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歪みすぎた聖杯戦争

作者:無人 幻獣
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4話 孤独な行動 孤独な数字

プッチは今、冬木市内の探索をしていた、聖杯戦争のルールはセカイから色々と聞いている。
七人で殺し合うバトルロワイヤルという事なので、普通そんなウロチョロしていると敵に襲われてしまうのだが、まだ始まったばかりなので探索するなら早めの方がいいと考えた。
プッチが探索をしようとするには理由はある、まず一つは地形の把握バトルロワイヤルということなのでいかに場所を利用して戦うというのが、プッチの考えであった。そしてもう一つはこの世界 この街の文化に少なからず興味が湧いてしまったのである。何せ、プッチが居るのは自分が暮らしていたアメリカでなく日本、しかもこの世界は自分の世界とはまた違う平行世界パラレルワールド
そんな場所に来てしまえば、少しは自分のいた世界とどれくらい違うのか興味が出てしまう。
だが調べてみれば元いた世界と違うとこはあるがそこまで劇的な違いはなかった。
正直言ってしまえば拍子抜けだったそんなこんなでプッチはと歩いているとある場所に目が止まった。

(…ほぅ..こんな所に)

それはこの国にはない洋風な作りをした外人墓地だった。プッチにとって墓地自体に目が止まったわけでなく、日本に外人墓地があるのは、驚きだった。

(冬木市で亡くなった外人の為の墓地のようだ、…随分と親切に作ってくれたものだ)

プッチがそう考えていた、そして神父なのだろうか?無意識に墓地に近づく






否、断とうとして、その動きを停止した。


「………………」

プッチはそれを敵ではないと感じていた、自分に害があるわけでもないが、
ソレの登場にただ無意識にソレの方に体を向けた。
もう夜で暗いはずだが、一瞬にしてこの場所が、闇に包まれるのを感じていた。
湿っていた空気が一瞬にして凍りつく。

(落ち着け………… 心を平静にするんだ…自分の召喚したサーヴァントだ……
2… 3 5… 7… 落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ…『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……わたしに勇気を与えてくれる)

プッチがそう自身を落ち着かせている所に


その''影''は立っていた


影が立っていると言う表現は可笑しいかもしれない、だがそれは影が直立したような立体感のなさ。
吹けば飛びそうなほど軽い存在感。

だが、影はこの空間を一瞬にして支配するもの。

「………………どうだアベンジャー 周囲に他のサーヴァントは?」

「……………」

アベンジャーと言われた影は何も答えない、だがプッチにはアベンジャーの反応を感じ取れていた。何故、声も発生することが出来ない、アベンジャーにプッチが感じ取れたのは、
おそらくマスターとサーヴァントの何かしらのリンクのおかげであろう。そのおかげで簡単なことしか出来ないが、意思疎通が何とか出来ていた。

「分かった。アベンジャーこの場はもういい引き続き私の周囲の見張りを頼む。」

「………」

アベンジャーはそう言われるとそのまま消える。するとさっきの重苦しいほど空気がなくなっていた。

(理解したか……)

プッチが召喚したサーヴァント アベンジャー 第八のサーヴァント
本来ではサーヴァントは七体しか召喚出来ない、だがそれを可能としたのが
アベンジャー イレギュラークラス
セカイの話を聞くと聖杯を見る限り前の聖杯戦争で何かしらが原因で聖杯が汚染されてしまったらしい。当初それを聞いたプッチはそれでは願いは叶えられないのでは? と思ったらしいが、セカイ曰く、そのまま使おうとすれば使えないが、だがセカイの手にかかれば聖杯を問題なく使えると言うこと。
そしてセカイは汚染された聖杯を利用しようとした。それがサーヴァントの召喚でのアベンジャー。
七体しか聖杯は本来召喚することは出来ないが、六十年前から溜まっている聖杯の汚染物をこの空間から引き摺り出すということ、そしてアベンジャーもこの世に出たいという願望がある為できる芸当。
しかし、引きづり出すと言っても結局は中身の一割にもみたないこの世全ての悪、そうして召喚したのがあの''影''アベンジャーだった。
召喚した時は、その影の不気味さにどうなるかと思ったが、特に何かしてくるわけでもない、こちらの命令に従っている所を見ると、そうでもないと思ってしまうのだが、それは即座に否定した。
多分、こちらに令呪が有るからだろう。それにサーヴァントもマスターがいなければ消えてしまう それらを分かっているからアベンジャーは従順なのだろう。

