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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十九話 試合の後はその十一

「それでもね」
「梅雨は過ごしにくいですか」
「そうした街なんだ、夏や冬もね」
 京都は夏に冬もだ、盆地自体がそうだ。
「暑くて寒くて」
「過ごしにくいですか」
「神戸も冬は寒いけれど」
 それでもとだ、僕は話した。
「京都や奈良も寒いよ」
「何かイメージが違いますね」
「過ごしやすい街と思ってたのかな」
「はい、京都は」
「過ごしやすくはあるよ」
 僕はこのことも否定しなかった。
「交通の便がよくて春や秋は気候もよくて」
「けれど夏や冬、そして梅雨は」
「そうした街なんだよね」
「そうですか」
「多分ニュージーランドにはこうした街はないよね」
「そうですね、京都や奈良みたいに大きな盆地にある街もないですし」 
 ジョーンさんは考える顔で僕に話してくれた。
「気候も違いまして」
「同じ温帯でもだね」
「ニュージーランドは西岸海洋性気候です」
 こちらの気候だというのだ。
「温暖湿潤気候とはまた違います」
「こっちは湿気が多くて」
「ニュージーランドはわりかしあっさりとしています」
「だからそこが違うね」
「はい、私にとっては」
 ジョーンさんはその肌で感じることも話してくれた。
「日本は神戸でもです」
「湿気が多いんだね」
「そう感じます」
「そうなんだね」
「どうしても」
 そうだというのだ。
「もう少しで梅雨も終わりますよね」
「いや、まだね」
「続きますか」
「暫くはね」
「そうですか」
「我慢してね」
 僕はジョーンさんにこうも言った。
「そのことは」
「我慢するしかないからですね」
「うん、結局のところはね」 
「気候のことは」
「人ではどうしようもないからね」
 そうした技術はまだ人間には備わっていない、若しあればそれはそれで問題が起こるかも知れないけれど今の時点では持っていない。
「だからね」
「我慢するしかないですね」
「むしろこの梅雨も日本だってね」
 言葉を選びながらだ、僕はジョーンさんにこう言った。
「そう思ってくれるかな」
「この梅雨もですか」
「そう、日本だよ」
 じめじめとして鬱陶しいこの季節もだ。
「雨が多いこともね」
「そうなるのですね」
「日本っていってもね」 
 それこそだ、一口に言っても。
「こうした色々なね」
「他の国から来た人には堪らないこともですね」
「いや、日本人でもね」
 生まれ育ってきた僕の様な人間にとってもだ。
「嫌なこと、堪らないことがあるよ」
「そうなのですね」
「何処でもそうだよね、いいものがあればね」
「悪いものもですね」
「あるからね」
 ジョーンさんにこのことはかなり真面目に話した。
「だからね」
「.そういうもの全てを含めてですね」
「日本だからね」
 それで、とだ。僕は言葉を続けた。 
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