八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十三話 マレーシアという国その九
「修行でござる」
「そうなんだね」
「ただでござる」
「ただ?」
「いや、日本はいい国でござる」
「そう言ってくれるんだ」
「残念ながら忍者や武士はもういないでござるが」
こう言ってからだった、さらに言うマルヤムさんだった。
「しかし昔のものが沢山残っているでござる」
「そのことがなんだ」
「そのことも素晴らしいでござる」
僕に目を輝かせてこう話してくれた。
「実に」
「つまり昔と今が一つになっていることが」
「素晴らしいでござる」
「昔のものはなくなっていってるって言われているけれど」
「そうではないでござる」
僕の今の言葉を否定してさらにお話してくれた。
「残っているでござる」
「なくなっているんじゃなくて」
「左様、残っているでござる」
「そうでござる」
こう僕に言ってくれた。
「ここまで残っている国は少ないでござるよ」
「そうなんだね」
「大家殿はそのことは」
「思っていなかったよ」
「しかしでござる」
マルヤムさんは僕に強い言葉で言って来た。
「日本は過去と現在が一つになっているでござる」
「そうなんだ」
「そうでござる、そして現在の日本もでござる」
今度はこの日本のことも話してくれた。
「素晴らしいでござる」
「そちらも気に入ってくれたんだね」
「そうでござる、奈良に行けばさらにでござるな」
「ああ、あそこは」
「昔のものが揃っているでござるな」
「うん、あそこはね」
奈良については僕も知っている、あの場所はだ。
「飛鳥時代とか奈良時代の」
「遺跡等が残っているでござるな」
「あそこに行きたいんだ」
「そして忍者や武士以外の日本も知りたいでござる」
「じゃあ機会があればね」
「行かせてくれるでござるか」
「うん、連休の時にでも行って来たらいいよ」
僕は微笑んでマルヤムさんに答えた。
「皆と一緒にね」
「ではそうさせてもらうでござる」
「八条鉄道は日本全土に通じてるし」
かつての国鉄みたいにだ、これは日本の私鉄で唯一のものだ。それで八条鉄道は日本で一番便利な鉄道になっている。
「ここから奈良に行くのも簡単だから」
「直通でござるか?」
「あっ、大阪で乗り換えだよ」
八条鉄道大阪駅でだ。
「あそこから奈良にだよ」
「行けるでござるか」
「そうなれるからね」
「では」
「うん、その時はね」
奈良に行きたいその時はとだ、僕はマルヤムさんに答えた。
「お願いするでござる」
「それじゃあ」
こうしたことを話してだった、僕達は。
一旦ここで別れた、そして。
その日の夜だ、僕は畑中さんの奥さんにだ、こう言われた。
「日本文化について」
「マルヤムさんはですね」
「はい、あの方の日本文化へのご関心ですが」
「相当なものですね」
「何故あの方が日本文化を学ばれているのか」
このことをだ、僕に話してくれた。
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