(そんな簡単に油断するんじゃあない、この世全ての悪だ どう来るか分からない。此処は、お互いどう出るかだ)

だが、アベンジャーは対サーヴァント戦で絶大な効果を発揮するだろう。
例えるなら、相手サーヴァントがカエルなら、こちらは蛇ということだ。
その為にも、上手くアベンジャーを使いこなさなければいけない。









○○

聖杯戦争における序盤の、まず当然の策として、ウェイバーは間桐邸と遠坂邸の監視から始めていた。
郊外の山林にはアインツベルンの別邸もあったのだが、北の魔術師はまだ来日していないのか、現状では蛻の殻で監視するまでもない。両家ともに、表向きはまだ何の動きも見せず、いっそのこと誰か痺れを切らせたマスターが遠坂か間桐の拠点に殴り込みをかけたりしないものかと、虚しい望みを託して監視を続けていたのだが、これといった収穫は無かったのだった。だが落ち込むことでも無かった。
まだまだ聖杯戦争が始まって序盤、他のマスター達が本格的に動き出すのにはまだ早い。
そうポジティブに考えていたのだが───
「おっ!ウェイバーの旦那 他の奴らの動きはあったか?」

ライダーが作品とやらを作りながら、テレビを観ていた。

「………………何やってんだ?」

ウェイバーはいまだ甚だきにくわない。
仮にも彼の個室に──厳密には他人の家だが、
この際それは置いといておいて──聖杯に招かれし英霊とあろうものが日がな一日テレビを観たり作品とやらを弄ったりと、ウェイバーには甚だ落ち着かなかった。
用のないときは霊体化していろと命じても、ライダーは''身体のある方が心地よい''と突っぱねたのだ。
実体化している時間が長引けば、それだけマスターがサーヴァントに供給しなければならない魔力もロスが多く、ウェイバーからしてみればたまったものではないのだが、そんな事情などライダーはお構いなしである。なお許し難いことに、ウェイバーの貴重な魔力を食い潰してまでライダーが何をしているかといえば……実に、何もしていないのだ。こうしてウェイバーが偵察活動に励んでいた今も、テレビを見て時たま、感心したように呟き、のほほんとくつろいでいるのだ。サーヴァントとはこういうものなのか、と自分の召喚したサーヴァントに一途な不満を浮きだしていた。

「それよりも旦那、凄いぞコレ、うん!」

語り口に熱を込め、ライダーはブラウン管の画像を指さす。今ビデオデッキで再生されているのは、
元アメリカ陸軍の特殊精鋭部隊であるグリーンハットの一員であったカイエー・レッドフィルードの
案内により戦争の真実を暴く。その番組名は『The future of warfare(戦争の行く末)』……ライダーはこの手の軍事マニュアル向けの資料を集めて観ている、彼曰く''おいらの作品のアイディアに必要''らしい……一体何に使えるのかこんなものが………

「これ、この核爆弾という凄まじい破壊力を持つこれ。オイラもいつかこれ程の破壊力を目指さないとな〜」

その映像から流れるのは、核によって建物や車や木が一瞬にして廃になる凄まじい映像であった。

「──そこまでの破壊力があるのを使ったら、この冬木市は一瞬で消えて、聖杯戦争どころじゃなくなるな」

ウェイバーが捨て鉢にそう吐き捨てると、''そうだなぁ''と聴いてるか聴いてないのかとよく分からない返事のまま唸った。

「まぁ、オイラもそこまで安物のようにポイポイと使うわけにはいかないしな、使うとしたらここ一番というところだな」

「聖杯戦争こんなで大丈夫なのかな.…」

何にせよ、今気にしなければならないのはアサシンのサーヴァントだ。
自らのサーヴァントであるライダーが、戦術的にはどのクラスのサーヴァントにあったても、ある程度、闘うことができるくらいの戦力はウェイバーも認識していた。
そうなるとむしろ脅威になるのは、奇策を用いてこちらの足許を掬おうと企むような敵である。
アサシンはその代表格と言えた。得体の知れなさで言えばキャスターのサーヴァントも厄介だが、姿も見せずに忍び寄ってくるアサシンこそが、当面の直接的な脅威であったのだ。
セイバー、ランサー、アーチャーの三大騎士クラス、そして暴れるだけが能のバーサーカーは、まったく恐れるに足らない。

