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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二十三話 マレーシアという国その八

「女好きで酒好きのろくでなしだけれど」
「それでもでござるか」
「他の人に暴力を振るったりしないよ」
 本当にそれはしない、何があっても。
「それは人間のすることじゃないって言ってるから」
「お父上から教えてもらったでござるか」
「うん、だからね」
 僕もだ、まさに。
「それは絶対にね」
「しないということでござるな」
「何があってもね」
 例えだ、本当に。
「しないよ」
「それが正しいでござるな」
「だからマルヤムさんはね」
「このままいっていいでござるな」
「日本では多いんだ、学校の先生にね」
 中学時代のそのことを思い出してだ、僕は忌々しげに言った。
「ほら、先生と生徒じゃ年齢も立場も違うよね」
「その通りでござる」
「しかもその先生凄く体格がよくて力もあったよ」
 見ていて身長は一七八はあった、もっとあったかも知れない。日本人ではかなり身体が大きいことは間違いない。
「それで腕も太くて。体重は九十キロは超えていたね」
「見事な体格でござるな」
「その体格でね」
「自分よりも遥かに弱い」
「うん、小さな相手に暴力を振るっていたんだ」
 マルヤムさんにこのことを話した。
「どう思うかな」
「最低の輩でござるな」
 これがマルヤムさんの返事だった。
「まさに」
「そう思うよね」
「その生徒殿は反抗しても」
「絶対に勝てないよ」
 立場も年齢もかなぐり捨ててだ、そうしてもだ。
「つまり自分が絶対に負けない、そして殆どの場合反抗することも出来ない相手をね」
「その教師は殴っていたでござるか」
「何発もね」
「そうした輩は日本にもいるでござるか」
「いるよ、だから学校の先生には特にね」
 本当に嫌なことにだ。
「いるんだよ」
「人にものを教える資格がないでござるな」
 マルヤムさんはまた忌々しげに言った。
「それにでござる」
「それにだね」
「剣道をする資格がないでござる」
「他のどんなこともね」
「剣道、忍術もそうでござるが暴力ではござらん」
 それは決して、という言葉だった。
「何があろうとも」
「そう思うよね」
「全くでござる」
「まあその先生どうも後で暴力が問題になって」
 僕は左手で自分の首を掻き切る動作をここでして言った。
「こうなったよ」
「首でござるか」
「マレーシアでもこのジェスチャーでいいよね」
「わかるでござる」
「それは何よりだよ、とにかくね」
「己の行動で報いを受けたでござるな」
「うん、因果応報でね」
 まさにこの定理によってだ、不思議とこの因果応報は絶対だ。僕はこれまでの人生でこのことも確信している。
「そうなったよ」
「当然でござるな」
「本当に力はね」
「自分自身に使うものではなく」
「うん、暴力なんてもっての他だね」
 このことはわかっているつもりだ、本当にあの親父が守っていたことだからだ。他のどんな存在にも暴力を振るわない。
「そう思うよ」
「そして拙者は」
「その忍術をだね」
「忍者食を作ることもでござる」
 それもまた、というのだ。 
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