ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか
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一方その頃
前書き
ちょっと乱雑。七千六百文字くらい書いてたんですけど、間違って消してしまい、もう一度書く気力が沸かなかったので間話的なものにしました。
……あぁ!俺のバカッ!
間話だからいつもよりも短いです!
「暇っすねー」
「……」コクリ
昼前にホームから出ていった己の主神と団長、副団長。
後に残された面々は戻ってくるまで自由にしていてよしと言われているのだが、見ての通り暇を持て余していた。
リビングのソファーに寝転がってだらける小さい体躯ぎ特徴の小人族であるアルドアを手元に置いた酒をチビチビ煽りながら眺めるデルガ。
「……変わったなぁ……」ボソリ
「ん? デルガ、何か言ったっすか?」
「……」ブンブン
首を横に振るデルガ。顔の大半を覆う毛が一緒になって揺れた。
アルドアは「そうっすか?」と首を傾げたが、直ぐに興味をなくしたようにぐでー、とだらける。
「アルドアさん、だらしないですよ」
そこへ入ってきたのは執事服に身を包む一人の青年、パディだ。その手にはトレイに乗せたティーセットが伺えた。
一応三人を除いた人数分が用意されているのだが、デルガが酒を飲んでいるのを見ると、自身の分を入れて口をつけた。
「パディ、俺っちのも頼むっすよ」
「はい、畏まりました」
よいしょ、と勢いをつけて起き上がったアルドアにパディは手際よくアルドア用のカップに紅茶を注ぐ。
「パディのいれてくれるお茶は、うまいっすからね~」
「ありがとうございます」
デルガも飲むっすよ、と正面に座るデルガを誘うが、酒があるからいいとばかりに軽く手に持った酒を掲げた。己がこのあと土産にと買うことになる神酒である。
「相変わらずの飲んだくれっすね、デルガは。部屋にもまだまだある見たいっすしね」
「僕はあまり飲まないので分かりませんが……やはり、他のものと違うんですか? その神酒は」
静かにカップをテーブルに置いたパディの問いに、デルガ一度だけ首を縦に動かした。
ほんと無口ですね、とパディは心の中で呟いた。
ほへぇ~と顔を緩ませて紅茶を飲むアルドアに、その様子を見て満足そうに自身も紅茶を飲むパディ。そして、そんな二人を交互に見て酒を煽るデルガ。
無言の続く静かな一時が流れる。
「あ~、筋トレもいいっすけど、こういうのも和むっすね~」
「ですね」
「……」コクリ
おかわりあるっすか? というアルドアのカップにパディがポットの紅茶を注ぐと紅茶のいい香りが辺りに漂った。
そんな香りに誘われたかのように、一人の妖精がこの場に姿を現した。もちろん、光るというおまけ付きで
「う~ん、この僕に相応しい香り……」
「お~、エイモンドも飲むっすか? パディの入れた紅茶」
「フッ、そうだね。ティータイムと洒落込もうじゃないか」
失礼するよ、とデルガの隣、パディの正面に陣取ったのは白地に金の刺繍が施された服(これが私服なのだから驚きだ)を着るエイモンド。一々ポーズを決めてゆっくりと腰を下ろす間に、パディが紅茶の用意を終わらせる。
「……やはり、いい香りだ」
「ありがとうございます」
カップを持ち上げ、香りを楽しむエイモンド。エルフで金髪という容姿も相まって、これがなかなか絵になっている。リリアが見れば鼻で笑いそうであるが
「フッ、水面に映る僕、なんて美しいんだ……そう、まるで光り輝く月のように……」
「実際光ってるっすもんね~」
「エイモンドさん、今は光るのは抑えてくださいね」
「フッ、僕が美しすぎるからって嫉妬はよくないよ?」
そう言いつつも魔法を解除するエイモンド。隣で光られて目を細めていたデルガが漸く目を開くと、再び酒を煽りだす。
「ん? 何してんだお前ら」
「ああ、ちょっとしたティータイムだよ、ヒル。君もどうだい?」
続いて自室から降りてきたのかヒルが現れると、パディはカップを掲げてヒルを誘った。
「紅茶はなぁ……お! おっさん! その神酒、俺にも分けてくれよ」
エイモンドとは逆のデルガの隣に乱暴に座ったヒルはいつの間に用意していたのかグラスを出した。
デルガは一度己の酒の残りを気にするようにして軽く振ると、渋々と言った様子でヒルが差し出したグラスに酒を注いだ。
「サンキューな、おっさん」
そう言って一口煽ると、やっぱうめぇ! と言葉を吐き出した。
