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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十四話 テスト終了その十五

「ですが山海の珍味が揃っていますの」
「日本の山と海の」
「お酒もありますしその蘇も」
「あるのね」
「いいと思いますわ」
「是非一回食べてみたいわね」
「夏休みはどうされますか?」
 円香さんはダオさんにこの時の予定も尋ねた。
「長崎には行かれますね」
「ええ、絶対にね」
「お里には帰られますか?」
「そのつもりはないわ」
「ずっと日本におられるのですね」
「この八条荘にね」
 ダオさんは飲みつつ答えた。
「そのつもりよ」
「そうですか」
「戻るのもね」
 祖国であるベトナムにというのだ。
「いちいちそうするのも」
「面倒臭いと」
「だからなのよ」
 それで、というのだ。
「もう当分戻らないわ」
「そうですか」
「お金もかかるしね」
 ダオさんはこの問題のことも話に出した。
「正直」
「帰る時のそれも」
「そうよ」
 それでというのだ。
「だからね」
「その事情もあってですか」
「日本のことももっと勉強したいし」
「夏休みの間も」
「そうしたいわ。だからね」
「では奈良に行かれますか」
 円香さんは微笑んでこのことも話した。
「是非」
「そうね、蘇ね」
「それも召し上がることが出来ますわよ」
「なら食べてみるわ」
 是非にと言うダオさんだった。
「その昔の日本のお料理もね」
「特に蘇をですね」
「やっぱりそれね」 
「他にも沢山のお料理がありますし」
「お酒もよね」
「はい」
 お酒の話もしたダオさんだったが円香さんはにこりと笑って答えた。
「当時の日本のお酒が」
「それってあれよね」
「日本酒ですわ」
「今あんたが飲んでるの?」
 円香さんが自分で杯に入れて飲んでいるそのお酒を見ての言葉だ。一升瓶を自分で持っている姿はかなり親父めいていた。
「それ?」
「いえ、違います」
「けれど日本酒って言ったじゃない、今」
「日本酒は日本酒ですけれど」
「お米で作ってないの?」
「お米で作っていますわ」
「?話がわからなくなってきたわね」 
 首を傾げさせてだ、ダオさんはウイスキーを飲んだ。
「お米で作っていて日本酒でも」
「今わたくしが飲んでいるお酒ではないです」
「それどういうことよ」
「今わたくしが飲んでいる日本酒は清酒です」
「清酒?」
「澄んでいますね」
「ええ、お水そっくりよ」
「当時のお酒は濁っていまして」
「ああ、白かったのね」
「ベトナムにもそうしたお酒はありますね」
「お米で作ったお酒でね」
 あるとだ、ダオさんも答えた。 
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