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遊戯王GX 〜漆黒の竜使い〜

作者:ざびー
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episode3 ーOver Destinyー

「へぇ……お前が漆黒の竜使い、ね……。」

「…………。」

会場へと向かう通路の途中、レンカはある人物と対峙していた。白のジャケットに身を包んだ青年は目の前にいる漆黒のローブに身を包んだ年齢、性別、その他あらゆるものを隠したデュエリストを興味深そうに観察しており、当の本人はその場を早く立ち去りたいと切に願うのだが時期に自分の試合が始まる為、元来た道を引き返すというわけにはいかず、かと言って目の前の青年が通路を塞ぐ形で立っているので前にも進めない。
黒ローブのデュエリスト、レンカはこの状況を一刻も早く打開したいと思い、おもむろに口を開く。

「……どうして。あんたがここにいる。エド・フェニックス。」

デュエル以外では滅多に喋らないということで有名なレンカが喋りかけてきたことに素直に驚くエド・フェニックスと呼ばれた青年。だが、すぐに表情に余裕のある笑みを浮かべる。

「なに、デュエルとする前にどんな奴なのか一目見ておきたくてね。」

「……あっそう。」

レンカはエド・フェニックスを冷たくあしらい、多少強引にでも通ろうと考え、足を進める。脇を通り過ぎようとした時、忘れていたかのようにエド・フェニックスが口を開く。

「そうそう、あんたに言いたい事があったんだ。」

その言葉に再び足を止める。そして、目深に被ったフードにより、見えてはいないがさっさと話せ、と睨みつける。

「これから行われる僕とあんたとのデュエルの決着は既に決まってる。」

「……は?」

「もちろん……僕の勝利、という運命でね。」

キザったらしいポージングをしながら、予想の斜め上を行くエド・フェニックスの発言に思わず素で驚いてしまう。そんなレンカなどお構いなしにさっさとその場を去ってしまうエド。

「……なんなの、あいつ。」

一人残されたレンカは自分のキャラなど忘れてポツリと呟いたのは、今から行われる試合の少し前の事だった。




◆◇◆

「さぁぁ!今夜行われるのは、『漆黒の竜使い』レンカと、HEROデッキの使い手、エド・フェニックス、互いに無敗記録を伸ばす者同士の決闘だぁ!二人は今宵どんなデュエルを魅せてくれるのか!一分一秒足りとも目が離せないぞ!!」

赤いジャケットを羽織ったMCの実況が観客の熱烈な歓声渦巻く海馬ドームへと響き渡り、さらにヒートアップさせる。
既にドームの中央には、レンカとエド・フェニックス二人の姿があり、互い冷静に相手を見据えていた。

「二人のデュエリストの意地とプライドをかけた決闘が今始まる!」

「「決闘(デュエル)!!」」

エド・フェニックス:LP4000
レンカ:LP4000

MCの言葉を皮切りにデュエルが開始される。そして、先行を得たのは、エド・フェニックス。

「先行は僕のターン!ドロー!手札から『E・HERO スパークマン』を召喚!」

電気を体中から迸らせながらエドのモンスターが場に召喚される。

「出たぞ!エド・フェニックスのHEROデッキの切り込み隊長、スパークマンだぁ!」

「カードを二枚伏せてターンエンドだ。」

MCの多少大袈裟な実況に少し気を良くしたのか、ふふんと軽く笑みを漏らしレンカの出方を伺う。

「……ドロー。真紅眼の飛竜を召喚。バトルフェイズ。真紅眼の飛竜でスパークマンに攻撃!黒・翼・撃!」

「リバースカードオープン!ドレインシールド!エフェクトにより、攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力分のライフを回復する。」

エド・フェニックス:LP4000→5800

レンカはエドの場にモンスターを残し、さらにはライフを回復させてしまい少し悔しそうにする。

「カードを二枚伏せてエンド。」

特に何もすることがないので、素直にカードを伏せエドへとターンを明け渡す。

「僕のターン、ドロー!強欲な壺を発動し、二枚ドロー!いくぞ!マジックカード、融合発動!手札のバースト・レディとフェザー・マンを融合!カモン!E・HERO フェニックスガイ!」

風と炎を纏った戦士がエドの場へと降り立つ。

「いくぞ、バトルだ!フェニックスガイで真紅眼の黒竜を攻撃!フェニックスシュート!」

「その瞬間、リバースカードオープン!バーストブレス!真紅眼の飛竜を生贄にし、墓地へと送ったドラゴン族モンスターの攻撃力より低い守備力のモンスターを全て破壊する!」

