| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十七話 日本の花その四

「そうした方は」
「私と一緒に」
 千歳さんは今度は右手を挙げて皆に言った。
「神社まで。高等部の正門で待ち合わせて」
「それじゃあ」
「宜しく」
「一緒に」
 何人かの人が千歳さんに応えた、こうしてだった。
 神社の場所がわからない人は千歳さんに案内してもらって一緒に行くことになった。僕は自分が言おうと思っていた。
 けれどそれがなくなってだ、いささか拍子抜けして言った。
「何か」
「あっ、お仕事がですな」
「うん、なくなった感じがしてね」
 それでとだ、僕は千歳さん自身に答えた。
「それで」
「すいません、お節介でした?」
「いや、別にね」
 お節介かというとだ、それは。
「そういうのじゃないから」
「そうですか」
「うん、まあ僕は僕でね」
 やることがあるからだ、それで千歳さんにこう返した。
「神社に皆が来たら」
「その時にですね」
「皆を案内するから」
 あの神社のことならそれこそ隅から隅まで知っている、何しろこの街で生まれ育ってきたからだ。あの神社にも数えきれない位行っているからだ。
「その時にね」
「じゃあお願いします」
「多分皆ね」
 八条神社のあるその八条町で生まれ育った僕とは違うからだ、皆他の場所から来た人だから。
「あの神社のことは詳しくないよね」
「そう言われると」
「やっぱり」
「ここに来て間もないです」
「ですから」
 皆もそれぞれ僕に答えた。
「宜しく」
「お願いしますね」
「それじゃあ」
「わかったよ、じゃあね」
 僕も笑顔で答えた、そしてだった。
 僕は皆に神社の中を案内することを約束した、そのことを約束してからだった。
 それから夕食を食べた、その夕食の後で。
 お風呂から上がるとだ、小野さんにこんなことを言われた。
「あのご夕食の時ですが」
「はい、何か」
「八条神社に行かれるとのことですが」
「そうです」
 その通りだとだ、僕ははっきりと答えた。
「皆の親睦を深めて日本文化を知ってもらう」
「その為にですね」
「皆で、って考えています」
「それでしたら」
 神社に行くのならとだ、小野さんは僕に笑顔でこう言った。
「一つ是非にということがあります」
「是非にとは」
「もう義和さんはご存知と思われますが」
「あの神社の中のことで」
「はい、あのお店の中の出店の」
 こう言うとだ、僕はすぐにこう言った。二人で一階のロビーの席丁渡ピアノが傍にあるその席に二人で横に並んで。
「どれかですか」
「どのお店もいいですが」
「特にですか」
「たい焼きです」
 これだというのだ。
「あそこのたい焼きをです」
「是非にですね」
「召し上がられて下さい」
「僕達全員で」
「そうです、義和様もあのたい焼きはご存知ですね」
「言われてみれば」
 僕もあそこのたい焼きは知っている、食べたことが何度もある。そのことから小野さんにこうはっきりと言えた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