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インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜

作者:
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じゃあここは一夏に任せます

黒いISに飛びかかり、雪片弍型でやたらめった切っていく一夏。そこを電光の速さで剣で刻まれ、弾かれる。それを数回繰り返して白式もボロボロになっていた。しかし、一夏は攻撃をやめようとせず 無謀にもそのボロボロのまま黒い少女型ISに攻撃を仕掛ける。シャルルや箒達も一夏を止めようとしている。
その様子を見て、私はため息混じりで笑うと、柔らかい笑顔を浮かべる。

「たく。世話の焼ける人たちですね……」

私は目を閉じると一気に目を開ける。

「【疾風迅雷】!!」
緑のオーラが銀色のISを包み、凄まじいスピードで今斬りかかろうとしている一夏と黒い少女型ISの間へも割り込む。そして、鬼切でニセ雪片を受け止めると器用に空いた手で一夏をひっぱたく。しかし、焦っていたせいか、手加減が出来なかった私は思いっきり一夏をひっぱたいてしまったようだ。一夏は箒達とシャルルの方へ突き飛ばされるとドン!と壁にぶつかる。一夏は驚いた顔をすると私を見つめる。

「………優里………?」

「勘違いしないでください!一夏、貴方一人が怒っているわけではないんですから……正直、私も限界値を超えてます」

私は一旦、ひくと一夏達の所へ帰ってくる。

「優里……お前、ISのエネルギーないんじゃ?」

「僕達に『残念。負けました……』って……」

「あぁ……、あれ。嘘ですよ……」

「「「…………」」」

絶句する皆。それを不思議そうに見る私。

「だって、地面に落ちたからって負けってわけじゃないでしょう?」

「そうだね……」

シャルルは苦笑してそう言うと顔を青ざめる。そして、私を見る。

「優里ーー」

キーン!!

金属と金属がぶつかる音。

「人が話してるんですから……大人しくしてて下さい!!」

私はシャルルに振り返ると

「一夏のこと、頼みました。私はちょっとあの人を殴りに行ってきます」

「えっ……。ちょっと……優里〜〜!!」

私は一夏たちから離れて、広場の真ん中に立つとあるものを探す。そして、それを見つけるとそれをみつめる。

「もしかしたら、これが最後でもう二度とこれを使わないかもしれないのでよく見ておくといいですよ?那珂優里を本気で怒らせると怖いってね」

私は丸いものを見つめながら、鬼切を構える。

「………【清風明月】」

すぅ〜と小さく息をふくとそれを小さく呟いた。途端、空から光が私に差し込み銀色のISを照らす。辺りを眩しく照らすと私はその光の中から出てくる。

☃☃☃

「………ぇ……」

光の中から出てきたのはーーー




ISをつけてない生身の姿の優里といつの間にか優里の足元にいた白銀の毛並みが美しい狼だった。





優里は右手に長剣を握り、左手には短剣を握っていた。右手を持ち上げ、挑発する。ISスーツだったものが今は侍のような格好をしている。そして、その優里の足元に白銀の狼はまるで主を守るように唸り声をあげ、威嚇する。

「銀狼は裏から、私は正面から攻撃します。GO!!」

生身とは思えないスピードで攻撃して行く優里をただポカーンと見つめる僕。それは他の皆も同じで何が起きているのか分からないようだった。織斑先生も山田先生までもがこの状況についていけてないようだ。

「はっ!こんな事してる場合じゃない!!優里を助けに……て。つうぅ……」

「て。ダメだよ、一夏。そんなボロボロなのに……」

「こんなの……へっちゃらだ」

「馬鹿者が‼︎死ぬ気か!?」

箒が一夏をポカンと殴る。頭を抑える一夏は箒を睨むと

「優里が戦ってるんだ!!オレ一人、こんなところにいるわけにはいかない!!それにあいつ。千冬姉の技盗みやがった、盗みやがったんだよ!!」

「貴様はこんな時まで千冬姉千冬姉。優里優里か」

「?」

「なんか面白そうな事、話してますね?」

「「「うわぁ!!」」」

「そんな驚かなくても……」

しょんぼりと落ち込む優里。
上に着ている衣や袴は所々、破けていて中でもひどいのは腹部を横直線で白い肌からは紅い血が流れている。その血は切れているISスーツに染み込み、黒いシミをつくる。露出してるところも擦り傷だらけで血が滲んでいる。

