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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十五話 最後の人その九

「これも縁よね」
「確かにね」
「お母さんが言ってたの」
 詩織さんはここで遠い目になった、自分を産んで育ててくれた人のことを想って自然とそうなるみたいだ。
「縁はね」
「それはなんだ」
「凄く不思議なもので」
「誰かと誰かが会うことは」
「物凄く不思議な出会いだったりするから」
「そういえば」
 僕もだ、ここで自分で考えて言った。
「僕にしてもね」
「八条荘の管理人さんになって」
「それで畑中さんと会って詩織さんと会って」
 そしてだった。
「他の人達、今回のね」
「友奈さんも」
「うん、あの人もだしね」
「何でどう巡り会うかわからないわよね」
「人にはね」
 それこそだ。
「誰にもわからないから」
「神様でないとね」
「神様がね」
「人と人と巡り会わせているのかもね」
「そう思うよ」
 僕はまた言った。
「そうした風にね」
「義和君は神様の存在信じてるのね」
「信じてるよ」
 その通りだとだ、僕は詩織さんに答えた。
「人間なんてね」
「それこそよね」
「うん、その力はちっぽけで」
 所詮人間一人一人の力なんて、と思っている。自分を偉いとかとても思えない位だとも。
「誰と会えるかとかね」
「わからないわよね」
「どうにも出来ないよ」
 それこそ自分一人の力ではだ。
「わからないしね」
「そうしたものよね」
「世の中そうじゃなくても人間じゃどうしようもないことが多いよね」
「色々とね」
「確かに科学とかで色々出来る様になったけれど」
「それでも限界があって」
「万能なんかじゃないから」
 とてもだ、人間は万能なんかじゃない。多少科学を知っていても結局はそれだけだと思う。人間の力なんて小さい。
 そう思っているからだ、僕は詩織さんにもこう言った。
「限られてるからね」
「出来ることがね」
「それで人間じゃどうしてもわからないことがね」
「世の中には一杯あるからよね」
「神様っていると思うよ」 
 僕はこの考えをだ、詩織さんにまたはっきりと言った。
「仏様もね」
「神様も仏様も」
「いるよ、そしてね」
 その神様にしても仏様にしてもだ。
「そうした存在がなんだよ」
「人と人を会わせてくれるのね」
「それが縁だよね」
「そうしたこと。言われたわ」
 まただ、詩織さんは上を見上げて僕に言ってくれた。
「お母さんにね」
「いいお母さんだね」
「私もそう思うわ。優しくてしっかりしてて」
「それでそうしたことも教えてくれて」
「いいお母さんよ」
 言葉は現在系だった、詩織さんの今の言葉は。 
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