八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十五話 最後の人その十
「あの人がお母さんでよかったわ」
「誰の子供になるかも」
「やっぱり縁よね」
「そうだよね」
「まあ。縁はね」
今度はだ、詩織さんはその目を遠いものにさせた。そうしてその遠いところにあるものを見ながらだ、詩織さんは僕に話してくれた。
「いい縁もあればね」
「悪い縁もあるね」
「どうしてもね」
「そうだよね、悪い縁もあるね」
「そうした人とはすぐに離れないとね」
それこそだ。
「大変なことになるわよね」
「縁で会ってもね」
「良縁は大事にしないといけないけれど」
「悪縁はね」
それはだった。
「もうそれこそね」
「すぐに何とかしないと」
つまりだ、切らないとだ。
「自分が大変なことになるわ」
「悪い人とは付き合わない」
僕は世間でそう言われていることをここで言った。
「そうだね」
「そうよね、悪い人といっても色々だけれど」
「そうした人と一緒にいると」
それこそとだ、僕はまた言った。
「悪いことしかないよ」
「悪人っているからね」
「本当の悪人がね」
僕も知っている、そうした連中は。
「どうしようもない位に腐った奴が」
「義和君そうした人達も見てきたのね」
「うん」
僕は一言で答えた、頷いて。
「そうなんだ」
「ヤクザ屋さんとか?」
「どうしようもなく底意地の悪い奴とかね」
小学校の時に同じクラスで中学校でもだった、強い者には弱く弱い者には強い。平気で嘘を言って告げ口にもあることないこと入れる。そして他人の出席、部活のそれを普通に書き換える。本当に最低な奴だった。
「いたよ」
「その人とは付き合わなかったよね」
「皆嫌ってたからね」
その悪行が皆に知られてだ。
「それでね」
「誰からも無視されていたのね」
「どうにもならない奴だったから」
とにかく性格が悪かった、これに尽きた。
「親の転勤で何処かに行ったけれど」
「今はどうしてるかわからないのね」
「正直二度と会いたくないよ」
絶対に碌な奴になっていないからだ」
「何があってもね」
「そうした人もいたのね」
「うん、親父も言ってたよ」
ここでまただった、僕は自然に親父の名前を出した。
「そうした人とはね」
「縁を切らないとね」
「さもないといいことはないから」
「私もそう思うわ」
詩織さんも僕に同意してくれた。
「そうした人はね」
「それこそだよね」
「うん、付き合ったらよくないわ」
「悪い人とは付き合わない」
「朱にも混じればっていうしね」
「そういうことだね」
「そうね、本当に」
「親父はそうしたことも教えてくれていたんだ」
僕はここでこのことも知った、親父はこうした世の中で生きるにおいて絶対に忘れてはいけないことも教えてくれていた。
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