とある3人のデート・ア・ライブ
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第七章 歌姫
第1話 夏休み明け
前書き
どうも、ラーフィです。
(前回の話で前書き控えるとか言っときながら章始めなので書きました)
とうとう美九編に入りました!色んなとあるのキャラを出したいと思っておりますので、そちらもお楽しみください!
ではでは〜
天央祭
それは随分昔、空間震により爆発的被害により開催されたもの。
その時の学生の人数は激減し、それでも文化祭をやりたいという声が多かったので、十校合同にやることになったのだ。
それが天央祭。
その伝統が今でも受け継がれている。ただそれだけの話だ。
上条「へぇ〜、そうなのか」
十香「知らなかったぞ」
転校生二人組は士道の説明を受けてようやく理解したようだ。
今、体育館で集会中だったが……
亜衣『来弾に栄えあれ!来弾に誉れあれ!我らが渾身の一撃をもって、貴奴らののどを噛みきらんッ!』
『おおおおおおおッ!!』
壇上で、復讐に燃える亜衣の声に学年の皆が乗ってしまっていた。
上条「(集会なのか……これ)」
普段はこんなことにはならないのだが……
と、上条がそんなことを思っていると、背後から何やら声が聞こえてきた。
耶倶矢「くく……なるほどな。亜衣達が奮起している理由がようやく知れたわ」
夕弦「納得。そういうことであれば負けるわけにはいきません」
振り返ると、そこには瓜二つの少女が二人、立っていた。
そう。そこにいたのは、先々月士道が霊力を封印した精霊であり、新学期からお隣の二年三組に転校してきたのだ。
士道がいないと不安になる十香とは違い、二人一緒にいれば精神状態が安定するため、隣のクラスへの編入が決められたのだという。
集会中だからクラスごとに整列していたのに、なぜ……と一瞬思ったが亜衣の演説のせいで皆が盛り上がってしまい、クラスの列など意味を無くしていた。
耶倶矢「とはいえ、八舞姉妹がいる以上、来弾の勝ちは揺らぐまいて」
夕弦「同意。夕弦と耶倶矢のコンビは最強です。どんな相手が来ようとも無敵です」
本当に、先々月まで争っていたとはとても思えないぐらいの仲の良さだな。
夕弦「当麻」
と、べったり引っ付いていた耶倶矢から離れ、こちらへとやってきた。
一方、耶倶矢は士道のところへ直接向かっていた。
夕弦「″彼女″は元気ですか?」
あぁ、と上条は思い出した。
そういえば凜袮の存在を知る者が自分以外にもできたんだ、と。
上条は特に何も答えることもなく、首からアクセサリーのようにかけている『石』を取り、夕弦に渡した。
さすがに大観衆の前で夕弦の額を自分の胸に押し付けて会話するような行為はしたくない。
夕弦もそれを察したのか、微笑を浮かべながら両手で受け取り、そのままそれを胸へと持っていく。
口が動いていることから会話は出来ているのだろう。そのまま数分話し続けると、その『石』をこちらへと手渡してきた。
上条「もういいのか?」
夕弦「はい。今は充分です。それに凜袮が元気なことがわかったので夕弦は満足です」
上条「そっか」
本当なら一日中渡してもいいのだが、あくまで『石』の所有者は上条だから、と断られたりもしていた。
と、ふと上条は思った。
上条「……そういや、去年はどこの学校が優勝したんだろ?」
ボソッと言ったつもりの言葉に反応したのは意外にも殿町だった。
殿町「あぁ、上条は転校してきたから知らないのか。去年の王者は、竜胴寺女学院ってとこだ」
上条「竜胴寺女学院?」
殿町「あそこは市内最高と謳われる美少女偏差値を持ついわゆるお嬢様学校だ。去年の模擬店なんかよぉ、味や内容も一級品だが、それ以上に丁寧な接客で客数と票数を稼いでいるんだぜ」
上条「ふ〜ん……」
学園都市内の常盤台中学をイメージしながら殿町の言葉を聞いていた。
まさか御坂みたいなやつがいたら……と思うだけで女子校は拒絶反応を起こす。
殿町はそれに、と続け、
殿町「今年の竜胴寺にはもう一つ、きな臭い噂がある」
士道「噂?」
どうやら士道も話に興味を持ったらしい。
殿町は構わず続ける。
殿町「ほら、四月の頭に話題にならなかったか?竜胴寺に転入生が入ったって。それも美九たんが!」
士道「……誰だそりゃ」
上条「聞いたことあるような……ないような……」
その瞬間、信じがたい回答だったのか、顔を愕然としたものに変貌させた。
殿町「何でテメェら知らないんだよ!!超国民的アイドルだぞ!!」
士道「って言われてもなぁ……」
上条「上条さんの記憶力では知りませんことよ?」
さすがに呆れたのか殿町は何も言わなくなった。
士道は折紙と十香のところへ戻り、上条はその場にとどまり壇上にいる亜依へと視線を移した。
