八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十九話 試合の後はその十三
「振るわれた相手が傷つくだけだよ」
「本当にそうですよね」
「そんなことで何もよくならないから」
「暴力は振るってはいけないですね」
「親父も言ってたよ、そんな暴力を振るう奴はね」
最低の奴だと言ってさらにこうも言っていた。
「遠慮なく潰すって」
「潰す、ですか」
「社会的にね」
「お父様のお力で、ですか?」
「いや、親父は権力はないしね」
凄腕の医師だという評価はあってもだ。
「そういうの使うタイプじゃないんだ」
「ではどうして」
「暴力振るう奴の立場とか人間関係を調べて」
そのうえでだ。
「そいつが暴力を知られると困る相手全てに通報するのがね」
「お父様のやり方ですか」
「それが一番いいらしいよ」
「権力を使うよりも」
「遥かにね」
「そうなのですね」
「僕も言われてわかったよ」
そのやり方がどれだけ効果があるかだ。
「これならいけるってね」
「そうした先生や先輩をですね」
「確実に潰せるってね」
「潰すのですね」
「社会的にね」
それが親父のやり方だ、決して暴力は振るわないけれどそうした小悪党は遠慮なくそうして潰していく。頭のいいやり方だとは思う。
「そんな奴にはなるなとも僕に言ってたよ」
「暴力にいい面がありませんね」
「力は必要でもね」
何かがないとことは出来ない、結局人間何かしらの力は必要だと思う。けれど暴力という傷つけるだけの力はだ。
「ヤクザ屋さんだよ、それじゃあ」
「ヤクザですか」
「マフィアだよ、日本の」
僕はジョーンさんにヤクザをわかりやすく説明した。
「日本にもいるんだ」
「ジャパニーズマフィアですね」
「うん、その人達は暴力が常だけれど」
「マフィアはマフィアですから」
「そんな人間だってことだよ」
暴力を振るう人間はだ、まさに。
「所詮はね」
「その通りですね」
「そうだよね、ヤクザでしかないんだよ」
「あらゆることに確かにいい面と悪い面があって」
「まあヤクザ屋さんは別にしてね」
流石にこの人達のいい面とかは考えられなかった、僕は任侠やそうした世界を一切信じていない、そんなことは架空の世界の話だと思っている。
「そうしたことはいつもね」
「頭の中に入れておられますか」
「そうなんだ、だからね」
僕はあらためてジョーンさんに話した。
「日本も。その日本の梅雨も」
「いい面と悪い面があるんですね」
「梅雨が終わったら」
その時はというと。
「夏だよ」
「日本の夏ですか」
「日本の夏はまた独特だから」
「その夏をですね」
「うん、楽しんでくれたら嬉しいよ」
こうジョーンさんに話してだ、そしてだった。
僕とジョーンさんはそれぞれ教室に戻った、ジョーンさんは馬を厩に戻してから。そのうえで午後の授業を受けた。後はいつもの午後だった。
第二十九話 完
2015・1・21
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