八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十一話 テスト前その四
「理系、特に物理は駄目なの」
「ダオちゃん文系よね」
こう問うたのはイタワッチさんだった。
「そうでしょ」
「ええ、そうよ」
「だったら理科は選択よね」
「そう、生物選んだから」
うちの学校は文系だと理科は選択になる、化学なり生物なり物理なりを選択出来るのだ。そしてダオさんが選んだのはそれなのだ。
「まあね」
「それだとまだね」
「ええ、問題は数学だけね」
「それも五十点あったら」
「充分なのね」
「それに理系なら」
イタワッチさんはにこりと笑ってこうダオさんに言った。
「私いけるわよ」
「ああ、あんた機械いじり得意だしね」
「これでもエンジニア希望よ」
こうも言うイタワッチさんだった。
「だからね」
「機械に強くて」
「理系もね」
機械系は全部理系だからというのだ、実際イタワッチさんは理系だ。
「強いのよ」
「それじゃあ」
「数学聞きたいことあったらね」
「聞いていいのね」
「どんと来いよ」
イタワッチさんは実際に右手を拳にして自分の胸を叩いて言った。
「数学と物理ならね」
「よくわかるわね」
ダオさんはそのイタワッチさんにしみじみとして返した。
「あんなの」
「ううん、その代わりね」
「その代わり?」
「私はね」
こうも言ったイタワッチさんだった。
「社会科が駄目なのよ」
「世界史とか?」
「地理とか公民とかね」
そうした科目がというのだ。
「あまりね」
「得意じゃないのね」
「そうなのよ。赤点すれすれなの」
イタワッチさんはそちらが赤点ぎりぎりだというのだ。
「母国でも」
「そうなの」
「日本語はわかるわ」
そちらはというのだ、文系の科目でも。
「それはね、けれどね」
「社会科はなのね」
「駄目なのよ、五十点がね」
「精々なのね」
「そう、それ位なのよ」
「五十点あれば赤点じゃないから」
僕はイタワッチさんにもこう言った。
「大丈夫だよ」
「この学校ではなの」
「うん、ダオさんにも言ったけれどうちの学校の赤点は四十点未満だから」
つまり三十九点から下がだ。
「だから五十点あればね」
「いいのね」
「安心しきっていい訳じゃないけれど」
それでもだとだ、僕はイタワッチさんに話した。
「まあ十点もあるから」
「まだ大丈夫なのね」
「それ位ならね」
「だといいけれど。ただ」
ここでイタワッチさんは自分の席で腕を組んでこうも言った。
「六十点以下とかも聞いたけれど」
「うちの学校の赤点の基準がだね」
「そうじゃないのね」
「六十点以下ってないよ」
幾ら何でもだとだ、僕はイタワッチさんの話に驚いて返した、そこまで厳しいと僕も危ない科目があったりする、数学とかだ。
「そこまでないのは」
「いや、ないのね」
「そう、ないから」
また言った僕だった。
「そんな学校あるのかな」
「ありますよ」
こう言って来たのは裕子さんだった。
「高校ではないですが」
「それ何処ですか?」
「江田島です」
裕子さんは地名から答えた。
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