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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十九話 試合の後はその六

「厩の」
「あれっ、毎日お掃除されてますよね」
「はい、しかし」
「それでもですか」
「今日はです」 
 大掃除をするというのだ。
「毎週この曜日はと決めていますので」
「一週間に一回ですか」
 大掃除をとだ、僕は少し驚いて厩番の人に返した。
「それは多いですね」
「馬は奇麗好きな動物なので」
「だからですか」
「はい、それに厩を奇麗にしていますと」
「他にもあるんですか」
「匂いもしませんし蚤も出ません」
 馬には付きもののそれもというのだ。
「ですから奇麗にするに限るのです」
「一週間に一回の大掃除もですか」
「毎週しています」
「それはまたかなりですね」
「お陰でありがたく使わせてもらっています」
 ジョーンさんも笑顔でこう言った。
「それで、です」
「それで、とは」
「私もお掃除を手伝わせてもらっています」
「ジョーンさんもですか」
「時間のある時は、ですが」
 厩掃除をさせてもらっているというのだ。
「私もです」
「厩の掃除は大変ですよね」
「いえ、当然のことです」
「乗馬をしているのならですか」
「厩を奇麗にしなくて馬に乗る資格はありません」 
 確かな声でだ、ジョーンさんは僕に言い切った。
「ですから私は実家にいる時も」
「厩を掃除されていたんですか」
「他の場所も」
 牧場のそこもというのだ。
「していました」
「けれどジョーンさんのお家は」
 僕はジョーンさんのその実家のことからこう返した。
「かなり人が多いんですよね」
「はい」
「大きな牧場なので」
 そこのお嬢さんだ、立場的にもそうしたことをする必要のない立場の筈だ。それで僕もこう言ったのだけれど。
 ジョーンさんはその僕にだ、こう言った。
「そういうことではなくて」
「違うんだ」
「牧場にいるのならです」
 オーナーの娘さんでも何でもというのだ。
「そうしたことをするのは誰でもです」
「当然なんだね」
「それが牧場ですから」
「そうなんだね」
「少なくとも私の家はそうした考えです」
「他の家はともかく」
「牧場を開いた時から」
 まさに代々に渡ってというのだ。
「そうした考えです」
「成程」
 僕もジョーンさんのその言葉に頷いた。
「しっかりした考えだね」
「そう思います、それでは」
「ジョーンさんもその大掃除に」
「幸い今日は部活の後時間がありますので」
 学校に出てそれからもというのだ。
「宜しければ」
「あっ、その時にはもう」
 厩番の人はジョーンさんの申し出に笑って答えた。
「終わっています」
「そうなのですか」
「ですからお気遣いなく」
 笑ってジョーンさんに言っていた。
「ジョーンさんは学業に専念されて下さい」
「ですが時間のある時は」
「その時にこちらも忙しければ」
 ここでも厩番の人から言った。
「お願いするかも知れないので」
「その時はですか」
「お願いします」
「私が申し出てもいいですよね」
「勿論です」
 その時もというのだった。
「大掃除が続いていれば」
「それではお互いに」
「宜しくお願いします」
 こうした話を明るくした二人だった、そしてだった。
 ジョーンさんはこの時は結局大掃除をしなかった、そして。
 この日は僕達は何もなかった、だが次の日。
 僕は昼休みに食事の後学校の中庭を歩いていた、するとその横から。
 一頭の馬が来た、その馬の背にはジョーンさんが制服姿でいた。僕はそのジョーンさんに少し驚いて尋ねた。 
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