八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十九話 試合の後はその十二
「そこはね」
「はい、踏まえてですね」
「日本にいてね」
「それは何処もですよね」
「どの国もだよ」
それこそだ。
「いい部分もあれば悪い部分もあるよ」
「そういうものですね」
「うん、それがわからないと」
「いい部分だけを見ても悪い部分だけを見ても」
「よくないと思うよ」
それこそ両面を見ないとだ、何でも。
「わからないからね」
「その国は、他のことも」
「うん、何でもね」
「そのお考えはどなたに教えてもらったのですか?」
「ああ、このことはね」
ジョーンさんの今の問にはだ、僕はついつい苦笑いになってそのうえで答えた。こうした時の苦笑いの根拠はいつも通りだった。
「親父からなんだ」
「お父様からですか」
「教えてもらったんだ」
「何でもいい面と悪い面があってですね」
「国も人も他のものごともね」
「全部ですね」
「両方があってね」
それだとだ、親父にこのことも何度も言われた。
「それでね」
「その両方を見て理解して」
「受け入れてね」
「それで、ですね」
「本当によさがわかるって言われたんだ」
「深い考えですね」
「偏見はよくないって言ってね」
そのことはよく言っていた、親父は。
「そう言ってたよ、自分は違うがって付け加えて」
「ご自身は、とは」
「俺は悪い面しかないって笑って言ってたんだ」
「お父様ご自身は」
「うん、俺みたいになるなって言って」
本当にいつもこうも言っていた、それも笑って。
「そう言ってたよ。そう言っていつもお酒飲んで女の人と遊んでいたよ」
「いいお父様ですね」
「ううん、最近よく言われるね」
実は一緒に暮らしていた時から友達にはよく言われていた、わかっている親父だと。
「八条荘に入ってね」
「そうですか」
「うん、言われてみればね」
「よく出来たお父様だと思います」
「そうなるかな、確かに桁外れの人だけれどね」
特に女遊びがだ、冗談抜きで実は百人の子供がいてもおかしくはない位だ。
「けれどね」
「そうしたことを教えられる人はそうはいないです」
「そうだよね」
「暴力も振るわれないのですよね」
「誰にもね」
僕にも他の誰にもだ。
「暴力は何も解決しないって言ってね」
「その通りですね」
「暴力はね」
僕も暴力は嫌いだ、それでこう言った。
「何も解決しないからね」
「痛みと恐怖だけですね」
「それだけで何も収まらないよ」
「所詮その程度ですね」
「うん、よく日本の部活だと」
これは日本の悪い一面だ、紛れもなく。
「顧問の先生や先輩が殴ったり蹴ったりして教え込んでいるっていうけれど」
「それは暴力ですよね」
「それで何かよくなるかっていうとね」
「全くなりませんよね」
「そんなのよくなる筈がないよ」
絶対にだ、僕はこのことは断言出来た。
「そんなことでね」
「何一つとしてですよね」
「何度も教えて、厳しく言うことはあっても」
「罵ったり殴ったり蹴ったりは」
「ただ自分が怒って暴れてるだけだよ」
それで罵ったり殴ったりしているだけだ、その相手を。
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