| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十二話 秋田小町その十一

「知れない、ですが」
「そうですか」
「池田勇人というお名前は」
「親父使ってたんですね」
「そうでした」
 実際にというのだ。
「私もそう聞いています」
「それじゃあやっぱり」
「はい、そして」
「それにですね」
「止様は秋田におられたこともあります」
 今度はこの状況証拠も話に出て来た。
「そうしたこともありましたので」
「それじゃあ」
「ですから」
「可能性はですね」
「あります、ただ」
「ただ?」
「止様が秋田におられた時は」
 その時の話がここで深くなった。
「義和様が奥様のお腹の中におられた」
「その時ですか」
「その間出張で行かれていて」
「その間にですか」
「はい、詩織様のお母様のところに行かれた後で」
 忙しい親父だと思った、仕事だけじゃなくそちらでも。
「そしてすぐにでしたが」
「期間が短いからですか」
「その時に香織様のお母様と一緒におられたか」 
 このことはというのだ。
「その辺りはです」
「はっきりしたことはですか」
「どうなのか」
 畑中さんは微妙な感じで僕に話した。
「わからないです」
「可能性としてあってもですね」
「一月で詩織様のお母様とどうして知り合い香織様が産まれられる元を作られたか」
 畑中さんは言葉を選んでいた、どうもこうしたことはあまりお話しにくい人らしい。古風な人だからだろうか。
「それはです」
「親父なら普通ですけれどね」
 それこそ何千人と付き合っている人だからだ。
「それも」
「そのこともありまして」
「しかし一ヶ月で出来るか」
「わからないところです。あと」
「あと?」
「香織様のお父様のお写真は」
 つまり姿のことだ。
「それもないそうで」
「ううん、だからですね」
「それでいて香織様がお母様から聞かれたその方のお姿は」
「どうだったんですか?」
「長身で痩せておられて」 
 このことは親父も同じだ、僕も背が高いとよく言われるけれどこれは明らかに親父の血だ。今の僕と親父は同じ位の高さだ。
「飄々としておられて明るくて」
「しかも暴力を振るわず借金もしない」
 僕もここで言った。
「尚且つ女好きで酒好きで遊び好き」
「そうした方だったとのことです」
「やっぱり親父ですよね」
「そうではないかと」
「ううん、怪しいですね」
 僕は心から言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