FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
黒魔導士
シリルside
「いた!!」
「あそこ!!」
「ナツー!!」
俺たちはさっき落としてしまったナツさんをようやく見つけ、そちらに向かって飛んでいく。
そこには、エルフマンさんとエバーグリーンさんもいた・・・あれ?誰だ?あの男の人は・・・
「ナツー!!どうしたの急にー!!てっぺんいくんじゃなかったのー!?」
「ハッピー・・・」
「お前も落とせって言われたから落とすなんて・・・人のこと言えないからな?」
突然「俺を落とせ」って言ったナツさんもナツさんだけど、それを聞き入れて落としちゃうハッピーもハッピーだからな?
「よくわかんねぇけど・・・すげぇぶきみな匂いがした」
「匂い?」
俺にはよくわからなかったけど・・・あれ?ていうかここ・・・
「な・・・なんだこれ!?」
「一体どうしたの~!?」
「辺り一面・・・」
「木々が・・・」
「枯れてる!?」
そう、俺たちがナツさんたちのところに来たときには、すでに周りのすべての木に葉っぱが付いてなく、枯れてしまっていた。なんなんだよこれ・・・
「・・・」
男の人は、暗い顔で俯いていた。まさか、あの人がやったのか?
「あいつの魔法なの?」
「こんな魔法見たことないよ~」
「ただ者じゃないわね」
「相当ヤバそうな奴ですよね」
「何もんだ、一体・・・」
俺たちは男の人を見て、そう言った。でも・・・どことなか儚げな感じがするのはなぜなんだ?
「誰だか知らねぇが、ここは俺たちのギルドの島だ!!試験の邪魔をするんじゃねぇよ!!」
ナツさんは男の人に怒った口調で言う。だが、男の人は俯いたまま、これといった反応を見せない。
「大きく・・・なったね・・・」
「ああ!?」
大きくなった?何が?
「会いたかったよ。ナツ」
「!!」
男の人はそう言った。ナツさんの知り合い・・・なのか?
「うおっ!!」
ナツさんは男の人に向かってジャンプする。
「誰だてめぇは!!」
「「「「「!!」」」」」
ナツさんはいきなり、男の人をぶん殴った。え!?
「ナツくん!?」
「殴った!!」
「いきなりかよ!?」
「やると思った・・・」
「やっぱり獣ですね・・・」
ナツさんに殴られた男の人の体は、宙を舞い、回転している。半回転したところで、男の人は見事に着地を決める。
「お前なんか知らねぇ。名乗れ!!」
男の人は、その場にゆっくりと立ち上がる。その体は、小刻みに震えていて、上げられた顔は、涙で濡れていた。
「な・・・泣いてる・・・」
「痛かったのかな~?」
ハッピーとセシリーは、涙を流している男の人を見てそう言う。
「なんて不気味な奴なの」
「すごい嫌な感じがしますよ」
「ぬうう・・・」
俺とエルフマンさんたちは、その男のあまりにも不気味な雰囲気に、恐怖を感じていた。
すると、男の人の体から、黒い煙のようなものが現れる。なんだ?あれ。
「逃げ・・・て・・・」
男の人は頭を押さえながらそう言う。その間にも、男の人の周りには黒い何かが現れ、次第にそれが大きくなっていく。
「なんだ!?」
「さっきの黒い波動か!?」
「黒い波動~!?」
「すげぇ禍々しい感じがしますよ・・・」
「あれは、命を奪おうとする魔力よ!!」
俺たちは黒い波動を見ながらそう言う。ヤバい!!
「ナツ!!」
「ナツさん!!」
「全員ここから離れろー!!」
俺たちはその波動から逃れるため、全力でその場から離れる。だが、一番近くにいたナツさんが、その波動に飲み込まれる。
「うあああああ!!」
「ナツ!!」
「バカ!!行くな!!」
ナツさんを助けようと戻ろうとするハッピーを、エルフマンさんが掴む。俺たちにも黒い波動が迫ってくる。
「伏せろー!!」
「「「うあああああ!!」」」
俺たちは波動から身を守るために、急いで倒れ込んだ。
男の人の放った波動は、辺りの枯れていた木を、何本も粉々にしてしまった。
「なんだよ・・・くそ・・・」
煙の中から、ナツさんが姿を現す。よかった!!無事だったんだ!!
「ナツー!!」
「大丈夫だ・・・それよりあいつは・・・」
俺たちはさっきの男の人を探す。だが、どこにもその姿はない・・・逃げられたか・・・
「消えた・・・」
「なんだったんだ・・・」
「意味わかんないよ~・・・」
「だな・・・」
とにかく、全員無事だったからよしとしよう。
「ナツ!!どうしたのそれ!?マフラーが・・・」
俺たちはナツさんの方をよく見ると、普段から首に巻いている白いマフラーが、黒く変色していた。
「野郎イグニールからもらったマフラーを・・・」
ナツさんはマフラーを見て怒りを露にする。イグニールが・・・ナツさんの親が、あの黒い波動から守ってくれたのかな?
