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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十一話 テスト前その八

「もう痒くて痒くて仕方なくて」
「困るらしいわね」
「自衛隊だとタムシチンキ人気らしいな」
「自衛隊の基地の中の薬屋さんでいつもすぐになくなるそうね」
「一度なったら三年は苦しむ」
「悪魔の病気らしいわね」
「そうらしいな、顧問の先生も強く言ってるよ」
 それこそというのだ。
「インキン、水虫には絶対になるなってな」
「絶対かそうなのね」
「もうなったらアウト」
「そんな怖い病気なのね」
「ただ」
 ここでだ、クラスでも成績優秀でしかも頭が切れることで知られている伊藤君がその眼鏡に手を当てて柔道部の彼に尋ねた。
「何で先生がインキンのことを知ってるのかな」
「水虫とか」
「うん、まさかと思うけれど」
「先生がかよ」
「過去インキンになったからとかかな」
 こう読んできて言うのだった。
「それで知ってるのかな」
「そうか?それでか?」
「インキンにかかるなって言うんじゃないかな」
「自分が過去苦しんだからか」
「そうじゃないかな」
 こう彼に言うのだった。
「だから言うんじゃないかな」
「言われてみればな」
 彼も気付いた顔になって言った。
「先生やけに詳しいな」
「そうだよね、何故詳しいか」
「自分が罹ったからか」
「そうだと思うけれど」
「おい、それやばいぞ」
 柔道部の彼は伊藤君の話をここまで聞いて狼狽する声で言い出した。
「俺あの人と寝技もするんだぞ」
「それでその寝技の時に」
「伝染ってないか?」 
 本気で心配している言葉だった。
「そんなの嫌だぞ、インキンになったらそれこそな」
「痒くて仕方ないね」
「しかもボロボロになってな」
 その感染した部分がだ、何処かはあえて言わない。何しろこの場には女の子達もいるからだ。流石に女の子の前では誰も言えない。
「彼女にも会えないだろ」
「そうなるね」
「そんなのなってたまるか」
 心からの言葉だった。
「まさか先生」
「ううん、多分今はね」
 伊藤君はここでまた言った。
「先生も過去罹ってたにしても」
「今はか」
「大丈夫だと思うよ」
「治ってるか」
「今そうだとそういうこと言える余裕ないから」
「インキンの治療に忙しいからか」
「そっちに必死になるからね」
 他の人に忠告するよりはというのだ。
「だからね」
「だといいけれどな」
「うん、あとね」
「あと?」
「君が本当にインキンでないこともわかったよ」
 伊藤君はこのことは微笑んで言った。
「それは何よりだったよ」
「何でわかったんだよ」
「だって今必死に感染したかどうか心配したよね」
「話を聞いてうわ、って思ったからな」
「もうなってたらなる心配しないから」
 既にアウトになっているのならだ、アウトになる心配をしないというのだ。 
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