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僕のサーヴァントは魔力が「EX」です。

作者:小狗丸
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速攻

「いよいよだね。マスター」

「ああ、いよいよだ。ついに来てしまったよ、この日が」

 レーベンのランサーの真名、レミエルに気づいた日から四日後。僕とアヴェンジャーは月海原学園の廊下を歩いていた。

 学園の外は夜となっており廊下を歩くのは僕達二人だけ。……夜の学校っていうのは少し不気味だよな。

 今日は聖杯戦争七日目。あのレーベンとランサーの二人との決戦の日だ。

 今日までの四日間、僕達は出来るだけのことをした。アリーナで戦闘訓練を行い、何故か学園の敷居内にある教会にいる二人の魔術師の姉妹に頼んで、魔術回路をアヴェンジャーにより適合するように改竄してもらった。

 だがそれでもあのランサーに勝てるという自信はない。というか正体が天使のサーヴァントなんて正直反則だって。

 その上、あれからレーベンとランサーはマイルームから外に出ず、アリーナにも現れなかった。一度戦った情報しかない僕達は、ろくな対策も立てられないまま決戦に出ることになった。

「結局、アヴェンジャーの言ったごり押し戦法が一番勝率が高いか……」

「大丈夫、大丈夫♪ 人間、死ぬ気になれば大抵のことはできるって」

 明るい口調で言うアヴェンジャー。その発言には何の根拠もないが、考えれば考えるだけ暗くなっていく今の状況で、彼女のポジティブさは正直ありがたかった。

 そんなことを話しているうちに僕達は一階の玄関口の近くにある用務室に辿り着いた。

 ここが決戦場の入口。

 昨日まではただの用務室だったそこはエレベーターの扉にと変わっていて、僕達が近づくとそれだけで自動で開いた。中もエレベーターの内部にと変わっていて入ると扉がしまって、エレベーターは僕達を乗せて遥か地下へ、レーベン達が待っているであろう決戦場へと向かっていった。

 ☆

「やあ、久しぶりだね。待っていたよ」

 決戦場につくと先に来ていたレーベンが声をかけてきて、その隣ではランサーが無言で僕達を見ていた。

 決戦場は荒れ果てた古い神殿のような場所で、上を見てみると天井がなく、今にも雨が降りだしそうな暗雲におおわれた空が見えた。

 これは大会の運営NPC「言峰神父」から聞いた話なのだが、決戦場の景色はこれから戦うどちらかの、ムーンセルが有利だと判断したサーヴァントのイメージにあったものになるらしい。つまり今のところムーンセルは僕とアヴェンジャーが負ける確率が高いと判断しているということだ。……まあいいけどね。

「もはや交わす言葉はない。可愛そうだが君達はランサーが司る『神の慈悲』を得ることなく、ここで消えていってくれ」

 神の慈悲……。確かレミエルの異名の一つだったな。

 これでランサーの真名がレミエルであるのはこれで確定か……。全く、何で僕達が一回戦からこんなのと戦わないといけないんだよ?

「悪いけど今回は最初から全力でいかせてもらうよ。……ランサー!」

「……!」

 レーベンの言葉にランサーは、瞬時に雷光を纏って光の槍を手に取るとこちらに突撃をしてきた。そしてそれを迎撃するためにアヴェンジャーが骸骨の人形を雷光の天使に向けて飛ばした。

「最初から全力で、か……」

「ふふん♪ 『呪塊・大蛇』!」

 僕の呟きを聞いてアヴェンジャーは獰猛な笑みを浮かべて大声を出す。その次の瞬間、彼女が操る骸骨の人形の頭部が展開し、そこから黒い塊が飛び出した。

 人形の頭部から飛び出したのは、黒い泥で作られた数匹の蛇だった。泥の蛇はこちらに突撃をしてくるランサーの体に絡み付くと一斉に強く締め上げる。

 呪塊・大蛇はアヴェンジャーが使う戦闘スキルの一つで、妖術で作り出した泥を蛇の形にして操り敵を攻撃するというもの。

「………!?」

「なっ……!? 何故だ!? 何故キャスターの魔術が通用する!? ランサーの『対魔力』スキルはAだぞ!?」

 ランサーの体が泥の蛇に捕らわれたのを見て、当のサーヴァントとそのマスターであるレーベンが驚愕の表情となる。ああ、やっぱりランサーはAランクの対魔力スキルを持っていたのか。

 最初に戦った日からレーベン達が出てこなかったのは彼らなりの余裕だったのだろう。レーベンはアヴェンジャーのキャスターと思い込み「ランサーの対魔力スキルがあれば攻撃魔術を無効化でき、地力はランサーの方が上なのだから長期戦になればこちらが有利」と考えたはずだ。

 レーベンの考えは間違っていない。地力は向こうの方が高いのは確かだし、アヴェンジャーが使う戦闘スキルが「魔術」であったなら、こちらに打つ手はなかっただろう。

 しかしアヴェンジャーが使う戦闘スキルは「妖術」。魔術の一面は持っているが、基本は魔術とはシステム自体が異なる「呪術」である為、魔術のみに適応される対魔力スキルは意味をなさないと言うわけだ。

「最初から全力でいく……奇遇だね、僕達もそのつもりだよ。続けてやれ!」

「了解♪ 『呪塊・山犬』! 『呪塊・蝙蝠』!」

 僕の言うとアヴェンジャーは骸骨の人形に命令を飛ばし、骸骨の人形から今度は黒い泥でできた犬と蝙蝠が飛び出してランサーに襲いかかる。

「……!」

「ら、ランサー!? くそっ! こうなったら……」

 アヴェンジャーの戦闘スキルを受けて声のない悲鳴を上げるランサーを見てレーベンが何か指示を出そうとするが、それを遮って僕は大声を出した。

「アヴェンジャー!!」

「え……? あ、アヴェ……?」

 アヴェンジャーをキャスターと思い込んでいたレーベンは、彼女がエクストラクラスだと知って戸惑い動きを止める。もちろんこれはわざとだ。相手の動揺を誘って作り出した隙を利用して僕は自分のサーヴァントに指示を出した。

「今だ。……『宝具』を使え」 
 

 
後書き
呪塊・山犬
「使用条件:COST30MP
 敵に魔力ダメージ+BREAKスタン」
呪塊・大蛇
「使用条件:COST30MP
 敵に魔力ダメージ+ATTACKスタン」
呪塊・蝙蝠
「使用条件:COST30MP
 敵に魔力ダメージ+GUARDスタン」 
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