一方、メストとウェンディは・・・第三者side
「!?」
メストは何かを感じ、空を見上げる。
(この魔力・・・このプレッシャー・・・奴が・・・この島にいるのか、)
メストのそう心の中でいい、自分の野望を叶えられるという期待から、より黒く、恐ろしい表情へと変化していた。
「ついに見つけたわ。眠ってるみたいだけど」
ここは、悪魔の心臓の戦艦の中。一人の女性が、腕で水晶を転がしながらそう言った。
「時は来たようです。マスターハデス」
女は自分の前に座っている老人に言う。老人はそれを聞き、笑みを浮かべる。
「その男・・・古の地に降り立ち、黒魔術を極め・・・数万の悪魔を生み出し、世界を混沌へと陥れた。魔法界の歴史において最強最悪の男・・・
黒魔導士、ゼレフ」
そう、先程まで、ナツたちと相対していた男こそ、この老人の言うゼレフ本人であった。
「手に届く日が来たか、魔道の深淵。針路を妖精の島へ」
その老人、マスターハデスの前に6人の魔導士が佇んでいた。
シリルたちはその時、自分たちに迫り来る魔の手に、気づいていなかった。
シリルside
「あの野郎・・・イグニールをマフラーをこんなんにしやがって・・・」
「ナツ・・・」
ナツさんは黒く染まったマフラーを見て、怒りに震えていた。そりゃそうですよね。親からもらった大切な物を、こんなことにされたら・・・
「黒い服に黒いマフラーってどうなんだよ!!ファッションとして!!」
「そっち!?」
「あいつ・・・コーディネートに気を遣ってたのか・・・」
「意外ね・・・」
「いつも同じ服だから、そういうの気にしてないと思ってた~」
俺たちはナツさんのまさかの発言に驚いていた。てっきり、イグニールからもらったものだからだと思ってたのに・・・ファッションの方で怒ってたのか・・・
「ねぇ・・・試験どうする?」
「どうしようね~」
ハッピーとセシリーが今後のことについて相談してくる。でもなぁ・・・
「う~ん・・・あんな不気味な奴がウロウロしてるんじゃ・・・それどころじゃないわね」
「ギルド以外の人がいるなんて、結構な問題ですもんね」
エバーグリーンさんと俺がそう言う。あいつが何者かは知らないけど、ギルドの聖地によそ者がいるなんて問題のはずだからな。早めに報告しておかないと。
「それどころじゃなくはない!!」
「漢として、この試験は譲れん!!」
しかし、俺たちの意見なんてどこ吹く風、ナツさんとエルフマンさんは試験を続ける気満々だ。
「俺はギルダーツと約束した」
「俺だって姉ちゃんの弟だ!!S級になる義務がある」
二人はそういって睨み合う。やれやれ・・・
「確かに不気味な奴だったよね・・・いきなり泣くし」
「木は枯らせるし~」
「ナツの友達って変なの多いね」
「ですよね~。ハッピーとか、グレイさんとか」
「さっきの奴は友達じゃねぇ!!」
「オイラは全然変じゃないよ~!!」
ナツさんがハッピーに突っ込み、ハッピーは俺に突っ込む。でも、ナツさんの知り合いなんですよね?ナツさんのことを知ってたわけだし。
「でも敵意はなかったような気がするなー」
「それは僕も思ったよ~」
「確かに、悪い人には見えなかったね」
「あきれたー」
エバーグリーンさんはそっぽを見ながらため息をつく。でも本当に敵意はなかったと思いますよ?
「しゃー!!試験続行だー!!」
「あいさー!!」
ナツさんとハッピーはそういって走り出す。
「おし!!行くぞエバーグリーン!!」
「だから私に指図するなって言ってんでしょ!!」
気がついたらエルフマンさんたちもどこかに走っていってしまった。
「シリル~。僕たちはどうする~?」
「う~ん・・・」
セシリーに質問されて考え込む。俺もS級にはなりたいけど、それよりもまずはギルドの皆さんに無事でいてほしい。だったら!
