八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第三十話 雨が続いてその一
第三十話 雨が続いて
ジョーンさんと一緒に見た黒雲は広がっていってあっという間に神戸の街を覆って雨を降らしはじめた。その雨を朝に見て。
僕は畑中さんにだ、苦笑いをしてこう言った。
「こうした時バスでの通学は有り難いですね」
「はい、まことに」
畑中さんもこう僕に答えてくれた。
「飴に濡れない分だけ」
「全然違いますからね」
「左様ですね、では」
「はい、小柳さんとバスに感謝します」
僕は笑顔で畑中さんに言ってから朝御飯を食べに行った、そこでだった。
ジューンさんが僕に少し困った顔でこんなことを言ってきた。
「また雨ネ」
「そうだね、日本の六月はこうなんだ」
「毎日雨?」
「いや、毎日じゃないけれど」
「殆ど毎日じゃなイ」
こう言ってぼやいて僕に言って来る、朝御飯の納豆をお箸でかき混ぜながら。そこにはもうたれと辛子が入っている。
「本当ニ」
「これが日本の梅雨だから」
「梅雨はこうなノ?」
「そうなんだ」
「ここまで雨が続くト」
ジューンさんはうんざりとした顔のままこうも言った。
「黴が生えそうヨ」
「全くあるよ」
水蓮さんはお味噌汁を飲みつつ言う、今日のお味噌汁は白菜としめじだ。おかずはその納豆と塩鮭という組み合わせだ。
「これだけ多いとある」
「黴が生えるネ」
「お部屋が不安あるよ」
「いえ、この八条荘は大丈夫です」
畑中さんがぼやくジューンさんと水蓮さんにこう答えた。
「ご安心下さい」
「黴生えないノ?」
「それは大丈夫あるか」
「湿気対策も整っていますので」
それで、というのだ。
「毎日お掃除もしていますので」
「だからなのネ」
「黴は生えないあるか」
「はい、ただお買いになった食べものはすぐに召し上がって下さい」
畑中さんは黴のことは保証しつつ注意もした。
「食べものが一番腐りやすい季節で黴もです」
「生えやすいっていうのネ」
「そういうことあるか」
「はい」
その通りだとだ、畑中さんはお二人に話した。
「そうなのです」
「じゃあ買ったパンとかお菓子モ」
「すぐに食べないと駄目あるな」
「黴は生えてからが一番怖いかラ」
「気をつけるある」
「そうされて下さい」
畑中さんは確かな声でお二人に言った。
「くれぐれも」
「ううん、わかったヨ」
「肝に銘じるある」
「ここまで日本の梅雨がじめじめしてると思わなかったシ」
「私も注意するあるよ」
「皆さんもお願いします」
畑中さんは僕達全員、特に外国から来た人に断りを入れた。
「梅雨の時は食べものに注意して下さい」
「うん、そうするわね」
ニキータさんが畑中さんにすぐに応えてこうしたことを言った。
「ブラジル程酷くはないけれどね」
「あれっ、ブラジルって」
「うん、結構な場所がアマゾンじゃない」
「熱帯ね」
「そうした場所だとね」
こう千歳さんに答えていた。
「もうすぐになんだ」
「日本の梅雨の時以上に」
「湿気もずっと多くてすぐにものが腐るんだ」
「暑いし」
「あそこはまた特別なのよ」
アマゾンはだ。
「私もあそこには住んでないけれどね」
「というかアマゾンって人住んでても」
美沙さんはアマゾンについてこう言った。
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