八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十八話 豪新戦その四
「日本のじゃなくて」
「そうです、ラグビーはやはり」
「こちらの国技」
そう言っていいとだ、二人で僕に言った。
「負けられません」
「何があっても」
「例えエリザさんのお国でもです」
「ジョーンのお国でも」
二人で互いに言い合いはじめた、何か随分とだった。
ジョーンさんとエリザさんは見合って対峙しはじめた、僕はその二人を見てだった。そのうえで二人にこう問うた。
「あの、二人共やっぱり」
「負けたくないです」
「絶対に」
僕に顔を向けてこうも言って来た。
「ラグビーでは」
「他のスポーツもそうだけれど」
「特にラグビーではです」
「負けたくない」
「対抗意識だね」
それだとだ、僕もよくわかった。
「まさに」
「正々堂々と戦い」
「そして勝つ」
「エリザさん、今回はです」
ジョーンさんは僕からエリザさんに顔を戻して強く言って来た。
「何があろうともです」
「負けないと言う」
「その通りです」
エリザさんに言葉をありのまま返して来た。
「覚悟しておいて下さい」
「そちらこそ」
エリザさんも負けじと言葉を返す、殆どテニスだった。ラグビーの話をしているけれどそのやり取りはテニスだった。
「負けた時は泣かないこと」
「勝って泣きます」
本当に見事な返しだった。
「それだけです」
「その言葉覚えておくこと」
何か本当にテニスのやり取りだった、そのやり取りの後で。
僕にだ、エリザさんがこんなことを言って来た。
「大家君、いい」
「いいっていいますと」
「勝利のお祝いの用意を」
「そのラグビーのですね」
「ビールとラムチョップ」
お祝いにというものはこの二つだった。
「ビールは絶対、ラムチョップはナッツ類でもいい」
「それでしたら」
そういったものならだった、この八条荘なら。
「普通にありますから」
「そう」
「はい、畑中さんにお話して用意してもらいます」
「なら後はオーストラリアの国旗だけ」
エリザさんはこうも言った。
「あれは私が持ってるから」
「オーストラリアが勝ったらですか」
「一日このお部屋に飾りたい」
このロビーにというのだ。
「勝利のお祝いに」
「私もです」
ジョーンさんも負けじと僕に言って来た、その負けじという感情が顔と言葉の調子にそのまま出ていた。それもかなりはっきりと。
「ニュージーランドが勝った時は」
「ビールとラムチョップを」
「ラムチョップはナッツ類でも構わないです」
ここもエリザさんと同じだった。
「用意しておいて下さい」
「それでニュージーランドが勝ったら」
「はい」
まさにその時はというのだ。
「お祝いをしますので」
「それで旗をだよね」
「勿論です」
そのニュージーランドの国旗をというのだ。
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