インフィニット・ストラトスGM〜天空を駆ける銀狼〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
ラウラ・ボーデヴィッヒという存在
「……」
「どうしたの?優里、凄く不満そうな顔してるけど僕じゃ相手にならない?」
「……いえ」
シャルルの射撃から回避しながら、チラッと一夏たちの戦いを見る。一見みると、一夏が押されてるようだけど……。なんだろう……、この違和感は……。
「……ッ!」
よそ見していたから、射撃に当たってしまったようだ。私は真面目にシャルルの射撃を回避するのに務める。今は何を考えてもダメな気がする。
☃☃☃
「どちらも強いですね」
「そうだな」
観察室で二人の教師が四人の対戦を見ている。
「織斑君も那珂さんも強いですね」
「そうだな、しかし。あやつらは連携というものをまるで分かってないな」
「えー、そうですか?織斑君も那珂さんもちゃんと連携とれてると思うんですけど」
「まだまだ」
そう言って、二人を見た千冬が暖かい顔をしてるのを見て、真耶は気づきフッと軽く笑う。
☃☃☃
「チョロチョロと目障りな……」
オレはボーデヴィッヒの攻撃をかわしながら、ある場所へと誘導する。相手はオレらの作戦を知ってか知らずか誘導に応じてくれる。チラッとシャルルに視線を送るとシャルルも準備が整ったらしく、コクンとうなづく。
「これで終わりだな」
「あんたがな」
オレは横へ除けるとその横を瞬時加速したシャルルが通り抜けて行く。ボーデヴィッヒは一瞬驚いたものの、すぐに攻撃体制に入る。しかし、すぐにその攻撃体制も崩れることになる。
「ぐあっ!!」
「当たった!!一夏!!」
「OK!!」
何が起こったかというと、オレも実は知らなかった瞬時加速でボーデヴィッヒに近づいたシャルルは至近距離で【盾殺し】を発動させる。【盾殺し】でボーデヴィッヒの腹部にパイルバンカーを叩き込む。
ズガンッ!!ズガンッ!!
と二発撃つ。流石にそれでぐらんと大きく傾いた身体に向け、オレは【零落白夜】で落とそうと雪片弐型を構える。ボーデヴィッヒを斬りつけようとした時だった。オレと黒いISの間に突然現れる銀色のIS。
えっ!?なんで……?なんで……ここに優里が……?
そのISはオレらの全く反対側に居たはず。それも寸前までシャルルが攻めていたんだから、瞬時加速でもここまでこれないはず。
なのに……なぜここに……?
オレの思考を読んだのか、銀色のISの操縦者はオレに向かって笑うとボーデヴィッヒを構うように両手を広げる。それは転校初日に俺を守ってくれた仕草で。
それに驚愕するオレとボーデヴィッヒ。しかし、驚くのと雪片弐型を止めるのは違ってオレは止めることが出来ず、深々とその銀色のISを切り裂く雪片弐型。その衝撃でエネルギーを取られ、地面に落ちる銀色のIS。砂埃の後、銀色のISの操縦者はオレ達の方を向くと
ーー残念。負けてしまいました。
と声に出すことなく、口パクで言った。その後、痛そうに顔をしかめる。
その様子に固まるオレとボーデヴィッヒ。しかし、その中一人だけ冷静な奴がいた。
「これで僕らの勝ちだね」
「なっ……!?」
シャルルはボーデヴィッヒの背中に銃をつけるとダン!ダン!ダン!と連発で撃ち込む。
確かにオレらの勝ちになる筈だった。
しかしーー
☃☃☃
『あなたがピンチに陥った時は私が貴方を守りますよ。なので、心配せず。一夏をコテンパンにしちゃってください』
銀色のISを装着した奴はそう言って、私に振り返った。そして、少し意地悪な笑みを浮かべると
『一夏は日頃から箒達の女心をズタズタにしてるので……少しこらしめないと』
と言うと。真面目な顔で歩き出した。しかし、その瞳にはまだ興奮が浮かんでおり。
その表情があの時のあの人と重なったーー
♦︎
あの人ーー織斑千冬と会ったのは、私が深い深い闇に落ちた時だった。
