使ってなかったんですね、はい。
この話の流れは昨日の間話書いてるときに思い付いたんで、オリジナル要素強めで書いた、ということです。ベートのからかいもその一部です。
これからも応援よろしくお願いします!
ページ上へ戻る