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フリージング 新訳

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第29話 Sanction 1

 
前書き
お久しぶりです。実はテストが想像以上に大変でしてね……遅れてしまい申し訳ありませんでした!
 

 


交錯する二つの刃と、ガッシリと止められた拳。
それを行ったのは、銀色の籠手を右腕に付け、その手に同系統の片刃の長剣を握った青年。見間違えるはずもない。
サテライザーもラナも、その人物のパートナーをかけて戦っていたのだ。

「カズト……!」
「カズトくん⁉︎」

二人は驚き、同時に身を引いた。
いや、ほとんどカズトの剣と、その威圧感によって引かされたと言うのが正しいだろう。それくらいに、今のカズトは殺気立っていた。

「お二方。弁明があるなら一応聞くが、どうする?」

二人を同時に見ながら、低い声音で尋ねる。その声に、ラナはゾクリとするが、視線はそのまま離さなかった。いや、離せなかったと言うのが正しい。
一瞬でも、この青年から目を離せば、何をされるか分からない。
そう思わせる目だった。

「だんまりか……まぁら理由とかは大方把握できるけど……」

一つため息を吐き、グラディウスを収納するカズト。その動きには、一切の無駄もない。そして、小走りでサテライザーの元へと駆け寄り、ふらついていた体を支える。

「か、カズト……これは、その……」
「何も言わなくていい。まずは二人とも手当しないと……」

その姿を見て、ラナは何かがおかしい事に気がつく。
なぜだ?サテライザーは無理やりカズトの事を従えているのではないのか?
なのに、何故カズトはここまで彼女の事を心配しているのだ?

ラナが困惑に顔を歪ませていると、カズトが何かに気がついたように、ラナへと話しかけた。

「言っておくけど、俺とサテラは、ラナが思ってるような…と言うか、聞かされたような関係じゃないよ。」
「え、それって…」

ラナがカズトに聞こうとした時、訓練所に三つの人影が現れる。
一つは、ラナも見たことのある背丈の低い女性。その表情は、満足気に笑っている。あとの二人は見たことのない顔だ。
赤毛のポニーテールの女性に、褐色の女性。恐らくは三年生ではあろうが、雰囲気からして余り友好的ではない。

「意外と遅かったですね。先輩方。」
「あら、いつから気がついていたのかしら、ボウヤ?」
「まぁ、悪意とかそう言うのには敏感なんでね……」

自嘲気味に笑いながら、彼はラナとサテライザーを庇うかのように前に出る。

「どういうことでありますか……?サテライザーはカズトくんを無理矢理従えてると……」
「……なんか、とんでも無い設定を吹き込まれてんな……」

溜息を吐きながら、カズトは三人と向かい合う。
その目には、明らかな敵意が見ることができた。この三人を排除する。その事に何の躊躇いもない。

「随分とふざけた真似してくれますね。先輩方。」
「そうかしら?貴女こそ、内のイングリットに手を出してくれたみたいだけど?」
「覚えがないこと言って話を逸らすな。」

お互いに睨み合い、動かなくなる。
そして、

「ぷっハハハハハハ‼︎」

その静寂を破ったのは一つの笑い声だった。発生源は、赤毛のポニーテールをした三年生。その顔は、心底嬉しそうだ。

「やぁ、あんた面白いね。三年生に対して、そこまで堂々としてる一年も珍しいよ。」
「そりゃ、ここまで堂々と喧嘩売られたら堂々とせざるを得ないでしょう。」
「喧嘩はそっちが先に売ってきたんじゃないのかな?」
「年上ならそれくらい上手く躱してみせろよ。」

赤髪の三年生、アーネットとカズトの視線が交錯し、空気を重くする。今まで笑っていたアーネットも、遂に目つきが鋭くなった。

「あまり粋がるなよ、餓鬼。」
「威張り散らかすな、お姉様方。」

そう言い放った瞬間、アーネットとカズトの姿が消えた。
サテライザーとラナでさえ追いつけない程の速度ということだろう。聞こえるのは、度々ぶつかり合う金属音と、さらなる高みへと登る時の加速音のみ。
ようやくサテライザーは目で追えるようにはなったが、それでもギリギリ残像が追える程度だ。
正に、格上の戦い。
そした、遂に二人のアクセルは止まった。それを止めたのは、銀髪と褐色の肌をもった三年生、クレオだ。

止めたと言っても、カズトのように間に入ったわけではない。アーネットの首根っこを掴み、カズトと引き剥がしたのだ。

「何をしているアーネット。指導する相手を間違えるな。」
「え〜、だってあの子すっごく面白いよ!ヤラなきゃ損だよ!」
「何をヤル気だ何を。まったく……」

ポイとアーネットを放り、クレオが前に出てくる。その拳はラナのと同系統の輝きを持っている。
つまり、格闘スタイルのパンドラ。カズトと戦ったことのないタイプだ。

「そこを退け、一年生。用があるのはサテライザーだ。」

不遜な物言いにカズトは苦笑いしながらも、サテライザーとラナの前に立とうとした。

「待って……」

だが、それを止める声が背後から聞こえる。凛とした、カズトが学園で最も信頼する人の声。

「私が……相手をする……」
「っ!サテラ、あんた正気か⁉︎」

サテライザーがボロボロになりながらも、立ち上がりカズトを押しのけ前に出る。その体は、ラナとの決闘で最早瀕死に近い。

「これ、私の問題だ……」
「そんなこと…でも、だからって…!」

確かにそうだ。カズトも分かっているから反論できずにいる。先ほどまでの饒舌さはどこへ行ったのだろう。自分で自分が嫌になっていた時だ。もう一人が立ち上がった。

「それなら、私もでありますね。」

浅黒い肌を持った、サテライザーと同等以上の死闘を繰り広げた、拳法使い。
ラナ・リンチェンその人だった。

「ラナ……なんで……」
「私の勘違いも原因の一つでありますから。お詫びでありますよ。」

そう言いながら、サテライザーに目配せをしカズトの前に立つ。
それを見たアーネットとクレオは、カズトから視線を外し、二人へと目を向けた。

「それでは、行くぞ二年生。」
「覚悟、出来てる〜?」

挑発的に言う二人に対して、サテライザーとラナ。二人の頬にビキリと青筋が入ったのを、カズトは見逃さなかった。
触らぬ神に祟りなし、と言うかのように、コッソリと壁際まで退散する。

「言っておくでありますが、私の方が貴方達よりも年上であります。」
「私だって17歳だ。」
 
 

 
後書き
次回、決戦開始⁉︎
 
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