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歪みすぎた聖杯戦争

作者:無人 幻獣
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5話 坐して待つ

河口も間近な未遠川の川幅を跨ぐ冬木橋である。
その遥か上空にライダーとそのマスターウェイバー・ベルベットがランサーとセイバーの闘いを監視していた。いや、監視しているのはライダーだけである、実際この距離からでは、ライダーの視力スキルによる千里眼でなければ、ウェイバーでは点にしか見えないのでここはライダーに任せるしかないのだが──

「ラ、イ、ダー、……早く……降りよう、も、もう少し..高度を下げて…….、ここ……早く!」

そんなC2の上に、命綱も何もなく両手両足だけで餅を掴む柔らかい感触を感じながらしがみつく姿は情けないことこの上ないのだが、このさい致し方なく、普段から心掛けている威厳や余裕を示すことは綺麗さっぱり諦めていた。
すぐ隣には、彼のサーヴァントのライダーが胡座をかいて座っている。
寒さと恐怖に、ひっきりなしに歯を鳴らしながら訴えかけるウェイバーの声も、向こうの闘いに監視しているライダーはどこ吹く風である。

「何言ってんだよ旦那、ここまで高域な場所なら監視するには丁度いいんだぞ?それに周りの景色を見てみろよ、絶景じゃねえか。」

ライダーはウェイバーの滑稽な姿を鼻で軽く笑いながら、夜の街並みをライダーは眺める。ここの世界の景色は夜だというのに街の光だけでここまで綺麗に見えるとは、とライダーは感心していた。

敵との接触を求めて市街を徘徊していたライダーたちが、サーヴァントの気配に気付いたのは午後も大分遅くなってからのとこだった。ところがさっそく襲いかかるのかと思いきや、ライダーは遠巻きに相手を監視するばかりで、一向に仕掛けようとしない。疑問に思ったウェイバーが問い質すと、ライダーは鼻を鳴らしてこう答えた。

『周りを誘ってやがるからな、他の奴等も気付いている事だし、奴の誘いに集まるだけ集まったらそこで纏めて爆破するのが手だな、うん。』

『──ということは?』

『今は待つってことだよ、うん。』

たしかにライダーの言う通り、誘いに乗ってむざむざ挑みかかるのは愚の骨頂である。
そんな手に乗る愚か者たちは、放っておいても互いに喰らいあって数を減じていくだろう。
あの挑発しているサーヴァントがどれほどの自信家かは知らないが、ライダー以外のサーヴァントが喧嘩を買ってくれるのなら、それはそれで好都合だ。
さて、そうと決まれば後は根比べである。市内をあてどなく彷徨するサーヴァントの気配を、ウェイバーとライダーは一定の距離を置いたまま追跡をし続け、今もこうして見張っている。

とはいえ──視野の広い高域に陣取る理屈は、むろん解らなくもないが、それにしても限度というものがあるだろう。サーヴァントならいざ知らず、生身の人間にすぎないウェイバーはここから落ちれば確実に死ぬ。その程度の理屈が解らないはずもあるまいに、なぜこの芸術家はこうもウェイバーの身の安全に無頓着なのか?

「お、降りる!いや、降ろせ!も、も、もう嫌!」

「まぁ待てよ。落ち着けって旦那。待ち遠しいのはわかるが……」

ライダーはそう鷹揚に答えるばかりで、ウェイバーの半泣きの顔を見ようともしない。そもそも両者の間には、''高い所は危険''という共通認識からして無いようだ。

「そんなに暇なら、周りの景色を眺めて気持ちを落ち着かせたらどうだ?いい景色だぜ、うん。」

それだけは御免だ、ウェイバーは景色など見る気などない、いや、ここは観ることが出来ないとと言ったほうが正しいか……落ちないようにしがみつくだけでも精一杯なのだ。今この場で下や外を観ようとするならば、確実に気を失う自信があった。
そんなウェイバーは必死に何か考えて恐怖を紛らはせようと、思考を張り巡らせていたが、──ふと考えてみると不思議なものだ、あの聖遺物でこんなサーヴァントが呼ばれるとは誰が予想しようか。
最初、ウェイバーはどんなサーヴァント出てくるかと内心は楽しみにしていたが、いざ蓋を開けてみれば出てきたのは赤い雲の模様が入った黒い外套の格好をしたただの奇妙な芸術家だったのだ。
だがクラスこそライダーでこんな性格であるが宝具もスキルも強力なものばかり。
当たりサーヴァントと呼んで差支えない結果だ。
しかし、ライダーには不明な点もある。まず、聖杯戦争で召喚されるサーヴァントは 過去 現在 未来からサーヴァントとして呼び出されるのだが、ライダーは 過去 現在 未来に当てはまらないサーヴァントだった。最初に召喚した時は容姿を見る限りでは、過去の時代の英霊かと思っていたが、ライダーのを話を聞く限りそれは違うようだ、ライダーは 忍び五大国 忍術と言った話を説明してもらったが、その説明を聞く限りだと、ライダーは 過去 現在 未来 の英霊ではなくこの世界とはまた違う異なる世界の英霊平行世界いわゆるパラレルワールドから来た英霊であるとウェイバーは結論をした。

