八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

「寝る前はそうだから」
「それでっていうのね」
「確かにテストが終わったことは嬉しいけれど」
「それで飲むってことは」
「意識としてはね」　
「ないのね」
「そうなんだよね」
　ダオさんに少し微妙な顔で話した。
「まあそれでも飲めるのなら」
「いいでしょ」
「うん、黒ビール飲みたいね」
「黒ビールって美味しいのね」
「相当にね」
「ああ、黒ビールっていえば」
　ここでだ、ダオさんはこう僕に言って来た。
「何か枝豆っていうの？」
「あっ、枝豆もあるんだ」
　見ればテーブルの一つに緑色の房が山盛りにあった。まさにそれこそがだ。
「あるね、実際に」
「あれのお豆見たけれど」　
　それでもとだ、ダオさんは僕に微妙な顔で言って来た。
「あれって何で黒いの？」
「あっ、それはいいね」
「いいって？」
「いや、黒いお豆の枝豆もあるんだ」
　僕はダオさんにその枝豆のことを話した。
「それはまた特別な枝豆でね」
「美味しいのね」
「普通の緑色の枝豆もいいけれど」
　実はその黒枝豆も好きだ、だから僕はダオさんに明るい声で話した。
「凄くいいね」
「そんなにいいのね」
「食べてみればわかるよ」
　これが僕の返答だった。
「実際にね」
「そこまで言うのね」
「本当に美味しいから、枝豆はね」
　それこそともだ、僕は話した。
「普通の枝豆にしてもね」
「普通の枝豆もなの」
「美味しいからね」
「そうなのね」
「緑の枝豆もあるわよ」
　友奈さんがここで言って来た。
「そちらも」
「あら、そうなの」
「両方食べてみるといいわ」
　友奈さんはクールな口調でダオさんに告げた。
「そちらも」
「ええ、それじゃあ」
　ダオさんは友奈さんの言葉にも頷いた、そうしてだった。
　友奈さんは僕にはこう言った。
「じゃあ大家さんだから」
「僕がだね」
「乾杯の音頭取って」
　こう言って来たのだった。
「これから」
「わかったよ、じゃあね」
　見れば近くの大ジョッキにもう黒ビールが並々と注がれていた。僕はそのジョッキを手に取ってからだった。
　皆にだ、こう言った。
「テストの終了を祝って」
「今から」
「乾杯しよう」
　こう友奈さんに応えてだ、そして。
　皆にも乾杯と言った、皆それぞれの言葉で応えてだった。
　盃を打ち合った、それからだった。
　僕はその大ジョッキの中のビールを飲んだ、その黒ビールを。
　ごくごくと飲んでだ、それから言った。
「いやあ、やっぱりね」
「美味しいのね」
「うん、黒ビールは違うよ」
　そのまだジョッキに半分以上残っている黒ビールを見つつだ、友奈さんに答えた。