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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十九話 試合の後はその五

「ですから」
「僕の為でもあったのですか」
「畑中さんからは」
「あっ、聞いてなかったです」
 こう答えた僕だった。
「後で畑中さんからお聞きします」
「それでは」
「ううん、管理人としてですか」
 ここで僕は気付いた。
「そういえば畑中さんにもです」
「言われていましたか」
「そうしたことを」
 実際にと答えた僕だった。
「言われていました」
「そうでしたね」
「はい、それも何度か」
「義和様も八条家の方で」
 何度も思うけれどその端くれであってもというのだ。
「将来はそれなりの立場になって頂くので」
「僕もそうなんですね」
「八条家は幾ら人手があっても足りない家です」
 それは事業がかなり広範囲かつ大規模だからだ。
「ですから今はです」
「八条荘の管理人として、ですね」
「人としての修練を積まれ」
 そして、というのだ。
「そのうえで、です」
「ゆくゆくはですか」
「お仕事をしてもらいます」
 八条家の中でというのだ。
「ですからお願いします」
「わかりました、頑張ります」
 僕は厩番の人に確かな声で答えた。
「そうさせてもらいます」
「お願いします、そして」
「そして、ですか」
「及ばずながら私共もいますので」
 厩番の人は自分からも言った。
「何かあればです」
「はい、その時はですね」
「お声をかけて下さい」
「何か悪いですね」
「いえ、こうしたこともです」
「将来の為ですか」
「人は自分一人で出来ることもありますが」
 それと共にというのだ。
「出来ないこともありますね」
「そうですね、確かに一人でも結構出来ますけれど」
 僕も厩番の人にこう返した。
「それは案外以上に少なくて」
「他の人がいて出来ることの方が多いですね」
「そうですね」
「人は社会の中で生きていますので」
 だからだというのだ。
「社会は人と人の集まりです」
「だから一人で出来ることは限られていますね」
「そうだと思います」
「そういえば僕は」
 ここでだ、厩とそこにいる馬達を見た。そのうえでこう言った。
「馬のことは知らないです」
「知らなくては何も出来ませんね」
「はい、馬のことも勉強しないといけないですね」
「それはよいのですが」
 馬のことについての勉強をするそのこと自体はというのだ。
「ただ」
「ただ、ですか」
「義和様は管理人ですから」
「他のことについてもですね」
「学ばれそして目を向けなくてはならないので」
「馬のことだけにこだわると」
「あまりよくはありません」
 そうだというのだ。
「ですから」
「それで、ですね」
「深く知られても乗り込めないで下さい」
 馬、厩のことだけにというのだ。
「アパートのことを広く全般的にです」
「知らないといけないのですね」
「それが管理人です」
 アパートのそれだというのだ。
「ですからお願いします」
「そうした風にですね」
「そうです、では今日のことは」
「わかりました」
 僕は色々とお話してくれた厩番の人に笑顔で応えた。
「お願いします」
「すぐに馬草を用意しますので、それと」
「それと、ですか」
「大掃除をしておきます」
 こうも言うのだった、僕に。 
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