「……やべえなぁ、うん。」

倉庫街での戦いを遠望していたライダーは、そう低い声で唸ってから立ち上がった。

「な、何がだよ?」

あの軽楽なサーヴァントが初めて見せる焦りの表情に不安を煽られたウェイバーは、C2に未だ慣れをみせず、しがみついた姿勢のままで質す。

「ランサーの野郎、宝具を使いやがったな、一気にケリをつける気か、うん。」

「いや、それって好都合なんじゃ……」

「──────何言ってんだ?」

ライダーは言っていることに理解ができなかったらしいライダーはそのまま言葉を繋いだ。

「出来る限り粘って集まった所まで様子を見たかったが、セイバーがランサーに殺られてからでは遅いな」

「お、お、遅いって──奴らが潰し合うのを待ってから襲う計画だったじゃないか!」

「……おい旦那、何を勘違いしてたか知らんけどよ」

ライダーは眉を顰めて、まるで笑えない道化師の芸に興醒めしたかのような表情で足許のマスターを見下ろした。

「まぁ他のサーヴァントがランサーの挑発に乗って出てくるのを期待していたが、一人釣れただろう?一人ずつ捜し出すよりも、この方法で纏めて相手をした方が手短でいいじゃないか。」

「……」

ウェイバーは返事を忘れ、自分と、この自称芸術家英霊との間に開いた認識の落差に呆然となる。

「まとめて……相手?」

「当たり前だろ。オイラの芸術をできるだけ世に示さなければなければいけないからな、一人も逃す気はねーよ、うん!」

つまり、このサーヴァントが言いたいことは、全てのサーヴァントを倒すのは自分と言いたいらしい。
そんな宣言にウェイバーは頭をガックリと下げ己がサーヴァントを改めて認識した。

「……マジかよ……」

「様子見もここまでだな。じゃあ行くとしますか、旦那」

言うが早いか、ライダーの号令と共にC2は動き出そうとしていた。

「ぼ、僕も行くのか⁉︎」

聖杯戦争でマスターが殺られた場合、サーヴァントは現界を保てなくなり、アーチャーでない限り消失してしまう。なので本来はマスターは遠くで見守るのがセオリーなのだが。

「来ないのなら、ここに残ってもいいぜ」

こんな場所に一人取り残されるのだけは勘弁なウェイバーに居られるはずかなかった。

「行きます!もうどうにでもなっちまえ!」

「流石はオイラの旦那だな。今日旦那には真の芸術とは何なのか見せてやるぜ、うん」

「さぁて行くぜッ!」

ライダーの呼びかけに、彼のC2宝具が呼応する。









○○○

薄暗い路地で二人は睨み合っていた。
青年と思しき男、吉良煌影は楽しさを隠しきれていない顔だが、鋭い眼光でしっかりと相手を見ていた。
入口付近には赤い外套を纏った男、弓兵、アーチャーは今、気絶している女子高生藤村大河を守るように前に立ち表情を変える事無く目の前の男を見る。

「……」

「…」

お互いに睨み合うだけで、どちらも一切口を開かない、手の内を探り合っているのか、それとも、相手の出方を待っているのか、二人の男は睨み合っていた。

「…」

「……ッ」

すると、流石に無言の間に耐えれなくなったのか吉良の方から口を開く。

「おいおいいきなり現れて、誰だよお前は?」

「そういう君は今、世間を騒がせている連続殺人犯で間違いないかね。」

吉良の隣に気を失っている少年がいる。こんな夜の日にしかも寂れた場所で男と一緒に居るのは、流石に怪しまれるな、と青年はばれた原因を察した。

「──!……正解〜 だが質問は質問で返すもんじゃ無い。しかしよく俺が誰なのか分かったね。じゃあ次はこっちの質問に答えてもらう番だ..」

吉良は正体を告げられてもなお、一切の動揺を見せない。むしろこの状況を楽しんでいるようだ。

「君に答える必要は無い。他人に答えてもらわずに自分で答えてみたらどうかね?
それに君の右手のそれは令呪のようだが全く、今はもう聖杯戦争が始まってるというのに、令呪を隠さずこうも堂々と行動しているマスターが居るとは驚きを通り越して呆れるよ」

アーチャーに言われると、吉良は無言のまま令呪がある右手を見始めた。
しばしの沈黙。その後、男はいきなり爆笑した。
しばらく、彼はおかしくてたまらないという感じで笑い転げる。

「は、はははは!なるほど。確かに此れじゃばれても仕方ないな──────しかし、そのことを理解しているって事は、サーヴァントのお兄さんよ…俺の敵ってことでいいのかな?」

声色が一瞬にして変わるそれと同時に吉良の近くにそいつは姿を現す。白のマスクに黒いローブを纏って居る。殺気の固まりとなった吉良に、たいしてアーチャーは目の前に現れた白のマスクの奴の方に警戒していた。

(あれはさっき藤姉の首を絞めていた奴か..)

