我輩は逃亡者である
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第二章 世界からの逃亡者三人。
20.御話し
か、帰ってこれた。半日くらいしかたってないけどこのラボが凄い懐かしい……!
「お、お帰りー。まどっちも一緒だっ……え?どうしたの、まどっちのISスラスター壊れてるけど」
「私の姉さんはチートだった、理不尽を身にまとったナニかだった……」
「え?もしかしてちーちゃんとエンカウント、した……?」
「はい、なんで織斑千冬は蹴り抜いたコンクリートでスラスター破壊できるんですかぁ……」
「ガードした腕すり抜けて海まで蹴っ飛ばされた……」
「三人ともよく逃げ切れたよ!ほらゆっくり休んで!」
「取り敢えずくーちゃんとマドッチ先にシャワー浴びておいで」
「ではお先に」
「ああ、すまないが借りるぞ」
まったく今までの中で一番身の危険を感じた。やっぱ海岸で会ったときも束先輩がいなかったら逃げれなかったな…
「ほい、束先輩。ご所望の暮桜のコア」
「おー、ありがとうね。暮桜はね、ちーちゃんが乗ってたISなんだけど少し動かなくなっちゃってるんだ」
なんでもISが競技用になってから開かれるようになった世界的なISの試合モンドグロッソの2回目を途中棄権するまでずっと乗っていたそうだ。それがある理由によって動かなくなっているそうな……
「ISは自己で進化していくものなんだけど第二回モンドグロッソでちーちゃんの弟、つまるところのいっくんが誘拐されたんだ。そのときのちーちゃんの想いに応えてサードシフトしようとしたんだけど」
元々第一世代だったこともあり進化にIS自体が耐えきれずに事件後に暮桜は動かなくなったそうだ。
「へー……で何で急にそんなことを?」
「いやー今回は流石に大変すぎることこなしてくれたから理由くらいは話して置かないとなぁって。ごめんね、それとありがとう」
「は、はい……真面目な空気が辛いんですが」
「アハハッ!かーくんらしいねぇ!」
うわー背中がウズウズするわ!真面目な束先輩も珍しいけどこっちのナニかもガリガリ削られるぅぅぅ!!
「さて、私の一斉一代の発明が出来て後は仕上げに整えてるだけなんだけど」
「あ、発明自体は出来たんですね…暮桜のコアはその仕上げに必要と」
「まあ暮桜を直したいってのが強いけどね、ちーちゃんも何かあった時に動けないと辛いだろうし」
「身内にはとことん甘いですねー、他人だったら寧ろ分解してるでしょ」
「いや興味すら持たないよ!」
いっそ清々しい。まあ人間は大なり小なり身内と他人で区別して接するけどね…ただ束先輩はその区別が月とスッポンくらい離れてるけど。むしろ区別と言うか分別だ。
「さーてかーくんもシャワー浴びといで!その後にその発明見せたげるよ!」
「いや、今くーちゃんたち入ってるから。何お風呂場でのハプニング起こそうとしてるんですか」
「くっ、ガードが固いね!いっくんなら言うまでもなくかーくんと過ごした期間があれば裸覗いたり胸触ったり惚れさせたりさせるのに」
「え?ナニソレ怖い」
「なんかそういう惚れさせる粉とかが撒かれてたりラッキースケベを起こす因果とかあるんじゃないかってレベルで女の子が惚れてくんだよ……極めつけは本人がそれに気づかない」
「爆発?爆発させちゃう?もっかいIS学園行きましょうか?」
「いやいや、落ち着いて。あれは束さんも理解できない範疇にあるんだけど。しかも、学園にはちーちゃんもいるから!」
織斑一夏…!男の敵め!……いや女の敵でもあるか。
まあ前にマドッチがシュールストレミング喰らわしたしIS学園に乗り込んで爆発させるのは控えてやろうじゃないか……決して織斑千冬を思い出してビビってるわけじゃない。
「じゃあ、くーちゃんたち上がったみたいなんで入ってきます」
「おー、上がったら発明したの見せたげるよ!あともうちょっとお話!」
「ビーム、砲撃使わないお話ならどうぞ」
「えっ、なにそれ?」
さーて風呂風呂ー。くーちゃんとマドッチが風呂上がりに牛乳とファンタを腰に手を当てて飲んでる、旨そうだ。どっちがどっち飲んでるとは言わないけど。
▽▽▽▽
さて、風呂を上がったんだけどマドッチが難しい顔をしている。どうした?
「いや、亡国を辞めてラボに来ないかと言われたのだがアレで中々あそこにも愛着があってな」
「ああ、楽しい人たちだもんね。束先輩ムリ言ったら駄目ですよ」
「うーん、そうだね。今回は諦めるよ、あっそうだ!はい、まどっち。新しいISだよ、なんとファンタも出る。ついでにタコスも。」
「おお!ありがとう!ファンタ!ファンタ!」
「機能はまあ近接中心だよ……ただまどっちがホントに守りたいものがあるときとかに使ってくれると私は嬉しいな」
「……そうだな、私用ではなるべく使わないと誓おう」
ただファンタは多用するがな。とマドッチが言ったら束先輩は楽しそうに笑っていた。ま、やっぱり平和な使い方がいいよね。
「ではそろそろ帰るとしよう、束博士ありがとう!」
「おー!美味しいファンタをたんとお飲みよ!」
「じゃねーマドッチ、今日は助かったよ」
「では、また会いましょうマドカさん」
そうしてホクホク顔でマドッチは帰っていった。
「じゃ、くーちゃんかーくん。そろそろ発明見せたげる……前に聞きたいことがあるんだけどいいかな? 」
「……なんでしょうか束様?」
「なんか見間違いじゃなかったら不安そうですけどどうしました?なんならスリーサイズまで言いますよ?」
「いやいや、そこ聞くのに不安にはならないよ……それよりもバレてたかぁ……くーちゃんも気づいてたみたいだね」
「はい……」
なんかいつもより若干重いから、纏ってる空気とか雰囲気。こうアレルギー的に反応してしまう、早く言っていつもの空気に戻したい。ハリーハリー!
「じゃ聞くけど……私とどこまでも一緒に来てくれる?」
「はい、束様。地獄の果てまでお供します」
「寧ろ連れてってください、今さら置いてかれたら泣きます」
置いてくとかホントに勘弁してください!前に一回そんな感じのこと考えて珍しくしんみりしたってのに……それこそ今では束先輩とくーちゃんとなら地獄の果てまで行くのも満更ではない。
「ふふっ…アハハハハハ!そうか!ありがとう!じゃあ私の渾身の発明を見に行こうか!」
「ええ、見に行きましょう。楽しみですねかーくんさん」
「そーだね、今までで一番楽しみかもしんない」
それを聞いた束先輩は嬉しそうだった。もしかして心配したのだろうか、どこに行くか知らないけどくーちゃんと自分が一緒に着いて行くかが。
――束先輩にそんなことを心配してもらえるほど身内と思ってもらえてるなら……それは嬉しいと思った。
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