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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十五話 最後の人その三

 ここでだ、僕はこうも言った。
「そうだね、公平でね」
「ちゃんと私達のこと見ていてくれているから」
「それでなんだ」
「いつも面倒見てもらってるの」
「そうなのよ」
 それで、というのだ。
「あの人に助けてもらってるのよ」
「それで井上さんのこと知ってるんだ」
「そういうことよ、いい人よ」
 内田さんは井上さんのその一面のことを僕に強く話した。
「あの人もおられるのね」
「真面目だよ」
「そう、真面目なのよ」
 内田さんは僕にこのことを保障しもした。
「いい意味でね。けれどね」
「それでもっていうんだね」
「悪い意味でもね」
「真面目だっていうんだね」
「固いの。それで融通が利かないの」
 僕も井上さんはそうした人だと思っているけれどあえて言わなかった。悪口めいたことを言うことは好きじゃないからだ。
「美人で頭もよくてだからね、そうしたところがなければ」
「そうした人っているわね」
「何処にもね」
 他の女の子達もここで言う。
「いい人なのにって人」
「どうしてもね」
「これさえなければって人」
「いるのよね」
「井上先輩がそうなのよ」
 まさにとだ、また言った内田さんだった。
「あんな真面目で公平な人いないけれど」
「真面目過ぎるのね」
「あまりにも」
「そうなのよね、もう少し」
 内田さんの今度の言葉は切実なものだった。
「柔らかくなって欲しいわ」
「難しいところね」
「その辺りがね」
「これさえなかったらって思うけれど」
「そこがどうしてもって人がね」
「井上さんって評判悪いのかな」
 僕は内田さんの言うことを聞いて少し残念な気持ちになって彼女に問うた。
「そうなの?」
「評判はいいのよ」
「真面目だから」
「公平でいつもフォローしてくれるし」
「意地悪なところはないから」
「そう、先生にもおかしいと思ったことは言うし」
 このこともとても井上さんらしかった。
「悪いことは悪いって人だから」
「全体的な評判はいいんだね」
「そうなの」
「けれど困ったところもあって」
「そういう人なの」
「何かアパートと同じだね」 
 八条荘にいる時とだ、そう考えると何処でも態度を変えないというところもあの人らしいと思った。陰日向のないところも。
「そこは」
「クラスでもそうらしいの」
「風紀部でもだよね」
 僕は井上さんの象徴とも言っていいこの部活の名前も出した。
「あの部活でも」
「そう、あの部活でもね」
 今度は風紀部の女の子が言って来た。
「あの人ああした感じなのよ」
「そうなんだね、やっぱり」
「真面目なのよ。公平で裏表がなくて」
「そうした人だよね」
「厳しいし融通が利かないけれど」
 それでもというのだ。
「悪い人ではないの」
「むしろかなりの善人かな」
 僕は腕を組んで井上さんについてこう言った、評価すると言うと随分と上から目線なのでそうしたことは言わなかった。 
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