「予想通りだ!!僕もリバースカードオープン!カウンタートラップ、トラップ・ジャマーだ!バトルフェイズ時に発動されたトラップカードの効果を無効にする!さらに、真紅眼の飛竜はコスト。よって、お前の場にモンスターは居なくなった!」

瞬く間のうちにチェーンが組まれ、結果、レンカの場には守護するモンスターが存在しなくなってしまう。

「これはぁ!?なんと、エド・フェニックスのカウンタートラップによって、モンスターの破壊から守っただけではなく、レンカのモンスターを除去したぞ!」

「やれ、フェニックスガイ!スパークマン!二体でダイレクトアタックだ!」

「っ!?」

レンカ:LP4000→300

エドの二体のモンスターの攻撃がレンカへと直撃しそのライフを大きく削りとる。3ターン目にして、レンカはレッドラインと言われる残りライフ1000ポイントを大きく割り、300まで減らす。開始3ターン目にして窮地に立たされるレンカだが、焦りは微塵も感じられない。

「ふふふ、手も足も出ないか?だが、恥じる事でない。既に僕の勝利で運命は決しているからな。僕はターンエンドだ。」

余裕のある笑みを浮べるエド。
観客からはトドメを刺せ!と言う声と共にレンカに大逆転を求める声が聞こえてくる。

「……ドロー。真紅眼の黒炎竜(レッドアイズ・ブラックフレアドラゴン)を墓地へと送り、マジックカード、紅玉の宝札発動。デッキから二枚ドローし、さらに追加エフェクトにより、デッキから真紅眼の黒竜を墓地に送る。
さらにマジックカード、銀龍の咆哮を発動し、墓地の真紅眼の黒炎竜を攻撃表示で特殊召喚する。」

炎柱が立ち上がり、漆黒のドラゴンが猛々しい咆哮を上げ、姿を見せる。その姿形はレンカのエースモンスター、真紅眼の黒竜に瓜二つ。だが、そのドラゴンが放つオーラはそれすらも上回る。

「ど、どうゆうことだぁ?レッドアイズに全く同じなモンスターが炎の中から姿を現したぞ!」

「さらにマジックカード、アームズ・ホール発動。通常召喚権を破棄する代わりにデッキから装備マジックを手札に加え、デッキトップを墓地へと送る。装備マジック、スペールヴィスを手札に加え、真紅眼の黒炎竜に装備する。
装備魔法 スペールヴィスはデュアルモンスターの効果を解放するエフェクトを持っている。これにより、真紅眼の黒炎竜のエフェクトが解放される。」

レンカは墓地へと送られたカードを確認するとほくそ笑み、封じられた本来の力を取り戻した黒炎竜はより一層高く吠える。

「バトルフェイズ。真紅眼の黒炎竜でスパークマンに攻撃する。闇・炎・弾!」

「くっ……やってくれる!」

エド・フェニックス:LP5800→5000

真紅眼の黒炎竜が放った火炎球がスパークマンへと直撃し、粉砕する。

「真紅眼の黒炎竜のエフェクト発動!自身の攻撃力分のバーンダメージを与える!喰らえ、闇・炎・弾、第二ダァ!」

「なっ!?グワァァァ!?」

エド・フェニックス:LP5000→2600

真紅眼の黒炎竜による追加ダメージにより、エドのライフを大きく減らすが、それでも
レンカの残りライフの差は2000以上ある。
2ターン目に許してしまったドレインシールドの影響が此処に来たかと若干悔しげな表情をする。

「メインフェイズ2。カードを一枚伏せ、ターンエンド。そして、このエンドフェイズ時墓地の真紅眼の飛竜のエフェクトが発動される。通常召喚を行ってないターンの終わりにこのカードを除外することによって、墓地からレッドアイズと名のつくモンスターを特殊召喚する。甦れ、レッドアイズ・ブラックドラゴン!」

レンカの掛け声に同調するかのように勇ましい咆哮がドーム内へと響き、上空から漆黒の竜がレンカの目の前へと舞い降りる。

「な、なんとぉ!レンカ選手のフィールドに二体の漆黒のドラゴンが揃ったぁ!威圧感が半端ない!これは、エド・フェニックス選手も焦りを感じるか?」

興奮気味にMCが実況を続けるが、二体のドラゴンを眼前に見据えるエドは焦りを浮かべるところが、むしろ薄ら笑いを浮かべている。

「そんなモンスターをいくら並べたところで僕の勝利は揺るがない!僕のターン、ドロー!僕は通常マジック、融合徴兵発動!エクストラデッキのE・HERO シャイニング・フェニックスガイをオープンし、その融合素材となるE・HERO スパークマンを墓地から手札に加える。
そして、手札の沼地の魔神王のエフェクト発動!このカードを手札から墓地へと送り、デッキから融合を手札に加える。」