「俺たちは一度、簡易ベースに戻るぞ!!」
「おっけ~!!」
俺たちはエルサさんたちの集まっている、簡易ベースへと駆け出した。
第三者side
「ついにこの時が来たか。伝説の黒魔導士ゼレフ、復活の日。鍵は全て我が手中にある。我々がゼレフの中にあるものを目覚めさせるのだ」
ハデスは自分の前に立っている大量の兵たちにそう言う。
「ただし、問題が一つあります。今やフィオーレ王国最強の座に着く魔導士ギルド 、妖精の尻尾」
黒い髪を束ねている女、ウルティアが水晶の中に妖精の尻尾のギルドを写しながらそう言う。
「バラム同盟の一角、“六魔将軍”を破ったギルドの一つ。その妖精の尻尾の主力メンバーが現在、あの島に集結している」
「な~になによ。そんなの大したことねぇーってよ!!そんな奴等はよぉ、ぜんぶ俺っちが灰にしてやるからよぉ!!ウハハハハハ!!」
そういって自らの体を黒い炎で覆っているのは、悪魔の心臓の七眷属の一人、ザンクロウ。
「暑苦しいわよザンクロウ」
それを見たウルティアは、そう呟いた。
「敵を侮るべからず。私は、この日のために生まれたのだ」
そう言ったのは、山羊の顔をした男、カプリコ。
「同感だな、カプリコ」
「自分は・・・」
「解き放て、俺たちの欲望・・・」
「う・・・ウーウェ・・・」
「これは我がギルドの総力戦となる。震えよ、俺たちの心」
そういって眼鏡をかけているキラキラしたこの男は、ラスティローズ。
「じもながす!!」
「早口すぎだよ!!」
あまりの早口に、何を言っているのかわからなかった、肌が白く、顔の大きな男、華院=ヒカル。
「ただいまの華院=ヒカルの解読・・・」
「?」
「『自分もそんな気がします』」
「ウーウェ!」
華院=ヒカルは桃髪の少女、メルディに自分のいいたいことを当ててもらい嬉しくなる。
「先程のラスティローズの解読・・・デザイアは欲望。カケラは、心の意味」
「メルディ、戦える?」
「戦い・・・うん」
ウルティアの問いに、メルディはうなずく。
ウルティアはうなずいたメルディを見たあと、視線をある男に移す。
「あなたはどこで動くのかしら?カミューニ」
「俺ぁもうすでに駒を動かしてんよ!」
ハデスの近くに立っていた赤髪の男、カミューニがそう言う。
「もう動かしてる?」
「ああ。カプリコの家来に、すでに命令して動かしてある」
「また勝手なことを・・・」
「お兄ちゃん」
カミューニのあまりの勝手な行動に、ウルティアは頭を抱え、メルディはそれを見つめている。
「別に構わん。捨て置け」
ハデスはそう言うと、椅子から立ち上がる。
「妖精の尻尾、奴等は本当の闇を知らん。深淵に潜む絶対なる闇を。
グリモアハート、その名の意味するところは、 悪魔の心臓。今宵は悪魔と妖精の戯れ。喰って誇るか喰われて散るか。
決戦だ。妖精の尻尾よ」
悪魔の心臓の戦闘員たちは、ハデスの言葉で気合いが入った。
その頃、何も知らないシリルたちは・・・シリルside
俺たちは簡易ベースにさっきの男の人のことを報告するために向かっている・・・のだが・・・
「ね~シリル~」
「何?」
「この道・・・さっきも通らなかった~?」
「言うな・・・」
そう、俺たちはさっきから同じところを何度も何度も回っている・・・つまるところ、迷子ってことです。
だってさぁ、さっきから変な生き物にいっぱい遭遇するからさぁ、それから逃げながら逃げながら簡易ベースを目指していたら、どっちが簡易ベースの方角がわかんなくなったんだもん!!
「ヤバいよね~。これって遭難って奴だよね~」
「いやいや、まだ俺たちは生きてるから遭難とは言わないよ」
遭難って、辞書で調べると、登山や航海で命を落とすような災害に会うことを言うらしいぜ?俺も最近知ったんだけど・・・
「そんなことより・・・どうする?」
「木が多すぎてどこにいけばいいかわかんないよ~」
俺たちはそうやって頭を悩ませていると、
ガサガサッ
「「!!」」
近くの草むらから何かの音がする。また変な生き物が出てくるのか!?
「逃げるぞ!!セシリー!!」
「うん!!」
俺たちが走って逃げようとすると、
「待ちな!!嬢ちゃん」
「「?」」
人の声が聞こえたため、俺とセシリーは思わず立ち止まって振り返る。誰だ?聞いたことがない声だったけど・・・
そこにいたのは・・・
「ライオンに・・・」
「カラス・・・かな?」
俺たちの前に現れたのは、鎧を着たライオンとカラスらしき人・・・じゃないな。ライオンはライオンだし、カラスはカラスだな。
「というか、今しゃべったのってあなたたちですか?」
「そうだ!!我が名はアイズ!!」
「自分はルイズと申します」
「「ライオンとカラスがしゃべったー!!」」
「いや・・・猫がしゃべる時点で大概だからな?」
どうやら、ライオンっぽいのがアイズで、カラスっぽいのがルイズって名前らしいな。それにしても、まさかしゃべるライオンとカラスがいるとは・・・この天狼島って本当になんなんだ?