「──で、旦那は何か情報は掴めたかい?」

テレビを消し、座禅を組みながら、不意打ちのように唐突にライダーがウェイバーに問いかける。

「……え?」

「だから、敵の情報だよ。そこまで使い魔を使って大分、廻ったんだろう?」

「そ、そんなん、まだ聖杯戦争は始まったばかりで他の奴等に動きがあるわけないだろう。」

「駄目だな〜旦那。やっぱ素人は駄目だな、うん。」

さも呆れた風な声に、ウェイバーはいきなりの駄目だし大声を出し反論しようとするが──

「旦那、今日は何を調べてたんだ?」

「な、なんだよいきなり……そりゃ何を調べたかっていえば、最初は御三家の偵察に決まってんだろ。お前がゴロゴロとテレ──
「それが駄目なんだな〜旦那」

ライダーの喝にウェイバーは口ごもった。またしても駄目だし。これで自分のサーヴァントに駄目だしされたのはこれが二度目だ。彼自身、自分の案を非難されるのは、彼の一番嫌いなことなのだ。
ウェイバーは怒りのあまり呼吸さえままならず、ウェイバーはパクパクと口を開閉する。
そんなマスターの動転ぶりにも構わず、ライダーは深々と盛大に溜息をついた。

「………じゃあ旦那、質問を変える。旦那がもし御三家の一人だと仮定するぜ。聖杯戦争は始まってまだ序盤、まず旦那ならどうするんだ?」

いきなり話を変えてきたライダーの意図が全くもって理解できないウェイバーだったが、質問に答えることにした。

「そりゃ……まずは他の陣営にはもう場所がバレてるからな〜使い魔も家の周りにたくさん居ることだし………」

ウェイバーは半ば独り言のように言い、ようやくライダーの言いたいことが判明した。

「ようやく解ったかい?旦那。つまり意味が無いんだよ御三家の偵察なんて。自分の周りに使い魔が居ることは御三家の連中は百も承知。そんな連中が聖杯戦争の序盤にそうそう大きい行動に出るのか?」

「……ッ」

ウェイバーは言い返せなかった。ライダーの指摘は正論だ。家でテレビや作品のことで明け暮れてるようなサーヴァントに言われたくはなかったが、確かに御三家は自分達が偵察されてるのは知ってるのは当たり前だ。情報の有無で聖杯戦争の勝利の鍵となるのだ。序盤は行動を慎むのがセオリーだ。動いたとしても、それは、使い魔にバレないように行動するだろう。
それに今後の問題となるのは、御三家ではなく──

「────御三家以外のマスター達?」

「そッ、やっと解ってきたじゃねーか、うん。」

「でも、他のマスター達の場所や動向なんて、使い魔を一日中、回っていても見つかるかどうか……」

「本来ならばそうかもしれないが、旦那は他の陣営に無いものあるだろう?」

「ライダー………」

その言葉に待ってましたと言わんばかりのライダーのテンションは上がっていた。

「見つけて狩るのか?…そ、そんな簡単に言うけどな……」

「オイラはライダー。こと"脚"に関しては他のサーヴァントより優位だぜ、それにそろそろ他の奴等が痺れを切らす頃だしな、うん。」

「し、痺れを切らすって……解るのか?」

「まぁ最後の方は勘だな、うん..」

「勘かよ〜」

呆れ顔のウェイバーをよそに、ライダーは掌からC2を作り出し、それを出そうと手を掲げる。

「そ、それってこの前出したやつじゃ…」
「空から探し出す方がいいに決まってるからな」

嘯きながら、ライダーの手には造形物があり、あの宝具を放とうとしているのだと悟って、ウェイバーは慌てて制止した。
「待て、待て待て待て! ここじゃまずい 家が吹っ飛ぶ!」









