八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十五話 夏休み前その八
「お抹茶にお砂糖は」
「いえ、それがです」
「違うの?」
「最近お店で売っているグリーンティーは」
「ああ、あれお抹茶よね」
「それにはです」
冷えたあのお茶はというのだ。
「お砂糖が入っていまして」
「甘いのね」
「そうなのです」
「冷えたのはなの」
「あと外国の方も」
「お抹茶にお砂糖入れるの」
「そうした方が多いです」
小夜子さんは詩織さんに真面目な顔で話した。
「外国の方に茶道をしている時に言われたことも」
「じゃあエリザ達も」
「八条荘は半分が外国の方ですね」
「入居してる娘はね」
大家の僕や畑中さん達使用人の人達は別にしてだ、確かに入居者の人のうち半分は外国からの人だ。
「そうよね」
「おそらくですが」
「あの娘達の中には」
「お抹茶の中にお砂糖を入れられる方も」
「何か不思議ね」
詩織さんはそうしたことを話してだ、口をへの字にさせてだ。
そしてだ、こうも言ったのだった。
「お抹茶にお砂糖ね」
「あります」
「紅茶やコーヒーならともかく」
「そこはそれぞれみたいです」
「以外ね」
「あと麦茶にも」
小夜子さんはこちらのお茶の話もした、この季節は麦茶もとてもよく飲む。というか夏は麦茶というのが日本の風物詩だと思う。
「お砂糖を入れられる方が」
「外国の人にはなのね」
「おられる様ですね」
「麦茶にお砂糖」
詩織さんはそう聞いて首を傾げさせて言った。
「そっちはもっとね」
「お抹茶よりもですね」
「違和感感じるわね」
「麦茶にもお砂糖入れるんだ」
僕もこのことには少し驚いて言った。
「そうした人もいるんだ」
「どうやら。あと」
「あと?」
「昔ドイツには代用コーヒーがあったそうですが」
「代用って」
「東ドイツでは」
「何か凄い昔の話じゃないかな」
僕達が産まれる前になくなった国だ、東西ドイツが一緒になってその時になくなった国だ。西ドイツに吸収されたと授業で習った。
「東ドイツって」
「確かに。ですが」
「その東ドイツでなんだ」
「代用コーヒーというのを飲んでいましたが」
「その代用コーヒーの味がなんだ」
「麦茶の味だったとか」
「それって美味しいわよね」
詩織さんはここまで聞いてこう言った。
「麦茶の味だと」
「そうだよね」
僕も詩織さんのその言葉に頷いて答えた。
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