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僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。

作者:小狗丸
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アヴェンジャーの宝具

 宝具。

 それは英霊が生前に築き上げた伝説の象徴。物資化した奇跡とも呼ばれている。

 大体は英霊が伝説で使用していた有名な武具やアイテムがこの宝具となるのだが、中には伝説上で語られる特殊能力や伝説そのものが宝具である場合もある。

 つまり宝具とはその英霊にのみ使うことを許された唯一無二の必殺技、秘密兵器みたいなものだと考えてもいいだろう。

「宝具、だと……? 馬鹿な!? こんな序盤で使うのか!?」

 アヴェンジャーに宝具を使えと言った僕の発言にレーベンが驚いた顔をする。うるさいな。僕だってそのランサーが相手じゃなかったらこんなことはしなかったよ。

 正体が天使で堕天使なんてチートサーヴァントに勝機があるとしたら、レーベンとランサーに動揺が残っているこの時しかない。

 いくらアヴェンジャーの妖術がランサーの対魔力スキルを無視できるとしても、それでも有利なのは断然に向こう。まだレーベン達が妖術の対抗手段を見出だせていない内に勝負を決める必要がある。

 そしてそう言っている間にもアヴェンジャーの宝具が発動した。

「さあ……。出てきなさい。『魔を産む黒き骸』(がしゃどくろ)」

 アヴェンジャーが呟くと同時に、骸骨の人形の頭部だけでなく胴体が展開する。人形の頭部に胴体、更には手足の関節からも大量の泥が漏れ出てくる。

 骸骨の人形から漏れ出た泥はアヴェンジャーの妖術で作り出されたもので、僅かな時間でアリーナのほとんどを埋めつくほどまで広まった泥は、彼女の意思に従って巨大な形となる。

「こ、これは……!?」

「………」

 泥から生まれ出たのは、巨大な黒い骸骨だった。レーベンはそれを見上げて驚きの声を上げる。

 魔を産む黒き骸(がしゃどくろ)。

 これがアヴェンジャーの宝具。

 がしゃどくろとは埋葬されなかった戦死者が集まった日本の妖怪の名前で、生前のアヴェンジャー、瀧夜叉姫は朝廷に戦いを挑んだ時に一体の巨大な骸骨を操ったとも無数の動く骸骨を操ったとも言われている。

 その伝説が物資化したもの、あるいは正体であるのが、あの巨大な黒い骸骨の宝具だ。

「これを使うのは久しぶりね。……やっちゃいなさい!」

「ーーーーー!!」

 アヴェンジャーが命令を出すと黒い骸骨、がしゃどくろは両腕を上げて咆哮を上げる。そしてそれと同時にがしゃどくろの脚の一部が泥に戻って地面に流れ、その泥からは数体の人間と同じ大きさの骸骨が現れた。

 がしゃどくろは外見は骸骨だが元々は泥でできた人形。その泥の一部を切り離すことで小さな(それでも人間と同じ大きさだが)分身を作り出せるということか。

 アヴェンジャーから話は聞いていたが、こうして実際に見て初めて納得したよ。

「「ーーーーーーー!!」」

 がしゃどくろが、そしてがしゃどくろから生まれ出た無数の骸骨達が咆哮を上げてランサーに襲いかかる。

「………!」

 それに対してランサーは、さっきのアヴェンジャーの戦闘スキルによって動きを封じられていて逃げることはできずにいた。

「ランサー!? くっ、耐えろ! 何とか耐えてくれ!」

「「ーーーーーーー!!」」

 レーベンがランサーに向かった叫ぶのとがしゃどくろが攻撃を仕掛けるのは全くの同時だった。

 内に宿る魔力の全てを破壊力に変えてがしゃどくろが両腕をランサーに目掛けて降り下ろし、無数の骸骨達が突撃を仕掛ける。

「………!?」

 がしゃどくろの両腕が、骸骨達の突撃がランサーに激突した瞬間、アリーナ全体が激しく揺れた。 
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