○○

安ホテルのビルの一室に言峰綺礼がいる。何故、遠坂邸ではなくホテルに住んでるかというと、確かに綺礼は遠坂時臣とは同盟関係にある。だが、その同盟関係も内密である為、表側は敵同士といった形にしている。だから直接会うことは極力なくして、何かある時は、通信用魔術礼装で連絡を取るようにした。
そして今さっき、時臣から連絡が来たのだ

「アサシン」

綺礼がそう軽く呼びかけると、金髪の青年 アサシンが現れた。

「マスター どうしました?」

「時臣氏から連絡が来た。早速だがアサシンお前には、海岸沿いの偵察をしてもらう。」

「海岸沿いの偵察を? アインツベルンの偵察はしなくていいのですか?」

御三家の偵察、これは聖杯戦争に参加するマスターにとって基本の事

「その心配は及ばない、そちらの方面の偵察は時臣氏のサーヴァントがする」

「分かりました。ではサーヴァントを発見した場合はどのように?」

「極力戦闘は行わずに、情報だけ手に入れてくればいいが、だが戦いの状況によっては戦闘に参加しても構わない。その判断はアサシンの判断に任せる。」

「了解。」

そのままアサシンは消えた、如何にイレギュラーなだけであってハサンではないが、しっかりと気配遮断は使えるようだ。

「衛宮..切嗣..」

綺礼は窓から見える夜景を観ながら呟いていた。今まで、綺礼の人生には何の意味も無かった。
これといった夢や目標も無く自分は何のために生きているのか分からなかった。そ
んな彼が、やっと自分の人生の答えを見つけられそうな気がしていた。
''衛宮切嗣'' 今回、アインツベルンのマスターとして参加している男。
この男の行動は、あまりにもほかのフリーランスで稼いでいる者らと違う人間のように感じた。
アインツベルンに拾われるより以前のフリーランス時代に、切嗣がこなした数々の任務。
それらの間隔は明らかに短すぎた。
準備段階や立案の期間まで考えれば、常に複数の計画を同時進行していたとしか思えない。
さらにされを並行して、各地の紛争地に出没しているが、よりよってそのタイミングが、戦況がもっとも激化し破滅的になった時期にばかり該当している。まるで死地に赴くことに、何かの強迫観念があったかのような……明らかに自滅的な行動原理。間違いなく言える。
この切嗣という男に利己という思考はない。彼の行動は実利とリスクの釣り合いが完全に破綻している。これが金銭目当てのフリーランスであるわけがない。では──何を求めて?

「……」

綺礼はカーテンを閉めベットに座ると、顎に手を添えて黙考に耽っていた。
衛宮切嗣という人物の、余人には理解の及ばない苛烈な経歴が、綺礼には他人事には思えなかった。
誇りのない魔術師、信念を見失った男、そう時臣は言っていた。
だとすれば、切嗣のこの狂信的な、まるで破滅を求めたかのような遍歴は……あるいは、見失った答えを探し求めての巡礼だったのではあるまいか?
そして、飽くことなく繰り返された切嗣の戦いは、九年前に唐突に幕を閉じる。
聖杯を勝ち取る剣闘士(グラディエーター)を求めた、北の魔術師アインツベルンとの邂逅。
つまり、そのとき彼は''答え''を得たのだ。いまや綺礼は切実に、衛宮切嗣との邂逅を待ち望んでいた。ついに彼はこの冬木での戦いに臨む意義を得ていた。依然、聖杯などというものに興味はない。
が、それを求めて切嗣が九年の沈黙を破るとなれば、綺礼もまた万難を排してそこに馳せ参じる意味がある。言峰綺礼は、是が非でも一度、衛宮切嗣と対峙しなければならない。
たとえそれが互いの生死を賭した必滅の戦場であろうとも。

(聞かねばなるまい、奴は聖杯戦争に何を求め何を手に入れるかを!………)









○○

アーチャーは山の頂上でアインツベルンと冬木市の街を偵察していた。

(やれやれ、全くもって不思議なことだ)

彼は冬木市の街を観ながら感じていた。まさか第四次聖杯戦争に呼ばれるとは思わなかったのだ。
起こるはずがないと判っていながら待ち続けたが、奇跡か、はたまた天の計らいなのかはわからないが、今、こうしてアーチャーのクラスを得て冬木の地に現界している。

(だとすると、爺さんはいるだろうか…)