話を聞くと、どうやら会長がストレスと過労で倒れたらしく代役を決めなくてはならないらしい。
つまり、天央祭の実行委員を急遽決めなくてはならなくなったのだ。
シン、と静まりかえったこの体育館で、こいつらだけはいつも通り騒がしかった。
右には折紙、左には十香、後ろには夕弦、前には耶倶矢から士道は抱きつかれるという男子から歯を噛みしめるような光景だった。
おまけにタイミングが悪いことに静まりかえっているこの状況では、さらに生徒の鋭い視線を浴びることになる。
鋭い視線を浴びせているやつの一人、殿町が壇上の亜依に向かってこう言った。
殿町「議長!天央祭の実行委員に五河君を指名します!」
士道「な……ッ!?」
その直後、周りの生徒から『いいぞ五河!』『お前にしか任せられん!』と言った声が多く飛んできた。
それが嫉妬からの逆襲とも知らずに。
亜衣『諸君らの声、しかと受け取ったぁッ!二年四組五河士道くんを、他薦、賛成多数により、天央祭実行委員に任命しまッす!』
士道「ちょっ……」
そして。体育館は大歓声に包まれた。
その士道に、一言。
上条「士道、お疲れ」
折紙「私も手伝う。だから心配は無用」
十香「わ、私も手伝うぞ!鳶一折紙など使い物にならんわ!」
折紙「それはこちらのセリフ。ポンコツは大人しくしていてほしい」
十香「な、なんだと!?」
耶倶矢「我らも手伝おうではないか。我がしもべの一大事だ。助けるのが道理だろう?そうは思わぬか、夕弦よ」
夕弦「賛同。夕弦達も手伝います」
こうして。
士道に浴びせられる嫉妬の視線は、より一層増すのであった。
亜衣『あ、言い忘れてたけど上条君も一緒だからね』
上条「……………え?」
亜衣『五河君よりは仕事出さないけど』
上条「不幸だ……」
男子生徒からのキツイ視線を浴びせられている士道の横では、力を無くしたように頭をがくりと下げた上条がそこにいた。
ーーーー
ーーー
ーー
ー
士道「つ、疲れた……」
その後、士道はブース設営の決まりごとや予算の分配事項の情報を一気に詰め込まれたため、身体の疲労より、頭と精神の疲弊が深刻だった。
幸い、上条の役割はあくまで、会議の時に自分たち三人が文化祭の準備で行けなかった場合、士道のサポートとして任命された。ただそれだけのことだった。
なので、文化祭までは夕飯をずっと担当してくれると言ってくれたので、多少帰りが遅くなっても問題はない。
あの三人は自分たちが気づかない内に上条を実行委員の重要な役割を担わせる気がするのだが……
その疲弊した状態で自分の家に入り、そのままリビングへと直行した。
そこには、キッチンでハンバーグの生地を丁寧に練っている上条とソファに置いてある枕に顔面から突っ込んでいる琴里とテレビゲームをしている十香と四糸乃がいた。
生地作りに集中している上条以外は士道の帰宅に気付いたようで、
十香「おお、おかえりなのだシドー」
四糸乃「あ……お、おかえりなさい……士道、さん……」
よしのん『おかえりー。今日は随分と遅かったね。何かあったの?』
琴里「遅いわよ。当麻くんがいてくれなかったら夕飯いつも以上に遅くなるじゃない」
後半にいくにつれて言い方が厳しくなっているような気がするが、今は疲れがたまりすぎてそれどころではない。
士道「た、ただいま……」
そのまま誘われるようにソファに座り込む。
琴里「それで?何でこんなに遅かったの?」
士道「ちょっと、文化祭の実行委員に指名されちまってな」
琴里「ふぅん……」
特に、興味はないらしい。
すると、ようやく型を作り終えたのか、キッチンからハンバーグを焼いている時に出る独特の音がリビング中に響いた。
ハンバーグを焼いて一息ついたのか、ようやく士道の存在に気づいたようだ。
上条「あ、士道おかえり」
士道「え……た、ただいま……」
普段ならこの音で、少なくても十香はピンと反応するのに……と思っていたら、
十香「うおっ!?なんだこのボス!?強すぎるぞ!」
四糸乃「こ、こんなの……勝てません……!」
よしのん『属性関係なしの超ダメージは辛いね〜。相手の体力も多いし、ここは一旦退いて回復するのもアリなんじゃないかな?』
十香「う、うむ……そうだな」
どうやらかなり白熱しているらしい。こちらの音には気づかなかったようだ。
その横で枕に顔を突っ込んでいた琴里が顔を上げて、士道の方へと向き、言った。
琴里「……そういえば、身体は大丈夫なの?」
士道「ん?どうしたんだ突然……」
琴里「いや……大丈夫ならいいけど、気をつけてよね。最近厄介な状況になってきたし」
士道「厄介な状況?」
琴里「いくつかあるけど、まあさしあたっては〈ファントム〉ね」
士道「〈ファントム〉……?精霊の識別名か?」
