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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十八話 真田幸村その十

「それに巨人は勝たないと魅力がないチームなんだ」
「勝った時だけでござるな」
「そこが阪神と違うんだ」
「勝っても負けても華があるチームと」
「全くね」
「成程、わかったでござる」
「野球は阪神だよ」
 僕個人が思っていることだけれどそれと共に強く思ってもいることだ。
「阪神が一番だよ」
「では拙者も見るでござる」
「阪神をだね」
「そして好きになれば」
 まさにだ、その時はとも言うのだった。
「応援するでござる、義和殿と一緒に」
「僕となんだ」
「そうでござる」 
 僕に顔を向けて微笑んでの言葉だった。
「頑張るでござるよ」
「頑張るんだ」
「応援もその他のこともでござる」
 何故かここで僕も見て言うのだった、それも笑顔で。
「頑張るでござるよ」
「剣道に忍術に」
「もう一つあるでござるから」
「何かよくわからないけれど」
「そのうちわかるでござるよ」
 マルヤムさんは笑って僕に言うけれど僕はそれがどういうことかわからなかった、そうしたことを話しながら。
 僕達二人は八条荘に着いた、着いた時はもう夕暮れも深くなっていた。その帰って来た僕達をだ。最初に出迎えてくれたのは友奈さんだった。
 友奈さんは丁渡扉を出たところだった、そこで僕達を見て。
 一瞬微妙な顔になってからだった、こう僕達に言って来た。
「二人で行ってたの」
「うん、大阪までね」
「そう」
 こう僕に言って来た、マルヤムさんにではなく。
「わかったわ」
「うん、日菜子さんは今日は」
「ずっとここにいたわ」
「アパートから出なかったんだ」
「そうだったの、けれど」
「けれど?」
「若し何かあったら」
 その時はとだ、僕をじっと見たまま言って来た。
「今度は私が一緒にね」
「一緒にって」
「またわかるわ」
「また?」
「そう、また」
 今はこう言うだけだった、友奈さんは。
 けれどだ、今度はマルヤムさんをちらりと見てだった。無言で八条荘を出た。その時に僕にこんなことを言った。
「コンビニ行って来るわ」
「コンビニ行くんだ」
「ちょっとね」
「もうすぐ夜だから気をつけてね」
「ジューンと水蓮誘うから」
 二人、しかも格闘の出来る二人と、というのだ。
「だから大丈夫よ」
「そう、それじゃあ」
 こう僕に言ってだった、友奈さんはアパートを出た。そして僕はまたマルヤムさんと二人になったけれど。
 ここでだった、マルヤムさんもぽつりと呟いた。
「油断出来ないでござるな」
「油断って?」
「いや、何でもないでござる」 
 僕から少し視線を逸らした感じでの言葉だった。
「気にしないで欲しいでござる」
「そう、じゃあ後は」
「晩御飯でござるな」
「少し時間があるから」
 僕はマルヤムさんにこうも言った。 
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