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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十五話 最後の人その二

「嬉しいことは嬉しいけれど」
「とっかえひっかえとかはか」
「ないんだな」
「そこまではか」
「幾ら何でも」
「そうだよ、確かに女の子ばかりのアパートだけれど」
 それでもだとだ、僕は話した。
「皆が思っている様なものじゃないから」
「そんな恋愛ゲームみたいなことはか」
「ないか」
「恋の鞘当とかは」
「別に」
「うん、ないよ」
 それはとだ、僕ははっきりと言った。少なくとも僕はこの時はそう思っていた。先のことは全くわかりはしないので。
 けれどこの話はこの時はこれで終わった、それで女の子の一人内田さんが僕にこんなことを言って来た。
「八条荘って今入居者の人二十三人よね」
「うん、そうだよ」
「二十三人もいるのね」
「うん、個室にね」
 一人ずつということもだ、僕は話した。
「入居しているよ」
「一人一室で二十三人ね」
「そうなんだ」
「随分広いアパートね」
「イギリスの屋敷を模した建物だから」
 何でも何処かの公爵家か侯爵家の領地でのお屋敷を模したものらしい、だから物凄く大きな構造なのだ。
「一階に皆のお部屋があって」
「二階は?」
「二階は色々な設備のお部屋とかでね。三階は僕の場所なんだ」
 寝室や書斎がある、トレーニングルームまで用意してもらっている。
「あとお風呂場とか食堂は一階にあって。使用人の人達は別棟に住んでおられるんだ」
「そうなんだ」
「そう、そうした家でね」
 それで、というのだ。
「入居者もね」
「沢山いるのね」
「そうなんだよ、凄い大きさだね」
「ええ、私もそう思うわ」
 内田さんもだとだ、僕に答えてくれた。
「だから二十四人分の個室もあるの」
「そうなんだ」
「何か旅館みたいね」
「うん、普通の旅館よりもね」 
 実際にだ、八条荘は。
「まだ大きいよ」
「それで三階建てなのね」
「お庭もあってね」
 ついでに言えばお庭もそのお屋敷のものを模している。左右対称で薔薇もあるイギリス風の庭園でいつも綺麗に手入れされている。
「とても大きいんだ」
「そこに井上先輩も入っておられるのよね」
「そうだけれど」
 僕は井上さんのお名前が出たところで内田さんに問い返した。
「何でそこであの人が出て来たのかな」
「あっ、部活一緒なの」
「そうなんだ」
「それでよくお世話になってるから」
 それで、というのだ。
「知ってるの」
「へえ、部活一緒だったんだ」
「確かに規律とか厳しい人だけれど」
 八条荘にいる時と同じく、というのだ。
「意地悪な人じゃないね」
「そう、公平な人よ」
 少なくとも弱い者いじめや贔屓をする人じゃない、そうしたこととは全く無縁の人でもある。その人がここで話した。 
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