「おおっと、エド・フェニックス、手札にスパークマンと融合を手札に加えたぁ!そして、フィールドにはフェニックスガイ!これは切り札が出てくるか!?」

「その通りだが、そのまえにそのバックカードは除去させてもらう。速攻マジック、サイクロン!セットカードを破壊だ!」

「リバースカードオープン、攻撃の無敵化 発動。第二のエフェクトを選択し、発動する。このターン発生する戦闘ダメージを0にする。」

レンカの周りを半球状のバリアが覆うとエドは小さく舌打ちをする。

「僕はマジックカード、融合を発動!手札のスパークマンと場のフェニックスガイを融合!カモン、E・HERO シャイニング・フェニックスガイ!」

融合の渦の中から、光輝く翼を生やした戦士が強烈な閃光を迸らせながら姿を見せる。

「シャイニングフェニックスガイのモンスターエフェクト発動!このカードは僕の墓地に眠るE・HERO一体につき、攻撃力を300ポイントアップさせる。
僕の墓地には、フェザーマン、バーストレディ、スパークマン、フェニックスガイの四体のHEROが存在する。よって、シャイニング・フェニックスガイの攻撃力は1200ポイントアップし、3700となる!
さぁ、バトルだ!行け、シャイニング・フェニックスガイ!真紅眼の黒炎竜に攻撃しろ!シャイニング・シュートッッ!」

光を纏い、高速でレッドアイズへと突進を仕掛け、その胴体へと風穴を開ける。
戦闘ダメージはないものの倒されてしまった真紅眼の黒炎竜を悲しげに見つめるレンカ。だが、すぐに思考を切り替えるといつもの無表情、ノーリアクションを取り戻し淡々とエフェクトを処理していく。

「攻撃の無敵化のエフェクトによってダメージは0となる。さらに墓地へと送られたスーペルヴィスのエフェクトが発動される。墓地から通常モンスター一体を蘇生させる。よって、墓地の真紅眼の黒炎竜を特殊召喚する。再び甦れ、我が下僕、レッドアイズ!」

レンカの呼びかけに応えるかのように煌々と燃え盛る炎の中から姿を現す漆黒のドラゴンーー真紅眼の黒炎竜は雄叫びを上げる。

「死してもなお、何度も蘇る漆黒のドラゴン!!漆黒の竜使いの名は伊達じゃないぞぉ!エド・フェニックス選手、レンカとドラゴンとの固い結束を打ち破れるか!?」

「ふん、いくらモンスターを呼び出そうが僕のE・HEROの敵じゃない。カードを一枚伏せてターンエンドだ。」

若干不機嫌さを露わにしてターンエンドを宣言するエド。恐らくは明らかに自分のが有利なのにレンカを擁護するようなコメントをされたからだろうと推測する。
確かにエドのフィールドには、レンカのレッドアイズと対をなすブルーアイズの攻撃力すらも凌駕するモンスターが存在している。さらにきっちりとセットカードも伏せられ、「無防備に攻撃して来ようものなら、返り討ちにしてやろう」などと言う気迫すら感じられる。


「ドロー。…………っ!」

レンカはたった今手札へと加わったカードーー真紅眼融合、を見て、一瞬だが驚愕しすぐに余裕を含んだ笑みを浮かべる。
このカードがあれば、このターンで決着がつけられると判断し、さらにデッキが自分へと力を貸してくれた、と歓喜する。

