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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十八話 豪新戦その五

「飾ります」
「このお部屋にですね」
「そして勝利をお祝いします」
「じゃあどっちにしても」
「ビールとおつまみは」
「絶対にですね」
「畑中さんにお話させてもらいます」
 こう二人に答えた。
「ビールのことは」
「じゃあお願い」
「お願いしますね」
 二人は僕の言葉に納得した顔で頷いてくれた、そして。
 まただった、お互いに見合って言い合った。
「勝ちますから」
「それはこちらの言葉」
「我が国の精鋭達に恐れをなして下さい」
「そちらの負けた選手の人達の顔を見るのが楽しみ」
 また言い合う二人だった。
「それはこちらもです」
「負けない」
「連勝させて頂きます」
「連勝ならずおめでとう」
 普段は仲がいい二人なのにこの時ばかりはかなり鋭く対立していた。そしてその対立の中でだ、遂にだった。
 二人共ぷい、と顔を背け合ってそれで言った。
「では試合終了までは」
「敵同士」
「そのうえで一緒に観ましょう」
「同じ部屋で」
「ううん、どうなるのかな」
 僕はその二人を見てまた言った。
「この状況だと」
「いえ、こうなるのが普通ですから」
「大家さんは気にしなくていい」
 二人は顔を背け合ったまま僕にも言った。
「ラグビーの試合の前は」
「オーストラリアとニュージランドの試合になると」
「こうなることが普通なので」
「試合が終われば元に戻る」
「ではビールお願いします」
「国旗の用意はしておくから」
 こう二人で僕に言ってだ、それでだった。
 僕の前から姿を消した、その間もずっと顔を背け合ったまま隣同士で歩いてそれぞれの部屋に帰った。その一部始終を見てから。
 僕も自分の部屋に入った、そしてその次の日。
 僕はクラスの皆にだ、ラグビーにおけるオーストラリアとニュージーランドの関係について尋ねた。すると。
 そのラグビー部の氏家君が僕にこう話してくれた。
「ああ、実際にだよ」
「オーストラリアとニュージーランドはなんだ」
「普段は兄弟国で仲いいんだよ」
「それでもなんだね」
「ことラグビーになるとさ」
「そうした感じになるんだ」
「そうした人いるんだよ」
 こう僕に話してくれた。
「どっちの国にも」
「じゃあジョーンさんとエリザさんは」
「ちょっと極端だと思うけれどな」
 それでもだというのだ。
「どっちもそうした人がいるんだよ」
「そうなんだね」
「サッカーだってそうだな」
 今度はサッカー部の小塚君が言って来た。
「フーリガンとかな」
「ああ、あの」
「ああした熱狂的なファンいるだろ」
「それで自分の国のチームが負けたら暴れる」
「そうした人いるだろ」
「そういうことなんだね」
「だから別にな」 
 小塚君もこう僕に言った。
「おかしくないだろ」
「二人がそこまで意地を張っていても」
「そう思うけれどな」
「俺達だってそういう奴いるな」
 野球部の安本君も言った。
「阪神ファンとかな、俺も阪神好きだけれどな」
「そうだね、阪神好きな人にはね」
 この話をされると余計にわかった、何しろ僕も阪神ファンだ。ファンの人達の中には本当に熱狂的な人がいる。 
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