八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二十二話 秋田小町その十二
「それですと」
「そう思われますか」
「相当に」
僕はこう答えた。
「可能性は高いかと」
「私もそう思いますが」
しかしなのだ、確実ではない。だからだった。
僕は腕を組んでだ、難しい顔で述べた。
「はっきりしないことが怖いですね」
「一番ですね」
「はっきりしたらもうそれで終わりですから」
「しかしはっきりしないと」
「どうなのかと思い悩んで」
「それが一番怖いですね」
「そうですよね、何はともあれです」
僕はその壊さ、香織さんもまた腹違いの姉妹多分詩織さんと同じく妹の可能性が高いあの人についてこうも言った。
「香織さんもです」
「はい、八条荘にですね」
「お迎えするということで」
「もう入居されていますので」
「そうですか」
「では今晩は」
「歓迎の、ですね」
毎日になっているけれど何はともあれだった。
「夕食ですね」
「今宵はきりたんぽです」
畑中さんはごく自然にこの料理の名前を出した。
「それになります」
「きりたんぽ鍋ですね」
「香織様が秋田の方なので」
「それで、ですね」
「きりたんぽとなりました」
秋田名物のこの食べものを使った鍋になったというのだ。
「鶏と葱、白菜にお豆腐に茸類を入れた」
「きりたんぽ鍋ですね」
「義和様はきりたんぽは」
「好きですよ」
僕は畑中さんの今の問いに一言で答えた。
「あれも美味しいですよね」
「それでは」
「はい、じゃあ今晩はきりたんぽ鍋で」
「お祝いをしましょう」
「これで二十一人ですね」
僕は今度は入居者の人の数について言及した。
「確か全部で二十四人ですね」
「そうです」
「後三人ですか」
「今の予定では」
「二十四人ですか、多いですね」
「部屋はありますので」
「そういえば八条荘自身も」
僕達のアパートであるこれ自体もだった。
「広いですし」
「ですから」
「お部屋の数も多くて」
例え一人一部屋でもだ。
「いけるんですね」
「そうなのです」
「ううん、お聞きすればお聞きする程」
まさにとだ、僕は思ってそのことを言葉に出した。
「凄いアパートですね」
「広いに越したことはないので」
「だからですか」
「はい、皆様は一階で」
そして二階に色々な部屋がありだ。
「義和様のお部屋は三階にとなっています」
「それで畑中さん達は」
「私共は別棟にいますので」
「あっ、最近は」
「そちらで快適に過ごさせて頂いています」
「そうなんですね」
「宜しければいらして下さい」
その別邸にもというのだ。
「歓迎させて頂きます」
「いいんですか?お邪魔して」
「是非。間もなく妻も来ますので」
「あっ、そういえば奥さんも」
「以前お話させて頂いた通り」
「もうそろそろですか」
「明日に」
来てくれるというのだ。
「お待たせして申し訳ありません」
「いえ、そんな」
僕は頭を下げた畑中さんに慌てて頭を上げてくれる様に言った。
「いいですよ」
「そう言って下さるのですか」
「はい、むしろ」
本当にだった、僕の方がだ。
「畑中さんにはいつもお世話になっていますから」
「だからですか」
「はい、ですから」
それでとだ、僕は畑中さんにあらためて言った。
「そんなこといいです」
「では」
「何はともあれですね」
「奥様にもお願いしますとです」
「私の方から妻に伝えておきます」
「宜しくお願いします」
僕達はこの後そのきりたんぽ鍋を楽しんだ、そうして香織さんを皆で笑顔で迎え入れた。こうして八条荘はまたしても愛すべき住人を手に入れたのだった。
第二十二話 完
2014・11・26
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