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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第三十一話 テスト前その五

「海上自衛隊幹部候補生学校です」
「あそこはですか」
「テストの赤点は六十点以下です」
「それは厳しいですね」
「海軍の後継組織なので」
 あの鬼の様に厳しい帝国海軍ならというのだ。
「しかも軍の指揮官を育成する学校です」
「あの学校は」
「はい、六十点以下なのです」
「そうした学校もあるんですね」 
 僕は裕子さんの言葉にしみじみとして言った。
「日本には」
「はい、高校にそうした学校があるかは知らないですが」
 それでもあの学校はというのだ。
「そうです」
「六十点以下だったわ」
「もう私達なんて」
 ダオさんもイタワッチさんも眉を顰めさせて言う。
「絶対にアウトよ」
「それこそね」
「そんなに厳しい学校だったら」
「もう何があっても」
 それこそというのだ、そしてだった。
 その話の中でだ、チェチーリアさんも言った。
「テストは私も」
「頑張らないと、ですか」
「いけないと」
 それこそというのだ。
「駄目よね」
「はい、チェチーリアさん勉強の方は」
「毎日時間があれば」
「してるんですか」
「何かしていないと落ち着かなくて」
 こう落ち着いた声で言う。
「だから」
「いや、これでね」 
 日菜子さんがチェチーリアさんの横から僕に言って来た。
「それはね」
「違うんですね」
「そうなの、この娘出来るのよ」 
 こうチェチーリアさんを指差しつつ僕に話してくれた。
「それもかなりね」
「そうなんですね」
「沙耶香ちゃんと張り合う位にね」
 井上さんは学園でも有名な秀才だ、三年生の中でもトップ十に入る。僕もこのことは聞いている。
「いいのよ」
「そこまでいいんですか」
「多分時間があればあるだけね」
「勉強しているから」
「そう、それでなのよ」
 だからだというのだ。
「この娘成績優秀なのよ」
「そうなんですか、そういえば」
「そういえば?」
「いや、どうもうちのアパート」
 八条荘の入居者全員について思った言葉だ。
「皆それなりの成績なのかなと」
「そうみたいね」
 日菜子さんは僕に答えてくれた。
「どうやら」
「そうですね、二十四人の方がおられますけれど」
「それでも」
 その皆がだ。
「それなりにね」
「少なくとも赤点になりそうな人は」
「義和君も含めてね」
「僕もですか」
「ええ、皆ね」 
 つまり学校に通っている人は皆というのだ、八条荘の。
「いいわね」
「そうなりますか」
「いいことじゃない」
 にこりと笑ってだ、日菜子さんは僕にこうも言ってくれた。
「やっぱり学校の成績も悪い方よりいい方がね」
「確かにいいですね」
「だからね」
「皆成績がいいことは」
「嬉しいことよ」
 こうしたことを話しながらだった、僕達は登校した。雨の中だけれどバスで校門まで行くと本当に楽だった。
 そしてバスを降りてクラスに行くとだ、クラスの皆もだった。
 やれやれといった顔でだ、こんな話をしていた。 
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