アインツベルンの方を観ながら考えるが、
今ここで行っても自分は敵サーヴァント。話を聞いてさえくれないだろう。

(だが、私にはすべきことがある。)

過去の改竄。それがアーチャーのサーヴァント''エミヤシロウ''の目的だった。
エミヤシロウという歪みを己の手により抹消する事。それだけがエミヤシロウに残された賭けだった。
だが、今回召喚されたのはエミヤシロウがいるあの第五次聖杯戦争では無く、幸か不幸か第四次聖杯戦争だった。が存在するより前の時間軸。
今はまだ、この第四次聖杯戦争にエミヤシロウという存在が誕生していない。
ならば、やることは聖杯を破壊するだけ。
二度とあの様な悲劇起こさせない為にも、それにこの時代に呼ばれたこと自体が好都合だった。もしこの時代で、聖杯を破壊することができたなら、この世界にエミヤシロウは存在しなくなる。 故に、己が為すべき事は決まっている。───時臣を勝者とする事だ。
セカンドオーナーの時臣が異常な状態の聖杯を目にすれば叱るべき処置をしてくれることだろう、冬木の火災も起こらないだろう。皆が死ぬ事も無くなる。これが最善の手段。

(これでいいんだ…)

アーチャーが一人で自重気味に笑う。且つて自分が目指していた正義の味方。
然し、現実は冷酷であり彼の出来る事には限界があり、片方が救われている横でもう片方は救われなく、大を得るために小をを切り捨てる。アーチャーはいつしかそんなことを虚しく、繰り返していた。
だがアーチャーはそんなんでは彼の目指している正義の味方にはなれない。
と感じてはいたが、だが幾らアーチャーが救おうとしても、救われないものが、どうしてもできてしまう。それでも理想を追い求めた。世界と契約を結び、力を経て人々を助けた。
そう、英雄になれば、とんな絶望を打破できると信じていた。
……だが、現実は全く違った。''守護者''と呼ばれる、抑止力に取り込まれた英雄たちは、あくまで悲劇が起こった後始末にしか呼ばれない。
つまり、そこは地獄だと言う事。全ての人々が絶えた地獄に呼び出され、その地獄をさらなる滅びで覆い隠し、そして消えていく。それは最早、正義の味方ではなくただの掃除屋だった。
彼はこんな事をやるつもりで英霊になったわけでは無い。
彼が憧れた正義の味方というそんな在り方は断じて違う。
そんな考えを張り巡らせていたが、ふと街の方面に一つ気になる人影があった。
普通この距離からでは、アインツベルンも冬木市も遠くて見えないがアーチャーの千里眼によって数km先もアーチャーには鮮明に見える。
それによって、人影だろうとアーチャーには、しっかりと見えていた。
それは、ブロンドの髪を年頃の少女にしては随分と簡素な紐で縛っている女子高生だった。
それでもオシャレに気を使っているのか、髪に可愛いヘアピンを着けている。
少女は片手に竹刀らしき物を持っていた。普通であれば、無視するのが当たり前だが、アーチャーは女子高生の顔を見て、驚愕していた。

(ま、まさか 藤姉⁉︎)









○○

一人の女子高生が雄叫びあげながら、叫んでいた。

「連続児童誘拐殺人事件 酒蔵襲撃酒樽強奪事件!
言語道断 不届き千万! この街はどうなってるんだァ!」

隣の女子高生が''まぁまぁ''と宥めているが、全く聞いていない。

「もう我慢ならん! 冬木の平和はこの私…….藤村大河が守ります!」

そう言いまずは、被害にあった酒蔵の犯人をとっちめてやろうとするが。



〜〜三時間後〜〜


もう辺りは夜になり、大河はすでに眠気に襲われていた。

「ふゎぁ〜、──眠い.......」

藤村大河は今、酒樽泥棒を成敗するためにこんな夜遅くまで、粘っていたがそろそろ帰らないと、警察に見つかった時に補導されたら元も子もないので、帰ろうとしていたすると

「あれッ?」

狭い路地に男が子供を抱えていた、こんな夜に、しかも男と子供の二人組、そして抱え込んでいる姿は、とても大河には怪しかった。

(まさか…)

児童誘拐事件 それに関係してるように感じた大河は、そのまま後をつけてみることにした。そして路地にある楔れた喫茶店に入って行きそれを見ていた大河は声をあげそうになっていた。抱え込んでいた男の子を男は無造作に投げ、男は椅子に座り一息ついていた。

(間違いない、こいつ児童誘拐の犯人だ!)