「マジックカード、真紅眼融合 発動!」

カードを決闘盤に半ば叩きつけるようにして、それを発動させる。

「っ!?ここで融合魔法だと!!」

「おおっと、レンカ選手!ここでレッドアイズ専用の融合魔法の発動だぁ!一体どんなモンスターを召喚するのだぁ!?」

エドは不味いと表情を歪め、MCはレンカの切り札の登場に心躍らせ、思わず実況に余計な熱がこもる。

「フィールドに存在する真紅眼の黒竜と、デッキに眠るデーモンの召喚を素材に融合!」

「くっ、デッキから融合だと!巫山戯るな!」

体から紫電を迸らせる筋肉隆々とした悪魔とレンカの場に存在していたレッドアイズが渦へと呑まれ、次第に姿形を変形させていく。

「紅き瞳持つ漆黒の竜よ、悪魔の力と交わり、新たな力目醒めさせん!融合召喚、現れ出でよ、悪魔竜 ブラック・デーモンズ・ドラゴンッッ!!」

渦の中から姿を見せるのは、悪魔の姿を持った漆黒のドラゴン。身体中から雷を迸らせ、呼び出された事に歓喜してか、身の毛もよだつような咆哮をドーム内へと轟かせる。そして、観客たちはそのドラゴンから放たれる威圧感に喋り声すら忘れ押し黙る。

「……さぁ、バトル。ブラック・デーモンズ・ドラゴン!シャイニング・フェニックスガイを攻撃しろ!」

「っ!?正気かっ!」

「まだボケるような歳じゃない。
攻撃宣言時、墓地のブレイク・スルースキルを除外し、エフェクトを発動。フェニックスガイのエフェクトを無効にする。」

「墓地から罠カード、だと!?いつの間に!」

墓地からの罠カードの発動に思わず叫ぶエド。第一、レンカのデッキはレッドアイズの連続召喚に重きを置いているため、墓地に送る機会などなかったはず。だが、即座にエドはその意見を否定する。

「っ!?まさか、アームズ・ホールの時か!」

レンカは正解だ、と言わんばかりに僅かに覗く口元に笑みを浮かべる。だが、エドから見ればそれは絶対零度の如き冷笑に思えてしまう。

そして、ブレイク・スルースキルのエフェクトにより、エドのフェニックスガイの効果が打ち消され、神々しい光が消え失せる。

「これで攻撃力はブラック・デーモンが上回った。」

「やらせるか!リバースカードオープン!次元幽閉!」

攻撃を行おうとするブラック・デーモンの眼前にぱっくりと空間の裂け目が現れ、呑み込もうする。
次元幽閉の効果は攻撃モンスターを除外する。聖なるバリア-ミラーフォースや、破壊装甲のように破壊し、墓地へと送るわけでもない分、死者蘇生やリビングデッドの呼び声等の蘇生カードで帰還させる事ができなくなる分、厄介なのだがレンカの真の切り札、悪夢竜 ブラック・デーモンには関係ない。
衝撃波のような咆哮を轟かせ、裂け目を潰す。その光景に度肝を抜かれた観客の中には、泣き出す子も居る。

「ブラック・デーモンが戦闘を行う時、いかなる魔法・罠も発動できない。
よって、バトル続行!焼き尽くせ、ブラック・デーモンッ!」

「そんなっ!?がぁぁぁぁぁ!!」

漆黒の如き黒炎がフェニックスガイ諸共、エドを襲い焼き尽くす。

エド・フェニックス:LP2600→1900


「僕のライフは残った。次のターンで、ケリをつけてやる!」
「安心しろ、お前に次のターンは来ない。
バトルフェイズを終了。そして、この時ブラック・デーモンの第二のエフェクトが発動される。墓地のレッドアイズ通常モンスターをデッキへと戻し、その攻撃力分のダメージを与える。真紅眼の黒竜をデッキへと戻し、その元々の攻撃力、2400のバーンダメージを喰らえ!!」

「なっ!?斎王の予言が……ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

エド・フェニックス:LP1900→0

エドは漆黒の炎に呑まれながら、叫びをあげる。そして誰もがエドが負けたのだと実感する。

たった一枚のカードからの逆転劇。無敗を誇る者同士の闘いに決着がつき、少しの間が空いた後、勝者であるレンカを讃えるかのように歓声が沸き起こる。

「か、か、か、勝ったのは漆黒の竜使いレンカだぁぁ!!」

当の本人はその実況を背中で受け、足早に会場を後にする。

ーーーーー
ーーー


「くっ……レンカ。これで本当に勝ったと、思うなよ!次は僕の真のHEROで……」

敗者であるエド・フェニックスはローブの裾を翻し、颯爽と立ち去るレンカを憎々しげに睨みつけそう呟く。


 
 

 
後書き
更新だいぶ遅くなりました。
ようやくvs運命野郎との闘いを書き終えれました。まぁ、今回エドはあっさり負けましたが、最後再戦のフラグ的な言葉を発してましたね。エド(本気)楽しみにしてください。


ブラック・デーモンマジTUEEEE……。 
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