八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十三話 マレーシアという国その十五
「あれじゃないですか」
「代表的な麻薬ですね」
「打ったらそれこそ」
「そうです、中毒になりやすく」
「物凄いことになるんですよね」
覚醒剤中毒の恐ろしさは本で読んだことがある、それからもう絶対にこんなものはしないと心に決めた。
「一週間寝なかったりとか電波みたいなの受けたりとか」
「幻覚も見るそうですね」
「括約筋が緩んだりとかして」
それで失禁する人もいると聞いている。
「大変らしいですね」
「そうです、そして身体の全てをすり減らし」
「死んでいくんですよね」
一度打つと一週間は寝ないでいられる位だという、けれどそれは身体にあるエネルギーを燃やしているだけだ。
だからだ、その燃やした分だけ身体を消耗してなのだ。
「最後火葬にしても骨も残らない」
「それが覚醒剤です」
「ヒロポンがそうだったんですね」
「あの頃よく中毒の方を見ました」
普通に煙草屋さんで売られていた頃はだ。
「恐ろしい状況でした」
「麻薬中毒患者が普通にですか」
「街におられました」
「凄いですね、それはまた」
その現実を知ってだ、僕は呆然となって言った。
「怖いですよ」
「ですがそれがです」
「当時は普通で」
「何ともありませんでした」
「そうだったんですね」
「あの頃は」
「それでも麻薬はですね」
僕はここまで聞いてあらためてだ、奥さんに言った。
「普通に売られていたとしても」
「例えそうであってもです」
「しないに限りますね」
「そうです」
「わかってます」
わかりました、じゃなかった。今の僕の返事は。
「絶対にしないですから」
「そうされて下さい」
「一度でも打つとですね」
「危ういです」
その一度がだ、ついつい二度三度となって。
「破滅ですよね」
「はい、人間として」
「本当に薬は怖いですね」
「ですから止様もです」
「自分は絶対にしないで」
「義和様にもです」
するなと言っていたというのだ。
「そう仰っているのです」
「そうですね、僕は薬はって思っていますし」
「麻薬は魔薬です」
この言葉は語呂合わせの様で真実だと思う。
「まさに」
「魔の薬ですね」
「自分自身を滅ぼす」
「そして儲けるのはですね」
「悪人達です」
ヤクザ者なり何なりだ、社会的に悪人と言う他ない連中が潤うだけだ。そもそもそんなものを商いとして扱っている奴なんて碌なものじゃない。
「そうですね」
「そうです、ですから」
「薬はしない」
「そのことは肝に銘じておられて下さい」
「わかってます、覚醒剤中毒の話を聞けば」
僕もだ、それこそ。
「絶対にしようと思いません」
「お酒はまだいいですが」
「お酒も過ぎるとっていいますけれど」
「あまり極端にならない限りは」
それこそというのだ。
「薬程ではありません」
「百薬の長ですか」
この場合はいい意味での薬だ、あの薬じゃない。
「そうなる場合もありますね」
「ですからずっといいのです」
「薬よりは」
「はい、ですから止様も飲まれています」
あの親父もというのだ。
「そして義和様もお酒は」
「程々ならですね」
「飲まれて下さい、実は面白いお酒が入りまして」
「面白いとは」
「ビンガが入りました」
「あっ、ブラジルのお酒ですね」
ビンガのことは知っている、そのお酒はというと。
「サトウキビから作る」
「そのお酒が入りましたので」
「飲んでいいのですね」
「どうぞ。ただ強いお酒ですので」
「飲む量はですね」
「お気をつけ下さい」
「わかりました」
こうした話もした、そしてだった。
僕はこの夜も飲んだ、そのビンガはかなり強く多少飲んだだけでもう足がふらふらきた。そのふらつくことも楽しみながら僕は寝た。
第二十三話 完
2014・12・5
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