琴里「五年前、私たちの前に現れた『何か』のことよ。いつまでも『何か』のままじゃ不便だしね。この前の会議で便宜的に識別名が付けられたの」
士道「あぁ……あの」
五年前に琴里に精霊の力を与え、士道と琴里の記憶を封印していた、精霊であるかさえも分からない存在。
琴里「そしてもう一つは……例の会社ね」
士道「DEM社……か?」
琴里はコクっと頷いた。
先月の修学旅行にて、魔術師のエレンやCR-ユニットを使う機械人形、さらには巨大な空中艦の襲撃を受けたのである。
その犯人が……DEM社だ。
士道「しっかし……なんでDEM社があんなことを……」
琴里「眠たいこと言ってんじゃないわよ。連中にそんな倫理観があれば真那だってーー」
士道「え?」
琴里の言葉に、士道だけでなく、上条も眉をピクッと動かした。
士道「真那……?真那がどうかしたのか?」
その名は、士道の実妹と名乗る少女。
琴里はしまった、という顔を作ると唇を引き結んで視線を逸らした。
士道「お、おいどういうことだよ。真那に何か……」
と。
ウウゥゥゥゥゥゥゥゥ………
窓ガラスを微かに震わせ、街中に空間震警報が鳴り響いた。
刹那、琴里が立ち上がり、スカートを翻して士道の脇をすり抜けていく。
士道「あ、お、おい!話はまだーー」
上条「えぇ……上条さん、まだ夕飯作ってる途中なんですが……」
琴里「話は後よ。当麻君はここで十香と四糸乃と一緒に待機。士道は早く支度してーー仕事よ」
ーーーー
ーーー
ーー
ー
少し、時は遡り。
鳶一折紙の謹慎処分が解除となった。
しかし、その日の陸上自衛隊天宮駐屯地では静かではなかった。
日下部「どういうことですかこれ!」
基地の一室で、塚本三佐が鳶一折紙に対して謹慎解除と、厳重注意をしていたところ、日下部燎子がノックをせずに入ってきたのだ。
苛立ちのまま燎子は上官の机の上に書類束を叩きつける。
折紙も気になってチラッと覗いてみたところ、その内容は驚くべきものだった。
補充要員として外国籍の隊員を十名を導入する。
そう、その十名は全員DEM社の人間。苛立ちを覚えるのも無理ない。
そこで再びゆっくりと扉が開かれた。
そして、十名ほどの外国人が次々部屋へと入ってきた。
「あラ、資料で見た顔ネ。ASTの隊長さんに、トビイチオリガミだったかしラ?私は今日付でASTに配属になったジェシカ・ベイリーでス。以後よろしク」
大仰にうなずいて、右手を差し出してきた。
燎子「……ふん」
不快そうに、燎子はジェシカと握手を交わした。
燎子「あんたらが一体何をしに来たかは知らないけど、ここで好き勝手な真似はさせないわよ。私の命令に従ってもらうから」
ジェシカ「……あなたの命令に従えば、精霊を倒せるのかしラ?」
燎子「……何ですって?」
確かに。
対精霊部隊でありながら一体の精霊も狩れていない。
ジェシカ「精霊すらまともに倒せないアナタたちがDEMのアデプタス・ナンバーである私たちに敵うとでも思ってるノ?」
燎子「ちょっと、あんた大概にーー」
と、燎子がジェシカを止めようとしたところで。
辺りに甲高い警報が鳴り響いた。
燎子「……!折紙、出勤準備よ!腕は鈍ってないでしょうね!?」
折紙「当然」
折紙が駆け出そうとした時、またもジェシカたちが笑みを浮かべてきた。
ジェシカ「鈍っていようがいまいが、精霊を殺せないと同じじゃないノ?」
折紙「……」
燎子「やめなさい。今はそんな場合じゃないでしょ。それで?あんた達はどうするの?」
ジェシカ「そうねェ……丁度いいタイミングだし私たちも出撃しましョ。アナタたちに戦い方を教えてあげるわ」
その時だった。
ジェシカ「ただシ、私たちは特別な任務を帯びてるノ。場合によってはそちらを優先させてもらうワ」
折紙の手に、小さい紙を握られたのは。
燎子「特別、任務……?」
ジェシカの言葉が耳に入らないぐらい、かろやかで、素早い手さばきに驚いていた。
恐らく、この中の外国人の誰かがやったこと。
だが、見回しても誰もが外国人の顔をしていて、ジェシカの方を見ていた。
燎子の指示で、折紙はすぐにCR-ユニットが置いてある管理室へと駆け足で向かった。
その途中、罠かと思ったが気になってしょうがない右手の白い紙を燎子に気づかれないように、走りながら広げサッと読んだ。
『University town Level5 secondplace KAKINE TEITOKU』
要約すれば、
『学園都市Level5第2位、垣根帝督』
折紙「……ッ!」
なるほど、と。
鳶一折紙は全てを察した。
折紙は振り返ることなく、その紙を強引にポケットに突っ込み、走り続けた。
後書き
垣根帝督君は何を考えているんでしょうねw
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