「…………優里……大丈夫なの……?」

僕の問いかけに小首をかしげると

「これくらい慣れっこなので痛くも痒くも有りませんよ」

慣れっこって……毎日こんなになるまで練習してたのだろうか……。色んな意味で心配になってきた……。

「それより早くしてくれないと私も銀狼も持たないんですが……」

「銀狼……?」

「銀狼とは私のISで今、一時的にコアに運転を任せてるんです。でも、ほら見てください」

優里が指差す方へ向くと綺麗な白銀の毛並みは剣で切られ、素肌のピンクが表に出ている。

「これ以上、銀狼一人で任せるのは難しいそうですね。私も回復したので行ってきます……」

☃☃☃

(オレは……何をしているのだろう……)

女の子一人で戦わせて、切り傷をいっぱいつけさせて、ボロボロになるまで戦わせて。そこまでしてもらってまでオレは守られる存在なのだろうか?

「一夏!?」

「どこに行くの?」

箒とシャルルに両肩を掴まれる。オレは振り返ると

「オレが決着をつけてくる。だから、エネルギーを分けてくれないか?今のエネルギーじゃあ【零落白夜】を発動出来ない……」

「いや、だからって」

「いいよ」

「「!?」」

声がした方を向くとシャルルがもうエネルギーを白式に送っていた。送り終えるとオレにうなづいてくる。

「優里を助けてあげて」

「おう、任せろ!」

エネルギーを貰ったと言っても、【零落白夜】は一回だけだろう。

☃☃☃

「ッ!!やぁ!!」

斬りつけても斬りつけてもボーデヴィッヒさんには届かず、それどころかあのニセ雪片に斬り返される始末。

(やっぱり……、腹部の傷が痛みますね……。シンクロ時間もソロソロ限界ですし……)

顔をしかめて、相手の攻撃をよけているといつの間に白銀の狼が隣にいた。狼は私の瞳を覗き込むと狼の声が頭の中に響いてくる。

『大丈夫か?優里?』

『なんですか?心配してくれるんですか?』

『……心配はするさ。我が主だからな……』

『銀狼に心配されるなんて、私もボチボチあの世ですかね?』

『また、そうやって。縁起でもないことを……』

『私は縁起でもないことを言う方が縁起あるんですって』

私の減らず口を聞いて、安心したのか白銀の狼は自分の持ち場に戻っていく。私も最後の追い込みと攻撃を開始しようとした時だった。

「優里〜〜〜!!!」

「…………やっと来ましたか……。本当……、世話がかかる人です……」

☃☃☃

オレは優里の元へと急ぐ。

「やっと、来ましたか。一夏……」

「ごめん。遅くなった」

「まぁ、いいですよ。私もストレス発散できましたし……。なので、あとは一夏にお任せします……」

「…………」

後ろを振り向いて、素知らぬ顔で帰ろうとする優里の細い肩を掴む。振り返った優里は見事なまでのしかめっ面で。目でなんですか?と言っている。

「いや。オレ一人じゃ……」

「…………こんな怪我人を使うなんて、神様が怒りますよ……たく」

優里は弾き飛ばされていた短剣を掴むと振り返る。

「私が隙を作るので、出来た隙に【零落白夜】をぶち込んで下さい。そしたら、ボーデヴィッヒさんまで届くと思います」

指を三本立てて、一本ずつ折っていく。最後の指を折るとGO!と拳を上げる。途端、黒いISに突っ込んで行く優里。

「銀狼!!」

狼を呼ぶと見事なコンビネーションで敵を放浪していく。

「一夏!!」

「【零落白夜】発動!!」

雪片弐型がエネルギーの刃を成して行く。
目をつぶり、ただ一つだけ願った。
ーー力を貸してくれ!!白式!!

「やぁあああああ!!」

まずはニセ雪片を振るっている手を、続けて真っ二つに切り裂いた。
ジジッ……と紫電が走り、ISが左右に開くとその中からボーデヴィッヒが出てきた。力なくダランと地面に落ちる寸前を間一髪で助けに入る白銀の狼。

「たく……一夏はもう少し、手加減というものを知るべきです……」

「その……すまん……」

「本当です……少しは…………」

バタン。目の前に立っていた小柄な身体が傾いて倒れる。それはオレにはスローモーションに見えた。

「おい、優里!優里!!」

オレの悲鳴が競技場に響いた。
 
 

 
後書き
……こんな終わり方でよかったんでしょうか……。
 
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