常に優秀だった私はある事故により、IS訓練において部隊員たちと大きな差が出来ていた。そんな私をあざ笑うように日に日に差は広がっていった。頑張っても頑張っても頑張っても頑張っても差は縮まることがない。そんな私を部隊員たちは嘲笑と侮蔑を向ける。それと同時に最も嫌な烙印【出来損ない】をいつの間にか押されていた。
そんな時、私は光を見た。
『ここ最近の成績は振るわないようだが、なに気にするな。一ヶ月で部隊内最強の地位へと戻れるだろう。なにせ、私がおしえるのだからな』
その言葉は偽りなどではなかった。あの人の教えを忠実に実行するだけで不思議といつの間にか頂点へと上り詰めていた。その頃からだろうか、周りの目が気にならなくなったのは。
ただ、あの人に認めてもらいたい。褒めてもらいたい。それらの欲求だけが強くなっていった。
あぁ、この人のように自分を信じれるようになりたい。凛々しくなりたい。堂々となりたい。
強くなりたいーーー
『教官はどうしてそんなに強いのですか?どうしたら、強くなれますか?』
その時、教官は珍しく優しい笑みを浮かべた。鬼で知られるあの教官が。
その表情は何故か私は気に入らず、胸の奥がチクっと痛む。
『私には兄弟がいる。と言っても一人は血が繋がってないんだがな』
『………兄弟ですか』
『あいつらを見ていると、わかる時がある。強さとはどういうものなのか?その先に何があるのかをな』
『……よく分かりません』
『今はそれでいいさ。そうだな、いつか日本に来たときに会ってみるといい。二人とも、只者ではないぞ?
あぁ……ボーデヴィッヒ、一つだけ忠告しておくぞ。あいつらにーー』
薄く染まる頬を見て、私は怒りを覚える。
違う。私が尊敬していたのはそんな貴女じゃない。強くて凛々しくてそれでいて堂々としているそれが貴女なのに……!!
だから、許せなかった。教官をそんな表情にさせる存在が。そんな風に変えてしまう二人の存在が。だから、認めるわけにはいかない。認めるわけにはいかないのだ!!
♦︎
『……那珂。貴様……』
前を歩いていた奴は振り返ると嬉しそうに笑う。
『初めてですね。ボーデヴィッヒさんが私の名前を呼んでくれるなんて、どういう風の吹き回しですか?』
『……』
『うわぁ……。そんな睨まないでくださいよ、軽い冗談ですって』
『教官には血が繋がってない兄弟がいるそうだ。………那珂、お前か?』
奴は立ち止まると顎に手を当てて、考えるとニコッと笑うと
『さぁ……、どうでしょうね?』
と意地悪な笑みを浮かべたまま、競技場へと向かった。
♦︎
だから、私は暗闇の中 手を伸ばす。
(だから、よこせ!力を!)
(あの男を完膚なきまでに叩きのめす力を!!)
(私から大切な人を二回も奪ったことを後悔させる力を!!)
『ーー願うか……?汝、自らの変革を望むか……?より強い力を欲するか………?』
(あぁ……、くれてやる!!だから……)
伸ばした手が何かを掴んだ。それは暖かいような、冷たいような……不思議な感触だった。
☃☃☃
「あぁああああああ!!!」
つんざくような大声を出したボーデヴィッヒさんによってシャルルが吹き飛ばされた。私はそれを見て、いやな予感があっていたのを感じた。吹き飛ばされたシャルルは一夏の横まで飛ばされるとボーデヴィッヒさんを見て、驚愕した。
「な、何……あれ……」
「なんなんだよ……」
操縦者を守るように形どっていたISはドロドロと溶け、ボーデヴィッヒさんを包み込んで行く。黒い闇に飲まれて行く白く華奢な身体。
「くそっ!こんな時に!!」
そのドロドロの黒い液体はボーデヴィッヒさんを包み込むと地面にポタポタと落ちて、高速に形を作っていく。
「「っ!」」
一夏と私が息を飲む。少女のようなものはその手に見覚えがあるあるものを握っていた。
「雪片……!」
私が飛びかかろうとする前に一夏が飛び込んでいた。
「許さねぇーーー!!」
ページ上へ戻る