アーチャーが不思議に感じていた、目の前の青年の横に佇んで居る者
人間の形をしているが人間には見えない、いや、生物なのかすら怪しい白いマスクを被ったものはただ、佇むだけだった。
しかし、アーチャーが警戒しているのは容赦、姿だからではない。
魔術の発動の反応がしないのだ。青年の方もその横にいる白のマスクの方にも魔力の反応がしないのだ。なら、今目の前にいる白のマスクの奴はどうやって現れたのだ? いや、幻覚か…それならありえそうだが、多分違うだろう、相手を幻覚にはめるとなるとかけられた相手には僅かながら精神の乱れがあらわれるはずだ。
しかし、アーチャーには体の気に乱れはない、となると………

アーチャーが必死に分析をしているとその疑問に答えるかのように吉良が口を開いた。

「やはり見えているな、本来、同じ力の持ち主でなければ見えないのだが、何かしらの接点があるかもしれないな………今、君の目の前にいるのは精神エネルギー形作るヴィジョン(像)…ある者はスタンドと言っていたな」

精神エネルギー ヴィジョン スタンド 青年はそう言ったその言葉からアーチャーがだした結論は──

「..超能力者か....」

「そうとも言うかもしれないが、そお簡単に分別できるものでは無いよ..スタンドは」

「たかだが少し変わった能力を持ってるだけで、サーヴァントに戦いを挑もうとは、君は凄腕の一流かとんでもない三流か、分からないな」

「なぁに、直ぐに分かる。」

薄暗い路地の場所で聖杯戦争の第二戦目が始まろうとしていた。









○○○

雁夜と別れた蒋都は間桐邸から少し離れた良野公園という所にに来ていた。
蒋都は中に入り歩いていたが公園の周りにはビルやショッピングセンターに囲まれてるというのに、人の気配が全くしないのだ。公園を照らしている電球でさえ大体の電球も消えかかっているためこの公園の暗さを醸し出していた。
そして、歩いて目的の場所、ベンチの所まで来た。ベンチには二つあり二つ目のベンチにはもう誰かが座って本を読んでいた。
蒋都は何気なく一つ目の方に座った。

「久し振りだな、最後に会ったのはいつだ?」

蒋都は前を向いたまま、誰もいない方を向いて喋り始めた。
すると、隣にいる男が言葉に反応をした。

「………二年前だ…………」

本を読んでいる手を止め、上を見ながら、蒋都の質問に答えた。

「いっつもお前は何かするとなると本を読んでるよな」

「………」

蒋都は薄ら笑いをしながら男をバカにしたが、男はたいして反応を示さなかった。

「.....。今度は何の本を読んでるんだ?」

「『容疑者Xの化身』だ…」

「またそういう暗そうな本を読むなぁ〜、もっと他に趣味は無いのか?」

「何度も言うが、俺は本を読む事が趣味では無い…自慢でも卑下でもない
暇だから読んでるだけだ。」

「分かってるって、別にお前の事を馬鹿にするため、わざわざ呼んだわけじゃなねえよ………仕事を頼みたい。」

「……自分でもできるだろう。」

「電話で話したと思うが、この聖杯戦争とやらに勝ち残るには、俺だけの力じゃ厳しい。」

聖杯戦争、最初話しを聞かされた時は余りの馬鹿馬鹿しさに呆れてしまったが、蒋都がそんな嘘をつく男では無いことは、長い付き合いで分かっていた。

「フッ…。魔術やら何やらよく分からんが、やれるだけやろう。」

「悪いな、指示はメールでする。」

実際、他の奴らに魔術やら聖杯戦争の事を話しても、イカれた野郎と思われて依頼を請けてくれないと思ったので、蒋都が一番に信頼出来る殺し屋を雇うことにした。

「─────────相手は?」

男は立ち上がり、動き出す殺し屋、狩るため。

「電話で話した通り、聖杯戦争のマスターだ。しかし、マスターにはサーヴァントと言う強力な使い魔を連れている、サーヴァントの相手はしなくていい、マスターが単体の時や隙ができた時に、マスターを殺してくれ。だが戦闘の際のアクシデントやトラブルの際はそちらの判断で動いてくれ。慎重に頼む。マスターもただの一般人では無いからな、俺の持っているスタンドがもしかしたら、相手の方もスタンドを持っているかもしれない、魔術とやらも使ってくるかもしれない…たのんだぞ……蜥蜴。」

そう言われると、蜥蜴と言われた男は、唯一照明が照らされた場所に背を向け暗闇に消えて行った。









○□◇△▽

一羽の鴉は逃げ出していた。何から?悍ましい何かが一羽の鴉を引きづりこもおと捕まえてくる、それはまるで飢えた生き物が偶然獲物を見つけるかのように襲いかかる。

───────は───や─早く‼︎

ま───まずい‼︎───────このままではッ!──────────

あれは?──っ!──────セカイ ──俺が抜け出すことを分かってて────

──────────此処を抜けさえすればッ、あとは────
 
 

 
後書き
Touda? No⁉︎ 〜Y○da? Yes! 
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