八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十一話 テスト前その七
「こりゃ来年にはだな」
「あいつ高等部からもいなくなってるわね」
「というか今すぐいなくなれよ」
「全くよ」
「一年でもその一年授業受ける人間は迷惑だよ」
たかが一年、されど一年だ。その一年授業を受ける人間としてはその一年が本当にたまったものではない。
それでだ、皆言うのだ。
「本当にな」
「あいつ今すぐいなくならないかしら」
「一刻も早く」
「そうなって欲しいけれど」
皆、僕も含めてあの先生の更迭を心から望んでいた。とにかく酷い。高等部の普通科にいて一年で更迭されて商業科とかをたらい回しにされて途中野球部の監督を一年やってそこでも更迭されて中等部もそれで舞い戻って。何度更迭されたのか。
しかもだ、そこまで何度も更迭されても態度をあらためていない。そうした意味では凄い人だと思う。勿論悪い意味で。
そしてその悪い意味で凄い先生の授業を受けてからだ、窓を見ると。
クラスメイトの一人がだ、こう言った。
「やっとかな」
「ああ、雨な」
「晴れてきたわね」
「やっとだな」
「梅雨も終わりか?」
「そうよね」
「本当に長い梅雨だったけれど」
その梅雨もだった。
そしてだ、僕もこう言ったのだった。
「今年の梅雨は長かったね」
「だよな、ずっとな」
「一ヶ月ずっとだったから」
「もう六月雨ばかりで」
「何時晴れるんだっていう位で」
「たまに晴れたけれど」
「すぐにまた雨で」
梅雨だから当然にしても本当に今年の梅雨は長かった。僕もそのことが嫌で仕方がなかった。それでだった。
僕もだ、その梅雨の終わりを言われてだった。
明るくなってだ、こう皆に言った。
「このまま晴れていって欲しいね」
「だよな、もう俺なんかな」
ここで柔道部のクラスメイトが笑ってこう言った。
「インキンがな」
「えっ、インキンって」
この言葉には皆が引いた。
「それって」
「あの梅雨に特に痒いっていう」
「帝国海軍伝統の病気?」
「水虫と並ぶ自衛隊の人達に特に多い病気」
実際そうらしい、何でも自衛隊ではインキンが特に多いらしい。とりわけ海上自衛隊の人は大変だと聞いている。どっちの病気も。
「御前その病気かよ」
「そうだったの!?」
「おい、マジかよ」
「それって」
「おいおい、冗談だよ」
柔道部の彼も笑って答える。
「毎日風呂に入ってるし道着も自分の着てちゃんと洗ってるさ」
「それじゃあか」
「あんたインキンじゃないのね」
「それは冗談か」
「そうなのね」
「当たり前だろ、インキンになったらな」
それこそとだ、彼も言うのだった。
「これ顧問の先生に聞いたけれどな」
「何でも地獄らしいな」
「大変みたいね」
「水虫もそうだけれどな」
「痒いししかも肌がずり剥けてきて」
随分と嫌な話になってきた、梅雨だと特に。
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