「シリル~!!あいつらのギルドマーク・・・」
「ギルドマーク?」
ライオンとカラスがギルドマークなんかつけてるかよ、と思いながら見たら・・・二人とも、鎧のお腹の部分にどこかのギルドマークが入っていた。最近のギルドは、動物もギルドマークいれて・・・いや、うちにもいたな。セシリーたちがギルドマーク入れてたな。
「あのギルドマーク・・・悪魔の心臓だよ~!!」
「悪魔の心臓!?」
セシリーにそういわれ、俺は思わず驚いてしまう。
悪魔の心臓って、確か六魔将軍と並ぶバラム同盟の一角で、闇ギルド最強のギルドってところのはず・・・なんでそんな奴等がこの島に?
「もしかして・・・さっきの男の仲間か!?」
「さっきの男だぁ?」
「黒い髪の植物とかを枯らしてしまう黒い波動を放つ男だよ~!!」
俺たちがそう言うと、ライオンとカラスは顔を見合わせ、笑みを浮かべる。
「やはり・・・マスターハデスのいった通り、この島にゼレフがいるみたいですね」
「おお!!こりゃ、こいつをとっとと殺っちまって、ゼレフを捕まえれば、俺たちも幹部昇進できるぜ!!」
ゼレフ・・・って、確か・・・
「あれ?ゼレフって400年くらい昔の人だよね~?」
どうやらセシリーも、俺と同じことを考えていたようだ。ゼレフは確か、400年前に世界を混沌に陥れた人物だったはず・・・だけど、俺たちのさっき見た人は、ナツさんとほとんど年齢も変わらないくらいだったはすまだ・・・多分20歳前後だと思う。
あの人が400年も前から生きている人のはずがないだろう!!
「お前ら!!適当なこと言ってんなよ!!」
「適当なことではありませんよ。お嬢さん」
「その男は、俺たちが探し求めているゼレフなんだよ、嬢ちゃん」
カラスとライオンはそう言う。ゼレフのことも突っ込みたいけど・・・それよりも今は重要なことがあるんだ。
「お前ら、よく聞けよ・・・
俺は男だ!!」
「「何ー!?」」
「シリル~!!今はそれはそんなに重要じゃないよ~!!」
俺が正しい性別を教えたら、カラスとライオンは目が飛び出すくらいの勢いで驚いていた。
それとなセシリー、性別は大事だぞ!!すごい大事!!
「それは失礼しました」
「んじゃあガキ。俺たちはゼレフを探しにいくから・・・」
カラスは翼を広げて飛び上がり、ライオンは腰につけた刀を鞘から引き抜く。
「ここで消えな!!」
ライオンがそう言いながら俺に刀を構えて突進してくる。俺はそれをジャンプして避ける。
しかし、
「無駄ですよ」
「なっ!!」
俺がよけた先にはカラスが待ち構えていた。
「喰らえ!!」
「させるか!!」
カラスが俺に殴りかかってきたが、セシリーが間一髪で俺をつかんでくれたおかげでそれを交わす。
「この猫・・・飛べるんですか」
「ほう、実におもしろい」
カラスとライオンは俺たちを見ながらそう言う。俺は一度セシリーに下ろしてもらう。
それにしても、なんで悪魔の心臓がゼレフを探しているんだ?
あれ?というか待てよ?よく考えると・・・人を探すのに二人だけで来るわけないよな?だって効率が悪いもん。もしかしたら・・・
「セシリー!!このことをエルザさんたちに伝えてきて!!」
「え!?シリルは~!?」
「俺はこいつらを止めておく。もしかしたら、こいつらの仲間がこの島に来てるかもしれない!!」
「うん!!わかった!!」
セシリーはすぐに簡易ベースへと戻っていく。上空から探せよ、道に迷うからな。
「ふははははは!!もう遅いわ!!ガキ!!」
「おそらく、もうすでに何人かは倒されていることでしょう」
ライオンとカラスは俺を見ながらそう言う。
「やっぱり、他にも仲間がいるんだな?」
「まだ私たちを含めて四人しか来てませんが・・・」
「まぁ、こんなギルド、四人もいれば十分だがな!!」
この二人・・・ずいぶん調子に乗ってるじゃねぇか・・・
「うちを・・・妖精の尻尾をなめるなよ!!」
俺はカラスとライオンに向かって突っ込んだ。
後書き
いかがだったでしょうか。
まずはシリルがいきなり悪魔の心臓の下っぱとの対戦になりました。
ちなみに、アイズとルイズは、原作のカワズとヨマズのように、名前の最後にズをつけたかっただけなので深い意味はありません。
次回もよろしくお願いします。
ページ上へ戻る