なら、と思った大河は男に近づこうとした。犯人と思われる相手は今、後ろを向いて座っているからこちらが見えない。なら後ろから、思いっきり竹刀で頭を叩けばいけるんではないか、と考えた大河はゆっくり近づこうと、二歩三歩と足を動かしていたが

「何のようだい? お嬢さん」

男は後ろを向いまま言ってきたのだ
大河は内心はビビっているが、それは顔に出さず男には強気な態度に出た

「あんたが 今世間を騒がしている児童誘拐の犯人と言うことは知っている 観念しろ!」

「嫌…だと言ったら?」

「私があんたを成敗するまでの話!」

「ほう面白いね、来い出来るものならやってみな。」

大河はそういった男に目があった瞬間に、つい自然に後ずさりしてしまった。今まで、素行の悪い生徒、不良といった人と対決していたが、そんなはまるで別次元。
まるで何人もの人を殺している。そんな目をしていた。

「──あっ…」

つい足取りが不安定になり倒れそうになる。

「おいおい、さっきまでの威勢はどうした? それにこっちは来いとはいったが、逃げていいなんて言ったつもりはねえよ」

そう言いながら、大河に近づく。
だが、今、自分がこんな事で退いてしまっていいのか?もし今、逃げ出してしまったらあの子はどうなる。大河は一瞬でもネガティブになって自分に喝を入れるとてに持っていた竹刀を青年に向ける

「冬木の虎を舐めるんじゃないわよ!!」

大河は掛け声を上げると竹刀を振り上げ、足に力を入れて踏み込もうとしたが

「はい」

「へっ…?」

何と、吉良が指を鳴らす。すると竹刀をバラバラに砕けたのだ。

「わ、私の虎竹刀が、こ、こなごな…」

バラバラになった己の愛刀を見て言葉を失う大河に吉良はため息をついていた。

「残念……そのの間帰れることを放棄し、立ち向かうことはいいことだが……勝つ算段もないままくるとは、そういうのを蛮勇と言うんだぞ。」

そのまま大河は何故か中に浮き何かに首を締められていた。

(…死ぬの?私 ….)

意識が遠くなる、もう駄目だ、大河が意識がなくなる瞬間、上から何か降ってきた

途端に大河を押さえつけていた力はなくなるが、大河はそのまま倒れこむ

「え?…あ」

すると目の前に赤い外套の格好をした男が殺人鬼を阻むように現れた。そして大河はそのまま意識を失った。













○○

間桐邸で蒋都は雁夜から一通りの事情を聴いた、そして俺も言った
お前を助けると、最初は関わるなと一蹴されたが、何とか分からせた。
そして今は作戦を立ててる所だった。

「それで、これからどうするんだ まだ誰も行動を起こしてないが此方から動くか?」

すると雁夜は否定した。

「いや、今は動かずに他の連中が動き出すまで待っていた方がいい、それまで俺が虫を使って偵察に行かせるから」

「あれっ? 虫って雁夜 臓硯は死んだから虫は居なくなったんじゃ…」

「あぁ 虫は本来臓硯が居なくなれば使えなくなるけど、バーサーカーのおかげで何とか使えるようになってる」

「へ〜 そうなのか それなっ……──どうした雁夜 険しい表情して」

「…湾岸地区倉庫でサーヴァントの気配が出ている 誘っているな」

「どうする?」

「そりゃ行くに決まってる 蒋都はどうする?」

「悪りい 俺は今から用事があるから、雁夜に任せるけど大丈夫か?」

「大丈夫に決まってんだろう」

二人は話し合うとそのまま別々に行動して行った。






冬木市湾岸地区倉庫

そこに二人のサーヴァントが今まさに戦おうしていた

一人はセイバー見えない剣を携える。

そしてもう一人はランサー。二本の槍を手に持つ。

セイバーは一歩を踏み出す。身構えて待ち受けるランサーの、その長槍の間合いへと向けて……

 
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