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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十八話 真田幸村その十二

「絶対じゃないけれど」
「まだ強い人がいるんですね」
「急に出てきたりするわよ」
「思わぬ、ってやつですね」
「そう、何時誰が出て来るかとか」
 それこそ、という口調でだ。日菜子さんは僕に話してくれた。
「バスケでもわからないでしょ」
「急に名前も知らない学校が強くなったりとかありますね」
「いい選手が出て来たりとかね」
「そういうことですか」
「そう、空手でもなのよ」 
 このことをだ、僕に話してくれた。
「だからわからないのよ」
「急に物凄く強い人もですね」
「天才ね」
「空手の天才ですか」
「そうした人が出て来たら」
「わからないですか」
「そう、今回の大会もはじめて見る名前の娘がいるけれど」
 日菜子さんは僕に真剣そのものの顔で話した、今も。
「一年生の娘でね」
「それ何処の娘ですか?」
「ええと、そこまでは見ていないけれど」
「一年生で全国大会ですか」
「それだけでも凄いでしょ」
「そうですね、一年生でいきなりとか」
 その凄さは僕もわかった、バスケにしても一年でいきなりレギュラーとかそうそうない。それは空手でも同じことだ。
「普通ないですから」
「そう、それが出来た娘だから」
「やっぱり相当強いんですね」
「空手で一番大事なことは」
「何ですか?」
 僕は日菜子さんにすぐに問うた。
「一体」
「侮らないことよ」
「相手をですか」
「そう、絶対にね」
 このことがというのだ。
「それが一番大事なのよ」
「相手を侮れば油断が生じる」
「そこから負けるから」
「本当にそうですよね」
「そうした人も見てきたから」
 相手を侮って負ける人をというのだ。
「これまでね」
「だから先輩は」
「そう、相手はね」
 それが誰でもというのだ。
「馬鹿にしないでね」
「全力で、ですね」
「向かう様にしているの」
「それが一番ですよね」
「本当にね」
 それこそも言う日菜子さんだった。
「獅子は鼠を倒すのに、っていうわよね」
「全力で、ですね」
「さもないと怪我もするし」
 相手を侮ってその油断のせいでというのだ。
「心全体が緩んでね」
「それもあってですか」
「そう、私は相手は馬鹿にしないわ」
 本気での言葉だった。
「全力で向かって倒すの」
「一年生の娘でも」
「まして失礼じゃない」
「全力で向かわないとですか」
「そうしないとね」
「馬鹿にされてるってことですからね」 
 手を抜かれる、その行為そのものがだ。
「確かにそうですね」
「プロ野球選手でもでしょ、相手のバッターを馬鹿にしたらね」
「打たれますね」
「それで打たれた人も多いわよ」
 格下と思ってその相手にだ、そういえば金田正一さんも誰かを格下と見てその人にホームランを同じ試合に二本打たれたらしい。 
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