「ヒル。もっと静かにできないのかい」
「つっても、何でこんなに静かなのかそっちの方が疑問だぜ?」
「確かにそうっすね、んじゃ、誰か話題を振ってほしいっす」
「それじゃあ、この僕がどうすればもっと美しくなるか、何て言うのはどうだい?」
カップを置き、フサァッ、と前髪をかきあげるエイモンド。
「ウザいからやめろ」
「これ以上は必要ないかと」
「そうっすよね」
「……」コクリ
「フッ、つまり、これ以上美しくなられると困るという嫉妬なんだね。けど、安心してくれ。僕の美貌は万人にも平等なのさっ!」
即答でこの場の全員から否定を受けたエイモンドであったが、まるで気に止めた様子もなく、それどころか、自身の頭の中で台詞を都合のよいものへと変換していた。
これぞまさしくエイモンド・エイナルドである、
「……相変わらずのポジティブシンキングには感服っすね」
「……だな」
「……ですね」
「……」コクリ
いつの間にか立ち上がり、光ってポーズを決めているエイモンドに一同は深いため息をついた。
【極光の陶酔者】の名は伊達ではない。
「あ、話題というほどじゃねえんだけどよ」
「なんかあるんすか?」
「おお。大したことじゃないが、またラッカルの奴が飯を食わせろってよ」
「あの斧狂い、よく集りに来るっすよねー」
「ですね。以前、自然に僕らの食卓についていた時は少々驚きましたよ」
スウィードが入団する前、いつの間に紛れ込んでいたのか【ウィザル・ファミリア】団長のラッカル・オイードが食卓に混ざっていたのだ。
その時は仕方なく一緒に食べたが、その後ウィザル様に襟首掴まれて引きずられて帰っていった光景はよく思い出せる。
式やハーチェスがホームのセキュリティを見直し始めたのもこのときからだ。
「あれが団長ってのが分からねえ」
「まぁ、色々あるんすよ。強いことにはかわりないっす」
「……」コクリ
「フッ、だが美しさは僕が上さっ!」
エイモンドは無視されたっ!
「他に話題……そういや、式がLv6になったっすね」
「ああ……そう言えばそうでした」
思い出したように言ったアルドアに、他の団員もパディと似たような反応を示した。
副団長であるが、【ファミリア】内でもっとも強い冒険者、ナンバ・式
「前の【ランクアップ】は……一年くらい前か?」
「いや、半年っすね。俺っち覚えてるっすよ」
「……これ、普通だと異常何ですよね」
「……」コクリ
「だが、異常なのは式だけじゃねえ。俺達もだ」
「アビリティの伸びが半端ないっすからね」
他の派閥から聞いている伸びとは全く違う、アビリティの異常成長。これはこの【バルドル・ファミリア】に入団した者全員に思うところがあった。
「特に式っすよね」
「だな。五年でLv6ってのはバカげてる」
「式ですからね」
「フッ、違いない」
だが、だからといってファミリア内で式を悪くいうやつはいない。怖がるやつもいない。彼らにとっては、等しく年下の先輩という感覚しかない。
全て、式だから、と済まされることに何の疑問も持っていないのだ。
それに、彼らは式と長いときを共にしているのだ。絆は深い
「ま、流石に四つ目の魔法とか、聞いたときには驚いたぜ」
「まさか常識すら覆すとは思わなかったっす」
「けど、【九魔姫】も【千の妖精】も四つ以上使えますよね?」
「あれはエルフだからさ。何たって、僕らは魔法種族だからね」
「……式はヒューマンですよ?」
「だね。けど、いつか同じような人が出るかもしれないだろ? 今回みたいに。式は最初にそうなったにすぎないのさ」
結局は式だからしょうがない、という結論に行き着き、この話はおしまいとなる。
「そういや、スウィードはどうした?」
「スウィードなら、朝の早くからダンジョンに潜ると言って出掛けましたよ。今日は五階層で粘るそうです」
「お、ソロっすか。スウィードもやるっすね」
「元々、筋は悪くない。五階層くらいなら大丈夫だろう。フッ、これも僕の美しすぎる指導の賜物ってやつだね」
「美しさも糞もねえだろ。それと、てめえがスウィードに指導してるとこ見たことねえぞ」
「時折してたっすよ。……ポーズの指導だったっすけど」
「それは……意味がないでしょ」
「……」コクリ
分かってないなぁ、と肩を竦めて額に手を置くエイモンド。彼曰く、美しさ=強さらしい。
なんだそれはという一同の思いが一致した。
「そういや、そろそろあいつの武器買いかえた方がいいんじゃねぇか? 今のアビリティだと、威力も重さももの足りねえだろうしよ」
「んー、ですね。では、今度スウィードには自分の稼いだ分のお金を持ってバベルにいってもらいましょうか」
「お、ついに自分で選ばせるんすね」
はい、と微笑むパディは紅茶のなくなったポットと他の団員の空になったカップを回収して一度下がる。
戻ってきた際に、顔色が少し悪かったため、心配されたが大丈夫と言って話を続けた。
「刀も弓も、スウィードの稼ぎなら良いものが買えると思いますよ」
「ちなみに、スウィードはいくらくらいこれまでで稼いだんだ?」
「ちょっと待ってください」
再び立ち上がったパディは、部屋のタンスの引き出しを開け、そこから帳簿のようなもなを取り出した。
パディ自作の家計簿である。しかもこれ、各々がどれだけ稼いでどれだけ使ったのか事細かに記入されているのだ。
ファミリアの財布はパディが持っているといっても過言ではない。
「そうですね、だいたい三〇万ヴァリスは超えてます」
「お~、スウィードもなかなか頑張ってるっすね!」
「ま、遠征の時に頑張ってたからな」
「……」コクリ
まだまだアビリティでは足りないが、パディ達のサポートのおかげで実力相応の階層よりも下のモンスターを倒していたスウィード。
あの時の顔は思わず笑ってしまいそうなほど喜んでいた。
「いやしかしまぁ、こうやって男だけで話すってのもなかなか楽しいもんだな」
「ですね。まぁ、女っ気がことは残念なんでしょうが」
「パディ、それは言わない約束っすよ。けど俺っちは、理想の女の子をいつか見つけるっすよ! 有名になれば俺っちも【勇者】みたいになれるはずっす!!」
「フッ、僕の光となる人はもう決まってるのさ」
「こいつこんなんなのに一途とか調子狂うわ」
「……」コクリ
「……そういえば、紅一点で思い出したっすけどリリアはどうしたっすか?」
あれ、そう言えば、と今の今まで忘れていた人物がいないことに気づいた一同。皆が辺りを見渡すその中で一人、パディは真っ青な顔をして汗を垂れ流す。
「おや? パディ、汗がすごいよ」
「え、ええ。少し紅茶を飲み過ぎたようです」
「無理すんなよ? そうだ、俺が水でも取りに……」
「だ、大丈夫ですよヒル。拭けば収まりますから」
ポケットにしまっていたハンカチを額に押し当てるパディ。だが、汗は拭われるどころか、その量を増していく。
「そいうえば、もう昼っすけど、今日は何を作るんすか?」
「え、ええ。その事なんですがーー」
言葉は吃り、視線はあちこちを行ったり来たり。どう見ても普通の反応ではなく、普段のパディからは想像もつかないような様子に一同は首を傾げる。
そして、その時がきた
「皆、腕によりをかけて作ったから特別に食べていいわよ!!」
「ーーリリアさんが作ってくれました……」
ぐったりと項垂れるパディ。その言葉に絶望する団員(男達)。
リリアが手にもって現れたのはショッキングピンクの色をした何か。
「おいしいカレーが出来たわよ」
それがカレーなのか!?
「おい、パディ! 何で止めなかったんだ!?」
「……間に合いませんでした……ポットを引いたときには、もう……」
「……」ガクブルガクブルガクブルガクブル
「デルガァ!? しっかりするっす! 傷は浅いっすよぉ!?」
「……あぁ、この僕の美貌が永遠に失われることをお許しください…」
カオスと化したリビングに現れたリリアは、その様子を見て首を傾げた。そして、一人この場に足りないことに気がついた。
「そう言えばスウィードはどうしたの? 折角人数分作ったのだけれど」
その言葉に反応したのは、アルドアだった。
「俺っち、スウィード呼んでくるっす!! 皆は先に食べといていいっすよ!?」
「あ、てめっ!! 逃げる気かぁ!!」
「その役目、この僕にこそ相応しい!!」
「いえ、ここは執事である僕が!」
「貴様らぁ!! 年上に譲らんかぁぁぁ!!」
「「「「デルガがしゃべったぁ!?」」」」
一気にリビングから玄関へと駆け出していく一同。その顔には鬼気迫るものがあった。押して押されて、我先にと進んだその先の玄関
不意にガチャリ、と開かれた。
「お昼食べに帰ってきましたぁ~」
「「「「「ノオォオオオオオオオオオオ!?!?!?」」」」」
神は死んだ(死んでないよっ!)
その後、リリアを除く団員全員が床に伏せたという。
後書き
ちょっと発散ではっちゃけたかった。後悔はしていない!
三日以内には更新したい!!
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